記録63『無差別殺人』
エルフとのプレイ後、アルマダは優雅に紅茶を飲みながら一服していた。
「ふー、この一時が堪らないわ」
寛ぎながら、幸せそうに眠っているエルフ達、そしてそのうちの一人からシーツが落ちた。
「あらあら」
アルマダは、少し寒そうにしているエルフにシーツを掛け直した時の事だった。
「大変です! アルマダ様!」
「うう」
「し! 今エルフ達が寝たところなの……静かに」
アルマダは、目が覚めそうになったエルフを見て、入って来た男に注意する。
「すっすみま……いや! 緊急事態です!」
「緊急事態?」
「勇者がこの街に現れました!」
「勇者が来るのは分かってた事ではないですか、で? その勇者が何かしたんですか? 街の者に剣を向けたとか怪我をさせたとかそんなんですか?」
ある程度の予想をしていたアルマダは、男に勇者の行動を聞く。
「街の人達を殺し回っています!」
「はああああ!」
勇者の明らかな異常行動に、驚きを隠せなかった。
「何ですかそれええ! ただの無差別殺人じゃないですか! それが勇者のする事ですか!」
「ですが事実現在進行形で街の者が殺されています!」
「私が行きます! 何とか食い止めて貰う様に伝えてください!」
「アルマダさん! ここは俺達に任せてください!」
「そうですよ! 貴方はここに居るエルフ達を守ってください!」
すると、チェリアとトンジャンが話しに割って入って来た。
「二人共……分かった! お願い! でも無理はしないでくださいね!」
「ああ!」
「絶対にアルマダ様の元へ帰ってきます!」
「二人共! お願いします!」
「行くぞ! チェリア!」
「ああ! トンジャン!」
二人は、拳と拳をぶつけ合って勇者の元へと向かった。
「アルマダ様……」
「私達……これからどうなるんですか」
「私達もアルマダ様のお陰で魔族になりました……もしもの時は私達も戦います……皆でこの状況を乗り越えましょう」
「そうですよ」
「きっと大丈夫です!」
「アルマダ様! 怖がらないでね!」
エルフ達は、最初は不安そうにしていたがアルマダを不安にさせないように強い言葉で元気付けようとする。
「ありがとう、皆」
アルマダも微笑みながら、エルフ達を抱きしめる。
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「はああ!」
「せああああ!」
「ファイアーアロー!」
「強化!」
「くらええええ! ホーリーバレット!」
有志達は、街に蔓延る魔族達を一掃していた。
「ギャアアア!」
「助けてええええ!」
「いだい! ぐぞおお! ぜんぜんぎもじよぐないいいい!!」
行為に励んでいたせいで、有志達の突然の攻撃に対応出来ずドンドンと朽ちていく。
「くそくそくそおお!!」
「死にたくない! 死にたくない!」
「なんなんだ! 何なんだよおおおお!」
「俺達は! 世界を守る勇者パーティーだ! 魔族共! 人間の力を思い知れえええ!」
「がああああああ!」
次々と、逃げ惑う無法都市の住人は、有志達の放つ攻撃に一撃で殺されていく。
目の前で朽ちていく母を見て涙を流す青年、先程まで一緒に行為していた者がもういなくなったという現実、恐怖で楽しかった全てが消え去る血と灰の匂い。
無法都市全てが、絶望に包まれていた。
「そこまでだ! 勇者!」
「ここからは俺達が相手だあああ!」
「あれは! アルマダ様の直属護衛のチェリア様とトンジャン様だ!」
「あの2人が来てくれたら安心だわ!」
「頑張れええ! チェリアさばあああああ!」
応援する子供が、目の前で殺された。
「嫌あアアアアアアア!」
母親らしき者が、朽ちる子供を見て悲鳴を上げる。
「貴様等! 許さんぞ! 俺達が貴様等をぶっ殺してやる!」
チェリアは、怒りに任せて殴り掛る。
「黙れ!」
「ぐああ!」
「チェリア! 落ち着け! 冷静にならないと殺されるぞ!」
「ああ、すまない」
取れた腕を見るが、すぐに朽ち始めた。
「まずい! チェリア! 痛いぞ!」
そして、すぐさま朽ちそうになっている腕を再び斬った。
「ぐうう!!」
そして、斬れた端は朽ちて消えたが、チェリアは難を逃れた。
「はあはあ、フン!」
そして、すぐに腕を再生させた。
「やはりな、朽ちる前ならば再生できるか……」
「ありがとう、トンジャン……助かった……もう冷静だ……」
「ああ! 行くぞ!」
「おお!」
そして、二人と勇者パーティーとの戦いが始まった。




