記録64『二人の成長』
二人は、使えない人間として仕事場から疎まれていた。
しかし、基本現場は余裕がない状態が多く、彼等の仕事場も同様基本余裕がなかった。
その為、先輩が付きっ切りで仕事を教えるのではなく、通常業務を行いながら学ばないといけない。
そんな事をすれば、出来る人と出来ない人で明らかに差が現れる。
仕事の出来る人間は、圧倒的なコミュニケーションと世渡り上手な者が多く。
皆と和気藹々と仕事が出来る環境かを作る事が出来た。
一方、チェリアとトンジャンは、人とのコミュニケーションが上手く取れず、皆と共に仕事が出来る環境を作るのに失敗した。
その失敗こそが、仕事に影響するのであった。
黙々と努力し、勉強が出来れば良いという訳ではない為、器用に生きれる者こそが成り上れるという事が多い。
しかし、チェリアとトンジャンは、黙々と努力すればかなり出来る人間で、丁寧にじっくりと強くなれる人間であった。
その利点を引き上げる事に成功したのが西院円惑とアルマダであった。
惑は、イネを使って死なない体にしたチェリアとトンジャンを命懸けで鍛えさせた。
さすがの二人も、命が掛れば努力に対する集中力を引き上げた。
更に、アルマダが二人を愛し、二人は愛の為に絶対に役に立ちたいという懸命な想いを利用する事で、成長性を上げた。
その為、今ではイネには敵わないが魔物の数体と戦えるぐらいには強くなったのであった。
「!!」
チェリアは、有志の聖剣をギリギリで躱しながら急所に拳を入れる。
しかし、有志にはその攻撃が効かなかった。
「有志! 大丈夫ですか!」
「ああ! 問題ない!」
「そうか、勇者に拳は効かないか」
トンジャンは、その様子を観察し気付くと、チェリアに攻撃をしようとするレイシャを襲う。
「甘い!」
レイシャは、抜刀した剣で最速の斬撃を喰らわす。
「無駄だ!」
しかし、トンジャンにとってその攻撃は殆ど無駄であった。
トンジャンは、体を半分に斬り裂かれながらも骨を使ってレイシャの腕を斬り付ける。
「あああああ!」
「レイシャ!」
「お前の相手は俺だ!」
チェリアは、ダメージを与えられないと知りながら、有志に立ち向かう。
「この!」
「当たらねえよ!」
チェリアは、何度も有志の攻撃を躱しながら、自分の攻撃を当てていく。
「糞! だがもうお前の攻撃は覚えた!」
有志は、チェリアの攻撃を受け続けていたが、徐々に避け始める。
「お前の攻撃はもう当たらない! 俺はお前を倒せる!」
「!!」
有志は、真っ直ぐチェリアに向けて聖剣を振るう。
そして、確かな手ごたえを感じた。
「俺の事を見すぎたな……」
「は……」
しかし、聖剣に刺さっていたのはレイシャの脇腹であった。
「がハア!」
「そんな! バカな!」
トンジャンは、したり顔で有志を見る。
「レイシャさん!」
「レイシャ!」
「有志に仲間を斬らせるなんて……」
トンジャンに対して、レティリアは睨み付ける。
「おいおい、俺でも知ってるぜ? 戦う時は環境を利用するってな……相手の位置の把握、仲間の戦い、足場がどうなっているか! 風はどう吹いているか! 全ての事象に注意を向け、その全てを利用する事こそが戦いだ! 試合じゃないんだよ! 試合じゃあ!」
「卑怯者!」
「ふん、所詮はその程度の連中か……」
チェリアとトンジャンは、勇者パーティーを嘲笑う。
「笑うな! 屑共があ!」
「黙れ! 俺達の仲間を殺しやがって! 貴様等には俺等が味わった以上の苦しみと屈辱を与えてやる!」
「そうだ! あっさり殺して無力感を死んでから味わい続けろ!」
トンジャンは、足元にあった石を有志に向けて蹴り込んだ。
「安直な攻撃を!」
当然、有志はその石を避ける。
「キャア!!」
「シャイニャス!?」
しかし、その石は後ろにいたシャイニャスの顔の皮膚を斬った。
「うう……」
「ああ……ああああああ」
有志が避けた事によって、愛する者が傷付く。
だからこそ、有志は二人を睨む。
「フン、考えている事は分かるぞ」
「ああ、本当に馬鹿だな」
有志は、聖剣を固く握る。
「おらあ!」
「ウラああ!」
二人は、有志に襲い掛かる。
「無駄だ!」
しかし、それと同時に有志は聖剣を振るう。
カウンターで必ず当たるように、間合いに入る瞬間を狙ったのだ。
しかし、二人は有志の通り過ぎるように無視した。
「有志! コイツ等の狙いは有志じゃない! 動けなくなったレイシャだよ!」
「何だと!」
「馬鹿め! それだけじゃない!」
「そこのエルフもだ!」
チェリアは、テュリアメルの首を掴む。
「うう!」
「かはあ!」
トンジャンは、レイシャを蹴り上げて傷の入った腹を踏み付ける。
「あがあああああああああ!」
「二人共!」
「人質だ……大人しくするんだな」
「エルフ……お前は本当に役に立たなさそうだな……まあ弓で狙い打ちにくいように動いたのは俺達だがな」
「まさか……それも狙って……」
有志は、絶体絶命の状況に立ち尽くすしか出来なかった。




