記録61『無法都市を世直し』
有志は、テュリアメルの為に装備と武器を買いに武具屋に向かった。
「エルフの武器って弓ってイメージだけど……実際どんな武器を使うんだ?」
「良く知っていますね! さすがです! 私は昔から弓を射っていました! だから弓があれば400mは確実に狙い撃てます!」
「凄いですね! さすがエルフです!」
「姫となると弓の技術も凄いんだな! 私もエルフとの交流はあるが300mか250mが射程距離の者が多かった! 英才教育って奴かな?」
「えへへへ」
テュリアメルは褒められて嬉しいのか、顔を赤くする。
「ならいい弓を買って上げないと!」
「本当ですか! ありがとうございます!」
有志の心遣いに、テュリアメルは目を輝かせながら弓を見て回る。
レティリアは、そんな有志を見て満足そうにする。
「さすがだね、有志は心が広いんだから!」
「あ……ありがとう」
そして、テュリアメルは一つの弓が目に入った。
「すごい……こんな立派な弓見た事がない……」
感動しながら、弓を見つめながら感動で震えている。
「おお! 良い目をしているね! 弓柄はこの世で一番魔力があると呼ばれる魔竜の体からはがれた鱗を素材にして、弓の弦は最も固い糸を出すと呼ばれるハードスパイダーの糸を使っている! これで射る弓は高濃度の魔力を通して相手を討つことが出来るんだ! 命中率も格段に上がる!」
「それは凄いですね! これが欲しい?」
「良いのですか! 勇者様!」
「勇者! 貴方が……なら少し勉強しても良いよ!」
「いえ! 大丈夫です! 新しい、そして大切な仲間に値切り何て必要ないですよ!」
「何て太っ腹だ!」
「さすが有志だ!」
「どこまで人が出来ているんですか!」
「だって有志何だもん! 当然だよ!」
ペプリア国の王からたんまりお金を貰った有志は、金銭に困る事はなく、更には冒険者稼業で稼いだ金がある為、無駄遣いしても何も問題ないぐらいであった。
有志は、皆から絶賛されて少し優越感に浸っていた。
「本当にありがとうございます!」
「よかったな! エルフの嬢ちゃん!」
そして、テュリアメルに弓と防具の一式を有志に買って貰い、さっそく装備する。
「凄い! さすが姫様です、着こなしも完璧ですね」
「えへへへ、昔から父様や母様、それに兄様に色々と仕込まれていまして!」
今までの経験が活かせて、それを褒められた事に喜びを感じる。
有志は、微笑ましそうにしながら弓を持つテュリアメルの頭を撫でる。
「これでテュリアメルも勇者パーティーの弓使い! 弓使いのテュリアメルだ!」
「うん!」
そして、五人共必要な道具を街で購入して国外へと出た。
「さて、この後無法都市へと向かおうと思う」
「無法都市……」
「確かに……あの都市には大量の殺人犯、麻薬常習者、奴隷商人等が居る」
「それに……罪から逃げた脱獄囚が都市に入って法から逃れると言われています」
「私の仲間達も無法都市に売られて帰ってきませんでした」
「私達にもその噂は聞いた事がある……本当に酷いよね、被害者の人達が泣き叫んでいるのを嘲笑っている姿は本当に醜いわ」
そんな、酷い状態を聞いて有志の心は決まる。
「だからこそ俺達の手でそんな悪人の街を打ち倒して世界を平和にするんだ!」
「ええ! 私もその意見に賛成です!」
「私もだ! 騎士としてそんな奴等を放って置けない!」
「私達でそんな奴等全員やっつけちゃおう!」
「私も沢山協力します!」
有志の手を取って、皆決意した。
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ライアンは、再び無法都市でアルマダと会っていた。
「勇者がこの街に来るかもしれない」
「そう……そういう事をしに来るって事でもなさそうね」
「恐らく自分の正義を振り翳したいと思ってるんじゃないか? ペプリア国でもそんな感じだし、冒険者でも好き放題したと言われている……」
「フクフーク神の教えを破らせたって話だっけ? 私も奴隷時代に聞いたわ……」
「そう! マジであれは大変だった! そのせいで魔王の侵攻が分からなくなったんだ! 勇者が召喚されたからプラマイゼロとして取り扱ったんだが俺はそこが心配なんだ!」
ライアンは、机を拳で叩きながらアルマダに訴えかける。
アルマダは、ライアンの手を握り落ち着ける。
「まあまあ、私も精々気を付けるわ……せっかくの魔族との平和交渉が上手くいってるんだから、勇者に邪魔されちゃダメよ」
「そうだな、このまま平和さえ取り戻せれば平穏は作れる、だからここを作ったし君のやる事を止めず、寧ろ手を貸している! 期待している、アルマダ!」
二人は、ワインを乾杯して飲み干す。




