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記録66『いく』

チェリアの目の前に現れたのは、いるはずのないアルマダであった。

チェリアは、それが自身の作り上げた幻想である事はすぐに分かった。

だが、チェリアの心が傷付いた事によって、ただ都合の良いアルマダが現れたのではない事が分かった。

今目の前に映っているアルマダは、チェリアが知り得るアルマダの全てであった。


『チェリア、私が教えた事は覚えている?』

「はい、覚えています」

『なら大丈夫よ、貴方は例えここで負けたとしても、愛を失う事はない……私達にとって大切なのは勝ち負けじゃなく愛を失わない事なのよ』

「アルマダ様」

『良い? この無法都市は私達の愛で塗り替えた性の街よ、誰からも理解されなくても、誰からも嫌悪されたってそれすら愛で埋め尽くす事の出来る街なの、嫌悪も罵倒も全否定も暴力も理不尽も、死だってこの街では全てが興奮材料なの……ほら? 死ぬ時逝くって言うでしょ? 性で言うところのイクよ? 似てると思わない?』

「ふふ、本当だ」


チェリアは、最早追い詰められておかしくなったのではと自身でそう思ってしまうぐらいの思考をアルマダの幻想と話していた。

しかし、それでもチェリアは幸せであった。


チェリアにとって、過去より未来より、今が幸せであれば、現在が幸せであれば全てが良かったのである。

実際今までの人生も、休日の幸せを噛み締めるのがチェリアとトンジャンの唯一の楽しみであった。


だからこそこれで良かった。


「ふふふ……ははははははは!!」

「フン、一人で何をブツブツと言っている思ったら……ついに壊れたか」

「有志! 気を付けて! コイツ一人で話してるんじゃない! アルマダとかいう奴と話しているよ! 多分この近くにいる!」


テュリアメルが、有志に注意を呼び掛ける。


「そうか、だけどもう大丈夫だ……俺が君を守るよ」

「有志……」


力強い有志の言葉に、テュリアメルの心に勇気を与えた。


「覚悟しろ! 屑野郎が!」


有志は、走り出す。

大切な仲間、テュリアメルを守る為、二度と大切な者を失わない為に、今チェリアを斬り倒そうと襲う。


「頑張って! ゆうぶが!!」


だが、チェリアは容赦なく人質であったテュリアメルの首を掻っ切った。


「テュリアメル!! うわああああああああああああああああああああああああああああああああ!!」

「ぐぶああう!! ああ……アルマダさま……これが逝くですね……本当にイク時と同じだ……トンジャンも同じだったのかな……頭が白濁する……脳みそに直接ぶっかけられたような……そんなきぶ……だ……」


そのままチェリアは、イキながら逝ってしまった。


「この気持ちの悪いゴミ野郎が! テュリアメル! しっかりしろ! こんな穢れた奴なんかに殺させはしない!」

「ゆう……し」


テュリアメルの目には、まだ希望が残されていた。


「聖剣よおおお!! 俺の想いに応えてくれえええええええええええええええええええええ!!」

『ホーリーヒールが発動しました』


そして、首に着いた傷もテュリアメルの出血した血すらも全てテュリアメルに戻った。

テュリアメルの目は、ゆっくりと開いた。


「なお……った?」

「テュリアメル!」

「テュリアメルさん!!」

「私は信じてたよ! 有志の力を!」


三人も有志とテュリアメルに駆け寄る。

そして、そこで倒れているチェリアの朽ちていく死体を見て嫌悪する。


「それにしても……今回の敵は本ッ当に気持ち悪かったですね」

「ああ、今まで様々な者達と戦いを挑んできたが……ここまで身の毛のよだつ敵は初めてだ……まさに女の敵だな」

「こんなのに殺されるだ何て……屈辱の極みです……有志! 助けてくれたありがとう!」

「こんなのいつまでも見ていたくもないよ、さっさと消えちゃえ! えい!!」


チェリアは、四人から散々罵倒された挙句、放って置けば消える死体にも関わらず、レティリアに追い打ちのように聖魔法で掻き消された。


「ありがとう、レティリア……この世の穢れがまた一つこの世から消えた」

「えへへへ、有志に褒められちゃった!」


レティリアは、有志に褒められて照れる。


「有志! 私だって頑張りますよ!」

「私もだ! 次こそは卑怯者に負けないようにする!」

「私ももっと弓で援護するよ!」

「私だってこれ以上頑張れるもん!」

「ありがとう皆! さあ! アルマダという者を打ち倒そう!」

「はい!」

「ああ!」

「うん!」

「しゅっぱあつ!」


五人は、現在の無法都市支配者の者へと向かった。


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「そうですか……二人は逝きましたか……でもチェリア、トンジャンよく頑張りました……」

「二人は、最後……アルマダ様の言葉を思い出して……気持ちよさそうにイキながら逝きました……」

「そうですか……気持ち良くなれて良かったわ……本当に良かった……」

「ええ……そうですね……」


アルマダは、僕の男の報告を聞いて微笑む。

僕の男も、涙を流しながら笑う。


「貴方は逃げなさい……ここに勇者が来ます」

「酷いですよ、こんな気持ち良い事独り占めだなんて……俺にも味わわせてください」

「貴方……いえ……良いわ……イキなさい」

「はい、イッテきます」


そして、僕は勇者の元へと走った。


「貴方達はまだここに来たばかりよ……もしかしたら勇者に助けて貰えるは、勇者はエルフと一緒と聞いています……」

「酷いですよ、あんなに愛してくれたのに捨てるだなんて……貴方らしくない……」

「そうですよ! 最後まで我々は貴方を愛して逝きたい、だから一緒に……」

「そうですよ! 一緒にイキましょうよ!」

「……そうね……私が間違っていたわ……さあ! 皆で気持ち良くなりましょう! 愛と性の力で! 思いっきり興奮しましょう!」


そして、アルマダと元奴隷エルフ達は、勇者達の乱暴を受ける準備をした。


「さあ、共に興奮する時間よ」

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