記録45『奴隷買い』
惑達は、シャグル国はの領地の一つの街、ワンズ街の近くまで来ていた。
「取り敢えず近くの街で、今日は一泊する、まあ必要な物があれば買っておく名目もあるけど」
「確かあの町は確かライアンという王が収めている領地だったって聞いています、何でも近くに無法都市もあるとか……」
「そうなの? エレンちゃん詳しいね」
イネが感心しながら、エレンの肩に腕を回そうとする。
しかし、当然のようにその腕を振り払われる。
「私達だって自分の生活をどうにかする為に色々と働いているんです……特に私は大臣の侍従として働いてたんです……そういう話は聞いています、確かライアン様は無法都市の近くにわざとその街を作ったとか……善と悪はバランスが大事という考え方を大切にしているとか……そうすれば自然と国は安定するとのことで……」
「なるほど、近くに反面教師の街があれば自分達はそうはなるまいという考え方が働く原理か……そんなの本当に上手くいくのか? ってぐらい凄い発想力だ」
惑は、感心しているように見えるが、言葉だけを聞けば嘲笑しているようにもイネとエレンには聞こえた。
「でも実際街の評判は良いらしいですよ、皆余裕のある生活を送っていて相手が嫌がる事をワザとする人間がいない上に、例え村人や貧民であっても差別する事はないとの事で」
「なるほど、犯罪者に比べれば貧民はまだマシと言う事か……生きる為に犯罪を犯す者よりも好んで犯罪を起こす者の方が厄介だし、施しを与えれば生きる為の犯罪自体は起きないって事を考えての事かな?」
「しかもどの世界でも奴隷が売られていますが、奴隷が売られたい国ナンバーワンがシャグル国の領地だとも言われています」
「何そのランキング……誰が集計取ったの?」
「奴隷商が商品から聞いて取った集計らしいです」
「これからの情報は君から聞こう」
「うん、そうだね惑」
惑とイネは、エレンの情報通に感心していた。
しかし、惑は奴隷の話を聞いて少し目を輝かせる。
「ちょっと待って! 奴隷買えるの!」
「まあそうですね、奴隷は基本何処でも買えます、ペプリア国でも当然のように売っていましたよ、獣人とか亜人が基本ペットとして……」
「ほほう、素晴らしい、せっかく来たし俺も買ってみようかな? 金もあの国家転覆に紛れて集めたお金がたんまりあるし!」
惑は、嬉しそうにしながら奴隷を買おうと考える。
「性奴隷だね! 分かるよ!」
その言葉にイネは、目を輝かせる。
「違うよ」
「ワニャーン……」
しかし、あっさりと否定されてイネは落ち込んだ。
「奴隷を買うんですか? 一体何の為に……」
「まあそれは色々と必要な実験の為とか?」
「嫌な予感が……」
惑は、アイテム袋を手で叩きながら微笑み、エレンは不気味がる。
イネは、股間をもじもじとさせながら惑に聞く。
「ねえ、惑? 街って事はさあ……あるのかな?」
「さあ? あるんじゃない? 色街、探してみたら? お金は上げるよ」
「本当に!」
そんな時、街に近づいた時、近くに洞窟があるのを見つけた。
「あ、コウモリがいる」
「気を付けてくださいね、コウモリは吸血で相手の生気を吸うって聞きます、それを喰らうとしばらく動けなくなるらしいので」
「……イネ、アレを一匹捕獲したら色街代をもっと出すよ」
「分かったあああああ!!」
イネは走って、洞窟へ入り姿が消えた。
そして、数分後に一匹のコウモリを持って来た。
「これで良い?」
「うん!」
「今度は何を思い付いたんですか?」
「ちょっとねえ……それには……」
何かを考えながらボソボソと呟く惑を見て、エレンは少し呆れるように見る。
そして惑達一行は、ワンズ街の入国手続きを行う。
「冒険者登録はしてるか?」
「いえ」
「だったら金が要る、三人20銀貨だ」
「はい」
「通って良いぞ」
三人分のお金を払ってそのままワンズ街へと入る。
「はい、イネ」
「ありがとう!」
イネは、お金を貰うと走って色街を探しに行ってしまった。
「あのキメラ獣人は一体何で作ったんですか?」
「犬と猫と男にだらしない女と間男」
「うわああ……」
イネの性格を鑑みた上で、イネが作られた材料を聞いて何か納得していた。
そして、惑は奴隷市場の近くへ来ていた。
「へいへい! 君! エルフの女が入っているよ~! 一人どうだい?」
「エルフですか?」
「ああ! そうだ! このエルフは上者だよ! 少し法外な方法で仕入れてねえ!」
「へえ」
紹介されたエルフは、惑を睨み付ける。
「睨んでくるんですけど……上者?」
「こんのおおおお!! 糞エルフうううう!! お客様に何て目で見るううう!!」
「うう!」
奴隷商は、怒りのまま鞭で少女を叩き付ける。
エルフは涙目になるが、惑は止める様子はない。
エレンも、興味がなさそうに見ていた。
「すみませんねえ、少し教育がなってはいないがでも上者なのは保障します! どうです! 買います!」
「いりません」
「「!!」」
奴隷商は驚くように、唖然とする。
エルフも、自身に興味を持たなかった惑の態度に対して、怒りの表情を向ける。
「僕が欲しいのは少し違うかなあ……」
「そうですかあ……すみません」
「ここまで嫌がられると正直買う気も失せる」
「このおおおお!! バカエルフうううう!」
「ううう!」
惑は、最早ワザとなのか、わざわざエルフに文句を付ける。
しかし、惑はそんなつもりはなく、ただ実験素体として嫌がる者を使う事は、あまりいい結果を生まないという考え方をしている為、嫌がっているというだけで買う理由がないのであった。
「それより僕が欲しいのは」
「欲しいのは?」
惑が指さした商品は意外な者であった。
「アンタ……それは……」
奴隷商もエレンも、さすがに驚いていた。




