記録46『吸血』
惑は、一人の老婆を指さした。
「あらあらあ、この私をえらぶだなんてえ~見る目があるねええ~」
気味の悪そうな笑顔を向け、老婆はケタケタと嗤う。
「うーん、良いね! 僕が望んでいたのはこれだ!」
「え~」
「そういう趣味が……」
エレンも、惑の選択に対して少し引いていた。
「ま! まあお客さんがそれを望むなら……あまりお勧めはしませんが……」
「おい、小僧……どういうことだ」
奴隷商は、老婆に睨まれて少し動揺する。
「とにかくこの人いくら?」
「へえ、銅貨3枚です!」
「まあ! お得だわ! この老婆がたった3枚だなんて!!」
惑は、銅貨を3枚支払うと老婆の隷属契約の為の書類にサインした。
「おら、ババア! 血を寄越せ」
「いたいわ~」
キャピる老婆に対して、奴隷商はイラつきながらも無視する。
「じゃあ行こうか」
「ええ……行きましょう……フン!」
「!!」
老婆は、売れ残ったエルフに対して、勝ち誇った表情で見下す。
エルフは、悔しそうにしながら惑を睨み付ける。
「おいおい、お前そんなんじゃあ誰からも買って貰えないぞ?」
惑は、そんなエルフに対して、注意を促す。
当然、客に対して睨み付けるようなエルフは、奴隷商に再び鞭打ちされる。
「こおんのおおお!! ゴミエルフガアアアアア!」
「ああああああ!! いだい! いだいいいいい!」
泣き喚きながらエルフは、傷だらけになっていく。
「おいおい、あのエルフははずれかあ?」
「あまり良いエルフではないのか……」
「何でもこっちを睨み付けるらしい」
「礼儀のなっていないエルフだ」
他の客達も、エルフに対しての興味がなくなり始めていた。
「じゃあ行こうか」
「ええ~」
惑は、老婆を連れて街の中へと消えて行った。
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イネは、惑から貰った金を全て娼館と男娼に使ってしまった。
今の今まで、娼館と男娼をはしごしていたのであった。
「ふー、気持ち良かったああ」
満足気な表情で色街を出て行く。
「アンタ達! イネちゃんはこっちのもんだよ!」
「ざけんじゃねえ! 俺達のイネちゃんだぞ!」
イネが出て行くと同時に、娼館と男娼との戦争が始まった。
イネは、全く気にせず惑が渡した宿への地図のメモを頼りに、町を進む。
そして、宿の中に入って部屋を開けるとそこには一人の老婆が拘束されていた。
「私の事を騙したのね! 信じていたのに!」
「フッフッフ! 騙される貴様が悪いのだあ!」
「貴様は今から我が秘密結社! サイエンスマード様に改造人間にされるのだ!」
惑とエレンは、ノリノリで老婆を改造しようとしていた。
「え! え!」
イネは、状況が読めず、ただただ間抜けな声を出すしかなかった。
「そんな! 止めてえええ! 乱暴しないでええええ!」
「今日が貴様の命日だああ!」
「噛み締めて生きるんだなアあ!」
「いやあああああああああああああああああああああああああああ!!」
イネは、終始困惑するしかなく、だが止めようとは思わず、ただただ見ているだけであった。
余計な事を言って、色街代を出して貰えないと思ったからである。
そして、数分後には、老婆の改造は終了した。
「ふー、もういいよ」
「あら? もう終わりなの?」
「はーい、お疲れ様です」
老婆は、その場で解放されて伸びをする。
「うーん、体が渇く様な気がするわ~」
イネは、惑に近寄ると質問をする。
「今度は何をしたの?」
「吸血鬼って知ってる?」
「ああ、人の血を吸って生気を頂き、永遠の命の延長をする生き物だよね?」
「まあそうだね、それでね! 今度は魔族の遺伝子なしでこの人は魔族である吸血鬼に進化出来るのかを調べてるんだ!」
「魔族の遺伝子がなくても出来るの??」
「それを今検証している、生き物の進化論的に考えれば魔族遺伝子ももしかしたら人間の中から突然変異で出来て生まれたのではないかっと僕は思ってね」
惑は、嬉しそうにしながら老婆の口を見せた。
「うわ、牙」
「吸血能力を得た彼女はきっとドンドンと若返るよ、血を飲めば」
「ふふふ、これで私も昔のように伝説的の娼婦に戻れるのね~」
「娼婦? 君娼婦だったの?」
イネは、老婆の娼婦の言葉に反応した。
「最低」
エレンは、ゴミを見るようにイネを軽蔑する。
「さあこれを」
惑は、当然のように近くにいたネズミを拾い上げて、老婆に渡した。
「え? これどうするの?」
「吸って!」
「え?」
「吸って!」
「いやいや! ちょっとまtぶぶぶぶうb!!」
「吸って吸って吸ってえええええ!」
「ぶぶぶぶぶぶ!!」
惑は、無理矢理ネズミを老婆の口に押し込んで血を吸わせようとするが、老婆は嫌そうにしながら拒む。
「ここで人間は吸うと大変だし取り敢えずネズミを吸って少し若返ってえ!」
「いやあああああああああああああああああああああああああああ!!」
この後、無理矢理吸わされた。




