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記録65『真実の愛』

トンジャンは、自身に怒った事に対し理解出来なかった。

当然、チェリアもトンジャンのみに起きた事が信じられず立ち尽くす。

突如謎の光が、トンジャンの足元に現れると同時にトンジャンの中に入り込む。


「いだい! なんだよ! ごれえええ!」

「トンジャン! そいつから離れろ!」

「ダメだあああ!! いだいぢあ!」


トンジャンの体には、割れて行きながらそこから光が漏れ出す。


「だあ! だずげ!」

「トンジャン!」

「ぐあああがあああああああああああああああああああああああ!!」


トンジャンはそのまま、爆発して粉々になった。


「こ……これは」


有志も予想外だったのか、驚きで足が止まっていた。

レイシャは、有志の聖剣に斬られた傷が塞がっており唖然とする。


『愛の力でレイシャのダメージは完全回復し、先程の魔族に聖の魔力を流し込み滅ぼしました』

「愛……そうか! 俺とレイシャの愛か!」

「そうだよ! 有志はシャイニャスもレイシャも私もテュリアメルも愛している! その愛の力があの魔族を滅ぼしたんだ!」

「さすが有志です! 有志の愛がレイシャさんを助けてくれたんですね! 神様は誰が正義なのか見てくれているんです!」


あまりにも有志達にとって都合の良い展開であり、最早不正のような奇跡。

それを愛と簡単に言い切られてしまった。


「ふざけるな! 何が愛だ! 何が神様だ! 何が正義だ! こんなことあり得るか! 糞共がああ!」

「フン、負け犬の遠吠えだな……そんなんだからお前等は誰からも愛されないんだ」


有志は、チェリアに対して冷たく言い放つ。


「黙れ! 俺達はアルマダ様に愛されている! 何の役に立たなかった俺達もアルマダ様のお陰で! アルマダ様に愛されたお陰で強くなることが出来たんだ! こんな俺達でも変われたのはアルマダ様のお陰なんだ!」


チェリアは、目の前で死んでしまったトンジャンの言葉を思い出しながら有志に対して、反論する。


「は! どうせ風俗だろ? お前等見るままにモテなさそうだしな……何の役にも立たなかったのが変われただと? それはお前等が都合の良い道具に成り下がっただけだろ? そんなくだらない人生を嬉々として語れるとは……つくづく無駄な人生を送って来たようだな……」

「違う! 黙れ黙れ黙れ! 俺達を否定するな! 俺達の人生には意味があるんだ! アルマダ様がそれを教えてくれた! 俺達の愛は本物なんだ!」

「黙れ、糞童貞共が……」

「っど! っどお! 童貞じゃない! 俺達はアルマダ様と!!」


チェリアは、有志に昔から馬鹿にされ続けて来た言葉を言われて怒り狂う様にアルマダとの行為を話そうとする。

しかし、それでも有志の見下す表情は変わらなかった。


「お前は所詮商売女に騙されて寝ただけでそんなのは真実の愛じゃない、それに……お前のそれは童貞卒業じゃない、俺のいた世界ではそういうのを……」

「だ! だま……」

「素人童貞って言うんだ」


冷たく言い放たれた言葉に、チェリアの頭は真っ白になる。

自分達が感じたアルマダの愛を偽物と言われ、心が折れそうになる。

結局変わろうとしても馬鹿にされ、見下され、自分では手に入れられないものを上の者達に独占されてしまう。

そんな虚しい感情が、チェリアの心の中に重く圧し掛かった。


「そうです! 有志さんの言う通り! そんな淫らなお店で愛を知った風を装う貴方達は滑稽にも程があります!」

「その通りだ! 貴様等は本当の愛を知ろうとしないまま! いや自信がないという下らない理由で何も行動を起こそうとしなかった臆病者め! そんな安直な愛に逃げた貴様等には! 二度と本物の愛は訪れやしない! 救われない屑共め!」

「有志と二人の言う通り! 偽物の愛でよくもそんなに誇れるものだね……見ていて恥ずかしい存在だよ、君達」

「それが分かったなら私を放しなさい! 汚らわしい魔族! 偽物の愛を誇る様な卑しい手で私を触らないで! 穢れが移るわ!」


チェリアは、有志達に存在そのものを全否定され、精神が崩壊し始めていた。


(こいつ等の言う通り……俺とトンジャンはただの滑稽な下らない人間なのか……人間から魔族に変わった穢れた人間……いや魔族か……皆から罵倒され、見下され、侮蔑されても仕方のない……まさにこの世界のゴミ……そんな生き物なのかな……)


チェリアは、徐々に希望を失う。


(チェリア、愛を諦めないで……例え貴方のそれが偽物だったとしても……愛は愛じゃない)


しかし、どこからか聞いた事のある声で、チェリアを励ます言葉が小さく降り注いだ。


(だれだ……もう俺なんてただの下らない……)

(下らなくないわ……ええ下らなくないわよ……だって貴方は……)

(貴方は……)


そして、徐々に目の前に映る者の姿が見え始めるような感じがした。

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