記録68『連絡』
惑は、無法都市から離れた森へと足を運んでいた。
「ふむ、素晴らしい群生地帯だ……これらは薬草か?」
「そうみたいだね、匂いがアイテムショップで売られている薬草と同じだから」
「ならこれらも採取するか……色々と必要になるかもしれない……そう考えると次の街でも森とかを調べてみるのも一興かもしれない」
「あの、復讐を忘れてはいないですよね?」
エレンは、不安そうにしながら惑に聞く。
「君はそれよりイネに鍛えて貰いなさい、チェリアとトンジャンを超えているからって君は勇者より強いと思わない方が良い……レイシャにも勝てるかは分からないよ……なんせ君のその状態は再生なしでの戦い方になるんだから」
「確かにそうですけど」
「まあ待って、色々なインスピレーションを受け続ける事が科学には重要なんだよ……科学は地道なんだ」
そんな時、惑はある声を聞きとった。
「どうしたの?」
「アルマダさんからだ」
惑の錬金術師のレベルは再び上がった。
それは、ペプリア国での大量虐殺とアルマダの若返りの研究、更にはアルマダのプレイの観察をする事によってレベルが上がった。
Name:西院円 惑
HP:2100、MP:2100、攻撃力:2100、防御力:2900、スピード:1900、知力:40000、魔法:なし、スキル:合成、採取、錬成、記録、複製、修復、変換、追加、連絡
職業:錬金術師Lv6
スキル連絡は、自身が契約した者と共にテレパシーのような繋がりで連絡し合う事が出来る。
「それなら記憶共有がしたいんだけど」
『その場合、相手の人格が自身に植え付けられる危険性があります、記録に入れるには相手の記憶を貰う事によってそれを入力する事で感情までは入らない事になります』
「ふむ、僕が僕自身でなくなるのは避けないとな……」
『惑さん! 惑さん!』
「どうしたの? アルマダ?」
惑は、焦ったような声を聞いて集中する。
『今から無法都市に来てください! 勇者に襲われてます!』
「ああ……あああまあ……そうだよねえ……よく考えれば無法都市を魔族まみれにすれば勇者としては放って置かないよなあ」
惑も、さすがに見落としがあったと反省した。
「どうしたの? 勇者?」
エレンは、復讐心満々で勇者の言葉を敏感に反応する。
「ああ、勇者が無法都市に来ているらしい」
「早く殺さないと!」
無謀に、走り出そうとするエレンをイネは引っ張って止める。
「今の君には無理だよ……お兄さんの意思を無駄にする気?」
「!! そっそうですけど……」
エレンは、兄の名前を出すとさすがに大人しくなる。
「僕等が倒せる可能性はほぼ皆無だけど……どうすれば良い? 何を望んでる?」
惑は、アルマダの目的を確認した。
『エレンちゃんの復讐の為、勝つ為の情報を貴方に渡したいの……その為に今僕に足止めして貰っているわ……』
「チェリアとトンジャンは?」
『死んだわ』
「そうか……すぐに向かう、君は逃げる?」
『ありがとう、でも私はここの長よ……だから……ここで人生を共にするわ……待っているわ』
そして、アルマダの連絡が切れた。
惑は、二人に説明を開始する。
「無法都市に向かうけど、戦うんじゃなくて情報を渡したいって……」
「アルマダさんは! どうするの?」
「国と共にするんだって……さすがに僕も彼女の意思を無視するのは趣味じゃないから助けない事にする」
「そんな……」
「仕方ないよ、本人の意思があるんだから、もし止めたいならエレンちゃんが説得した方が良い……私も惑も多分説得しても意味がないから」
「!! そっそうですか……分かりました……」
その言葉に、エレンは不満そうにしながらもイネに担がれる。
「いくよ、惑」
「うん、お願いね」
そして、イネは全速力で無法都市へと向かった。
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アルマダは、エルフ達の頭を撫でながらキスをする。
「頑張りましょう、ここで死んでも惑に情報を渡せば死に意味を持てる……私には眷属の情報を全て集約するスキルを手に入れているわ……そういう繋がり……」
「分かった! 私達も頑張って戦う!」
「出来るだけ時間を稼げば戦闘パターンが分かる! 僕も奴隷になる前は戦いに身を投じた事もあるから分かる!」
「私も頑張る!」
そして、アルマダ達はすべきことを終えると戦いに供える。
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有志達は、変態男を倒す為必死に立ち向かう。
「おしっこおおおおお!!」
「きゃあああああ!!」
だが、排尿しながら突進する為、どうして悲鳴を上げて仰け反ってしまう。
「くそおお!! この変質者があああ!」
「うへへへへへ!! 引っ掛かったぜえええ!!」
僕の男は、とにかく時間稼ぎに徹する。
そして、その為には自身の欲望を発散する事で興奮度を増せば、厄介さが極まる。
「有志! 聖剣のもう一つの力を解放する為に聖剣に魔力を集中させて!」
「レティリア?」
「良いから!」
「分かった!」
有志は、聖剣に魔力を集中させる。
「お願い……発動して……」
レティリアは、祈るように有志の聖剣を見つめる。




