記録82『森の再建』
ハロドルは、街に森を完成しつつあった。
「ああああああ」
「ああああああああ」
「ぐしゃあああああ!!」
「ヒヒーン!」
人間達は、飼育していた動物達にも噛み付き、森を増やす為の寄生を増やし続けていた。
「レイカル、進んでいるようね」
「はい、今まで以上の力が沸き上がるようです」
「さすがですね、惑様に寄生のスキルを追加していただいたお陰で森も復活しつつあるは、今ではラブラスの実すらも我が森の一部に出来たわ」
「そうですね、それに寄生先が人間であったのが良かったのでしょう……恐らく我々が栄養となるものとして適正だったのでしょう」
「我々聖霊はであり、聖霊は万物の根源をなしています、惑様の話す事が本当ならば神が我々を作り上げたのと同じ、人間もその一つである以上、人間に存在する神への信仰心や聖的力が我々の栄養源として適していたのでしょう」
実際、馬や羊等の動物は、人間に寄生した後で寄生を始めた。
精霊も生き物としての本能として、より寄生に適した生物を選んでいた。
「さて、惑様に報告に行きましょう」
「あの方には最初こそ信用していませんでしたけど……彼が居なければ我々は全滅していました……子供を襲う事に反論していた事も謝罪しないと」
落ち込みながらレイカルは、真剣な表情で惑の元へと向かった。
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「惑様、報告させていただきます」
「畏まらないで、お姫様」
「ありがとうございます……惑様の計算通り街一体をドライアドの寄生スキルによって人間や動物、更には街を森として汚染しました、我々の森は復活しつつあり、更に我々ドライアドの力も戻りつつあります」
惑に、頭を下げながらハロドルは、お礼の言葉を伝えた。
「私からもお礼を言わせてくれ、ありがとう」
「いえいえ、僕達科学者は困った者に手を差し伸べる為に存在しているんだから」
「それは……正義の為ですか?」
レイカルの疑問に、惑は不敵に嗤う。
「正義……君達に提案したことは正義だったかな?」
「!!! いえ……申し訳ございませんが正義とは程遠いかと」
レイカルは、失言したと思い顔を真っ青にする。
「その通りだよ、そもそも科学っていう者は不可能を可能とする為に存在する、それに善と悪の貴賤は存在しないんだよ、そんなものがあれば科学はここまで成長しなかった、人の病気を治す、戦争に勝つ、快楽を求める、喜びを得る、名誉を得る等様々な理由により科学は利用され続けた、それってとっても素晴らしい事なんだ、だって! 全ての事象に手を差し伸べる事によってオールマイティーな成長を遂げるのが科学なんだよ!」
嬉々として語る惑に、二人は冷汗を垂らす。
「だが君達も安心だけはだめだ……森で街を汚染したのは良いがそれを良しとしない者が現れればそれを必ず打ち砕こうとする者がいる、それは君達にとって天敵として立ち塞がるだろうね、しかし退ける事は出来ない……君達が生き残ろうとするしないに限らず正義を振り翳して気持ち良くなるものが多くいる、僕がさっき言ったように君達の行った行為は正義ではない、つまりは必ず戦いが起こる、その為の備えは必要って事は分かる?」
「はい、分かっております……勝つ為の準備は怠るつもりはありません……兵士達も力を付けておりますし寄生したことによって人間や動物達の生命エネルギーを魔力として吸収しております……それに……もし戦いに敗れたとしても生き残りを作る為の準備も行っております……」
惑は、ハロドルの言葉に首を傾げるも微笑む。
「それは良かった、なら後は森を完成させるだけだね、完成したら僕達はここを出る、だがもし完成前に襲われたなら出来るだけのサポートはさせて貰うよ……まあ命を懸けるまではしないけど」
「はい……あ! 後お願いが一つあります、もし完成前に襲われて我々が全滅しそうな場合は生き残りを旅に連れて行ってもらっても宜しいでしょうか?」
「素体にして良いなら」
「!! 西院円惑! 貴様!」
「止めなさいレイカル、惑様の言う素体とはエレン様と同じ扱いです、そうですよね惑様」
「そうだよ、きっと君達の生き残りも同じことを考えると思うからね」
「分かりました」
惑の言葉に、レイカルは何処か安心した様にお礼を言った。
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「あああああ!!」
「メルミー! 大丈夫だ! きっと勇者様が助けてくれる!」
「でもお!! でもおおおお!! お母さんとお父さんがああ!」
「うう!」
メルミーと呼ばれたそばかすの少女は、一人の少年に慰められていた。
「うう、いやあ……私達の子供が苗床になるなんてえええ」
「くそ! くそおお!! ドライアド共めええ! 魔物に墜ちたかあああ!!」
人間達は、汚い牢に閉じ込められながら絶望に染まり切っていた。
彼等は、森が完全に完成するまでドライアド達が故意で残した人間である。
もし森が滅ぼされる場合、この人間達を苗床にしてドライアドの栄養源庫であった。




