記録48『ツッコミ待ち?』
吸血スキルを手に入れたアルマダを試す為、惑達は次の街へと向かった。
「で? どこに向かってるんですか?」
「ついてくれば分かるよ!」
「嫌な予感がしない」
「なら大丈夫? ですかね?」
「どうだろうねエ~私は慣れてるからいいけど……」
アルマダは、苦笑いを浮かべながら惑について行く。
「着いた!」
「ここ……」
「うわ……臭」
「相変わらずね……ここは……」
そこは、シャグル国のもう一つの顔と呼ばれる街、無法都市であった。
「ここなら力こそ正義という、力至上主義のルールでまかり通っているから例えアルマダさんが吸血能力を使って人から生気を吸い取っても誰も文句を言わないよ! だってここで力なく殺されるのは力がない者の責任なんだからね!」
「確かにそうだけど……」
「惑さん……自身の安全の事は考慮しています?」
「?? してないけど? だってそんなことを一々考えて行動していたら勇者何て倒せないよ? 時に激しく! 時に緩やかに! それが実験を成功させる秘訣だと僕は考えている!」
「そ……そうですか……」
頭が痛くなりながらも、エレンは無理矢理自分自身の中で納得する。
「それに何かあれば、イネが守ってくれるよ! ね!」
「まあ守るけどお~」
イネは、少し残念そうにしながら頷く。
「私も吸血能力で頑張るわ」
「アルマダさんありがとう」
エレンは、先程アルマダに慰められて、アルマダに懐いていた。
「いいのよ! じゃあ! 行きましょうか!」
アルマダの言葉に、三人は後ろから付いて行った。
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無法都市は、シャグル国が敢えて作り、ワンダ街の反面教師として作られた場所である。
罪を犯した者、借金をした者、家に引き籠り出ようとしない者、テロを起こそうとした者、国外から盗賊行為、海賊行為を行おうとした者を押し込めた、いわば犯罪者や生活に困窮した者が暮らす街である。
「ひひひ!! 死ねえええ!」
「いいいでええええ! いでええよおおおお!! よくぼおおおおおお!!」
「グベエええ!」
ナイフで、腹部に刺してその傷を踏み付ける男は、見事に反撃にあい、そのまま壁に叩き付けられる。
「いいね! この掃き溜め感のある街! ここならきっと!」
「そうね~」
惑は、まるで動物園や水族館に来た子供のように、喜んで見ていた。
「さっそくしてみて! アレに!」
惑が指を差した先には、大喧嘩をして相手を数人殺した三人組が次の獲物を狙うかのように、惑達に向かって歩いてきた。
「おいおいおい! 何だこいつ?」
「ぎゃははは! コイツ等が気じゃねえか!」
「ババアもいるぞおお!」
男達は大笑いしながら、四人を見下す。
「お前等さあ! この街に入ったらどうなるか分かってないのかあ?」
「ガキが来ていい場所じゃあねえよなあ?」
「そっちの嬢ちゃん可愛いじゃねえか!」
男は嗤いながら、エレンをいかがわしい目で見る。
「何ですか! 止めてください!」
「ふー! いいねその嫌がり方! 俺好みだぜえ!」
「そっちの獣人! ボーイッシュ系の女かあ! 良いねえ良いねえ! カッコ良い上に可愛い! 気丈な目で嫌がる女を抱いて快感に身を委ねる姿も見てみたいもんだ!」
「……クッ殺せ!」
イネは、まるで思い付いたように惑から習ったセリフを言った。
「おいおい! まだ何もしてないのに早いぜえ! まあ興奮するけどなあ! じゅる!」
だが、男達は満足そうに見ながらイネに対して、舌なめずりする。
「あー……すみません、二人は嫌がっているので止めて貰って良いですか?」
惑は、少し時間を稼ぎながら、アルマダにアイコンタクトをする。
「おいおいおい! このガキ! イキッてやがるぜ! ギャハハハハハ!」
「お前さああ? 正義のヒーロー気取り? まさかここの人達を改心出来るとでも思って来たのか~?」
「笑わせるぜ! こんなバカがいたとはなア!」
惑の行動に対して、三人は馬鹿にする。
男達のリーダー格は、惑の胸ぐらを掴む。
「お前みたいな奴が俺は一番嫌いでねエ! 今なら見逃してやる、ここからとっとと出て行ってママのおっぱいでも吸ってな!」
男は、煙草を思いっきり吸うと、その副流煙を惑に吐き掛ける。
すると惑は、手を上げて男の胸元辺りに裏手で軽く叩く。
「って! おっぱい吸いたいのは煙草吸ってるお前だろ!」
惑のツッコミによって、先程まで騒いでいた男も、イネとエレンとアルマダも、一斉に黙る。
そして、数分間の静寂が流れる。
「て! テメエええ! どういう事だゴラアアアアア!」
男は、惑の胸ぐらを上げて怒鳴る。
「え? だって煙草を吸う人って確か母親のおっぱいを飲んでいた名残であって、精神的に乳離れが出来ていない人って言うじゃん! だから君が僕にママのおっぱいを吸えって言うとさすがにツッコまずにはいられなくてねエ! あれ? もしかしてツッコミ待ちじゃなかった?」
「て! テメエえええ!」
「よくも兄貴をおお馬鹿にいいい!」
「許せねえええぜええええ!」
三人は一斉に惑へ殴り掛るが、牙を生やしたアルマダが三人の内の一人の首筋に噛み付く。
「ぎゃああああああああ……おうわああうおおおおてあああああ……」
「アプッボ!」
「あああ……いやだ! いやだぶああああああ!!」
「バウッバア!!」
リーダー各以外の二人の男は、アルマダに血を吸われて干からびた。
「あああ……あああああああ」
リーダー核の男は、怯えて地面に腰が落ちる。
「たのむううう……たすけでええええ」
「さっきこの子を殺そうとしたじゃない……貴方も覚悟を決めたら?」
「待ってアルマダさん!」
イネは、リーダー格を襲おうとするアルマダを止める。
「ああ……ありが……」
「この人は私が犯したい!」
「え?」
イネに、助けて貰えると思い礼を言おうとするが、イネの言葉にリーダー格の男は再び絶望する。
「良いわよ」
「やったあああ! さ! 服を脱ぐんだ!」
「いや! 止め!!」
リーダー格の男は、イネに穢されてしまった。




