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記録85.5『事後処理』

これは、勇者が宿泊した宿屋で、掃除担当を務めているランパールの物語である。

ランパールは、いつものように部屋の掃除を任されており、この日も遅刻もせず真面目に出勤をし、宿泊客が使った部屋やベッドの掃除をする為、巡回していた時だった。


「ん?」


一つの部屋から異様な感じがした。

部屋一つ一つのゴミや埃を注意深く見ていたランパールは、それを無視してしまう程に、その部屋に注目してしまう程であった。

そして、その部屋の近くを通ろうとする客達は、鼻を摘まみ、目を閉じると前屈みになりながら一気に駆け抜けるように通り過ぎる。

まるで、その部屋の近くに出来るだけ居たくないかのようであった。


「なんだ……?」


ランパールが、部屋に近づいた瞬間気付いた。


「うう!! っくうっっさあ!!」


あまりの異臭に、ランパールは鼻を摘まんで眉間に皺を寄せる。

そして、ランパールの股間も膨らむ。


「はあ! 何だよこれええ! うわなんかムラムラする……」


ランパールは、突然ムラムラしてしまった事に対して、理解出来なかった。

しかし、あまりの異臭のせいでとても処理する気分にはなれなかった。


「てか誰だよ……この部屋使った奴は……」


記録を必死に調べると、そこには天山有志と記載されていた。


「ええ! ゆうしゃ? マジで?」


唖然としながら、部屋番号と記録を交互に見るが、その部屋は確かに勇者天山有志が宿泊した部屋であった。


「そういえば、一昨日の夜から今日の朝までお楽しみだったって店主が言ってたような……お陰で昨日の掃除担当が掃除出来なかったとも言ってたな……そういう事は別に不思議じゃないが……でもこうはならんだろ」


ランパールは、呆れながらも部屋を掃除する事は仕事なので、覚悟を決めて部屋を確かめる事にした。

そして、ドアノブに手を置くとネッチャリとした感触であった。


「うえええええあああああ!!」


嫌悪の表情を浮かべながらも、我慢して自分の仕事を全うしようと覚悟を決めてドアを開ける。


「うあわあええ!!」


しかし、ドアを開けた瞬間、異様な臭いがムワッと出て鼻を掠める。

それだけでも苦痛であるのに、そのムワッとした臭いは、目をも掠めて滲みるような痛みが走る。


「いだああえええああああ!! うああくっっさああ!!」


涙目になりながら、目と鼻を擦る。

落ち着いた頃には、花も目も赤くなっていた。


「はあ、はあ」


息を整えるように荒い呼吸を続ける。

そして、落ち着いた頃に、考えもまとまりランパールは、一旦その部屋から離れる。


「マスクとゴーグルを取って来ないと……とてもじゃないが掃除なんて出来ない!」


イライラとしながらも、ランパールは掃除担当の意地を見せた。


そして、掃除用具入れからマスクとゴーグルを装備して部屋へと向かい合った。


「ふー……いくぞ!!」


そして、再び覚悟を決めてドアをおもいっきり開けてすぐに入ると同時に、すぐにドアを閉めた。

そして、一直線に部屋の窓を全て全開にした。


「ふー……すこしましに……なってないな……はあ」


窓を開けても、立ち込めた臭いの濃さは変わらない為、しばらくゴーグルとマスクをしながら掃除をしようと考えた。

周りには、大量のティッシュと白い液体と透明な液体で濡れていた。


「うわああ……キッショ!」


ドン引きしながらも、ゴミを手で取ろうとした瞬間、悪寒が走った。


「うう! な! 何か掴むもの」


持っていたトングを使ってティッシュを全て回収する。

そして、一番の難関であろうベッドを、吐き気を催しながらも確認する。


「うわ」


そんな一言しか出なくなるぐらいに、ビショビショのベッドであった。

ランパールは、ティッシュを回収したのと同じように、シーツも全てトングで回収しようとした。

しかし、グショっと音が鳴ったと同時に、手で触ってもいないというのに、トングから嫌な感触が伝わった。


「うわああ! うわああああああ! 汚なあああああ!! いやああ!!」


ランパールは、耐えられなくなり部屋から飛び出て店主に報告した。


「バラビさん!! 勇者の部屋キモイです!!」

「は?」


あまりにも素っ頓狂な上、勇者に対して侮辱的は発言にバラビは怪訝な表情になる。


「お前何言ってんだ?」

「本当です! 一緒に来てください!」

「何で俺が?」

「いいから!!」

「わ! ちょっと待てって!!」


ランパールに、無理矢理引っ張られながらバラビは勇者のいた部屋に連れて来られた。


「もう、何なんだよおま……臭あああ!!」


バラビも、勇者がいた部屋の前に来ると鼻を摘まみ、股間が膨らんだ。


「ええ……どういう事? 何この臭い……えええ……」


あまりの衝撃に、理解が追い付かずドアを開けてしまった。


「ああ! マスクとゴーグルを……」

「え? グアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアア!! 目がああああああ! 目があアアアアアアア!!」

「早くドアを閉めないと!!」


ランパールは、バラビを後ろに下げて、ドアを閉めた。


「あああああああ!! あああああああああああ!!」


バラビは、しばらくそこでのた打ち回った。


そして、しばらく経ちバラビは落ち着いたのか涙目と鼻水でグショグショになった顔で立ち上がった。


「えっほ!! えっほ!! えええ……えええ? どういう……ゲッホ!!」


そして、咽ながら何とか、ランパールを見る。


「一昨日からお楽しみだった後の事後です」

「ええ……」


バラビは、ドン引きながらランパールの言葉を受け止める事が出来なかった。


「中は使えそう?」

「無理です、マスクとゴーグルを」

「……うん」


あまり信じたくないと察したのか、ランパールはバラビに現状をしっかりと見せた。

そして、部屋を見てバラビは頭を抱えながら悲痛を上げる。


「もおおおお!!! 何なんだよこれええええ!!! ええ! なんで! えええ! なんでこうなるんだよおおお!!」


あまりの現状に、バラビは悔しそうに涙を流した。

そして、仕方なさそうにしながらある決断をする。


「よし、この部屋は封鎖しよう……高いけど封印師呼んで」

「はい」


さすが、経営者であるのかバラビの判断は早く、高額のお金を払って部屋を完全封印術で臭いも魔力も空気も出て来れないようにした。


被害を最小限に抑える事で、被害を最小限にした。

そして、一部屋以外の部屋を宿泊部屋とする事で解決をしたのであった。


しかし、勇者の泊った部屋をまるで悪しき者の様に扱ったという理由で、貴族達に宿屋の柱に縛られて、宿屋と一緒に生きたまま燃やされた。

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