記録6.5『天山有志の事件簿後編』
その後、有志達は、ファイナの浮気が潔白である事を証明する為に、証拠を集めにまわっていた。
しかし、どれだけ探しても浮気の証拠しか見つからなかった。
そして、ファイナが受付嬢として勤めていた冒険者ギルドに聞き込みをした時のことであった。
「ファイナ? ああ! 俺達! 昨日ファイナと寝たぜ! 2Pとはなかなか良かったぜ! なあ!」
「おお! 気持ち良かったよな!」
「そんな……僕の妻なのに、ファイナ……そんな……」
少しガラの悪そうな冒険者二人は、恍惚な目でファイナとの感想を話していると、ロギスはショックのあまり膝が崩れる。
「え? ああ! そういやファイナ結婚したって言ってたな! 昨日!」
「ああ! 種無しだから役に立たないって! そうだったのか……アンタが……」
ショックを受けるロギスに対して、二人は気まずそうにする。
「おいおい! 落ち込むなって! アンタの奥さんのマ○コも喘ぎ声も! いい具合だったぜ!」
「ああ! 前戯のフ○ラもテクニックも絶品だったよな!」
「うわあああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああ!」
二人は、ロギスにフォローを入れるつもりが、逆に発狂させてしまった。
「貴様等! 適当な事を言いやがって! ふざけるな! ゴミ共が!」
「え? ふぎゃああ!」
聞いていた有志は、怒りを抑えられず聞き込みした一人の冒険者を殴り付けた。
「バワカ! テメェ! 俺の相棒をよくも! 不意さえ突かれなければA級冒険者の俺達を倒せねえぜ! くらええええ!」
「フン!」
「グオバ!」
有志は、相手の拳が飛んできた瞬間を狙い、カウンターでもう一人の頬を殴った。
二人は、その場で昏倒した。
「すっスゲエぜ! あのA級冒険者バワカとアワホの二人をたった一発で倒しやがった!」
「アイツ! 只者ではないぞ!」
「新たな伝説の始まりか?」
やり取りを見ていた冒険者達は、歓喜し騒ぎ立てる。
中には、ファイナと肉体関係を持った者も居たが、勝てる見込みがないと踏み、騒ぎの中に紛れてやり過ごす。
「有志凄いです! こんなに早く皆んなから認めて!」
「ふむ、勇者の力は伊達ではないという事だな!」
シャイニャス姫とファルトコン王が誇らしげに語ると、他の冒険者や受付嬢が歓喜する。
「あれが勇者……」
「スゲェ」
「キャー! かっこいい!」
すると、ギルドの奥から一人の筋骨隆々の壮年の男が現れた。
「流石は、勇者と呼ばれるとこはあります、A級冒険者をあんな一瞬で……失礼、私はギルド長のパウバマ=ファクターと言います、以後お見知りおきを」
「君がギルド長か、この無礼者達の冒険者資格を即刻剥奪すべきだと思わないか?」
「え!! ああ、はいその通りですね……おい、このA級冒険者アワホとバワカの冒険者資格の剥奪の手続きを!」
パウバマが、気弱そうな男性受付員に伝える。
「えっと、でもその者達は次の依頼が……」
「そんなのは私がどうとでもする! 早く!」
「はい!」
受付員は震えながらすぐに二人の冒険者資格の剥奪手続きに取り掛かった。
「うちの者がすみません、ところで有志殿……貴方は勇者と聞きましたが冒険者登録はしませんか? この国にいる間……そして時々で良いので依頼を受けて頂けるとありがたいのですが?」
「えっと……俺は……」
パウバマの言葉に迷いを見せる有志に、シャイニャス姫は肩を叩いてアドバイスをする。
「冒険者登録は身分証になります、勇者としての証明書も出しますが冒険者としての資格があれば他の国にも情報が行き渡りやすくなりますので損はないかと? それに冒険者の依頼の中で魔族との戦闘もありますので情報収集としても役に立つかつ思いますよ?」
「シャイニャスが言うならば登録します! その代わりにこの方の奥様……ファイナさんについての情報が欲しいのですが?」
有志は、シャイニャス姫の後押しで冒険者登録を行う事になったが、見返りとしてファイナの情報を得ようとした。
「分かりました……では私の知る限りの情報を全て開示いたします」
そして、冒険者登録の為、ステータスを開き、問題なく冒険者登録が済んだ。
そして、ファイナの情報をパウバマから聞いた。
「私が知る限りでは確かにファイナさんをステウという男が唆しておりました……私からも注意をしたんですが彼が止める気配がありませんし……更には、貴方が子供を作れない体である事を付け込んで子供を作る方法を餌に彼女を誘い出すところを何度か目撃されているそうです……恐らく、その時に弱味を握られてステウやアワホとバワカにそういう事を強いられたのではと……」
「そんな……僕のせいで……」
ロギスは、パウバマの話を聞いて自身を責める。
「いえ、貴方の責任ではありません! 私も相談するように声を掛けたり関わっていた3名には注意をしていましたが、上手く躱されたのと決定的な証拠も見つけれなかった、そして彼等はA級冒険者の為処罰する事も難しかった……これは私の責任だ!」
パウバマは、握り拳を作りながら悔しそうにする。
「仕方ないです! パウバマさんにも立場があります!」
「そうだな……有志殿の言う通りだ、パウバマ殿は出来る限りの事をした、力及ばない事はこの私にもある、気を落とさないでくれ」
「そうです! きっとファイナさんも分かってくれます!」
「そうですか……そう言って頂けて嬉しい限りです、それに勇者様のお陰で彼等への処罰を下せました、私の力及ばな勝った事をこうもアッサリと……本当にありがとうございます」
「そんな、当然の事をしたまでです!」
パウバマは、有志に頭を下げてお礼を言った。
実際は、ただファイナが男にだらしなく、冒険者ギルドの男冒険者を喰いまくっていただけである。
しかし、ギルド長であるパウバマは、いつも割に合わない仕事の依頼を受けて貰えるように、自分勝手な冒険者相手が引き受けやすいように、上手く乗せる事で有利に話を進める話術に関して長けていた。
その為、今までの会話や相手の雰囲気を考え、ファイナの話を出来るだけ勇者やファルトコン王、シャイニャス姫を刺激しないように話を進めた。
そのおかげで、何とか責任から逃れる事に成功した。
「でも今ので分かった……この事件の真相が……」
「真相? ですか?」
ロギスは、有志に救いを求めるように見つめる。
「ファイナさんは、子供が出来ない事を悩んでいたロギスの事を助けようと考えた、その相談に乗ったのがしつこく口説いて来たステウという男、そしてソイツはいくら口説いても自分のものにならないファイナさんの悩みに付け込みファイナさんを嵌めて彼女を無理矢理汚した、そしてそれを脅しに何度も何度も……」
「やめてくれ……」
ロギスは、苦しそうにしながら有志の推理を遮る。
「ロギスさん、気持ちは分かります、しかし最後まで聞く勇気を持って下さい! これは貴方の大切な奥さんの名誉を守る為なんです! 大丈夫です、ロギスさんなら……」
「!! そっそうですね……僕もファイナのように勇気を持たなくては……」
ロギスは、有志の言葉に励まされて推理の続きを聞く。
「そして、その場所を提供したのはあの宿屋の店主であるラノーバ……恐らく口止め料も貰ったのでしょう、だけどファイナさんはきっとこのままではいけないと思い、そして愛するロギスさんをもう裏切りたくないと思ったのでしょう、きっと抵抗の為にステウという男に立ち向かいそして……この後は言わなくても分かると思います」
「そうですね……ファイナさんはよく頑張ったと思います」
「ああ……誇り高い女性だ……」
「ファイナ……」
周りの冒険者達は有志の推理に拍手で讃える。
男性冒険者達は、ファイナとの肉体関係がバレなかった事を確認すると安堵するのであった。
こうして、天山有志のチート式超憶測的名推理により事件は幕を閉じたのであった。
その後、アワホとバワカは冒険者資格を剥奪され、国外追放されたのであった。