記録436『聖教国家行き途中国、地図から消されし幻の国! サドマッゾ国、1泊2日⑤』
「素晴らしい国だね! こんな平和で豊かな国はなかなかないんじゃないかな?」
「うんうん! 惑兄さんは良い事言う!」
「私も同感だよ! さっきまで見ていた人達も、椅子になっている子供達も、今窓から覗いて見える人達もみんな笑顔で暮らしている、もっとこんな国が増えればいいのに……」
惑と唯聖が、感想を話しているとイネは一つの疑問を問う。
「でも他の国から薄汚いって言われてるんだよね? どうして? 宗教も圧政もないのに……」
その疑問を聞いてリューイは、遠い目で答える。
「さあね……でも私が前に見たこの国を訪れた人は……」
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一人の女性が、この国の現状を嘆いていた。
「こんな……こんなのは許せない……どうして格差を作るの……どうして人を虐げるの……酷い……」
サドマッゾ国は、いつものように下豚民を迫害し、下豚民であるマッゾ族は恍惚な表情で、ご褒美を受けていた。
すると、焼き鳥を持った男が、道を歩いていると路地の細い道に、その食べ物を物欲しそうにする少年少女がいた。
男は、微笑みながらその少年少女に近寄る。
「良かった……まだこの国にも救いが……」
女性が、勝手にジロジロと覗き見をしていると男は袋から焼き鳥を取り出して、少年少女の目の前で美味しそうに食べ始めた。
「あああ、うめええ……こんなうめえのお前等みたいなゴミは一生かけても喰えねえんだなあ……ブフ」
男は、少年少女を見下しながら焼き鳥を頬張る。
「うう……うううう」
女は、少年少女から数滴滴る水が地面に落ちるのを見た。
「!! 許せない……」
女は、男に近づく。
しかし、少年少女は俯きながら涎を垂らしていた。
「ほえええええ……しゅごい空腹うう……空腹の苦しみと食欲がおしよせてえ」
「ほええええ……きちゃううう……食欲と快感が同時にきちゃうううう……」
よがりながら、男の焼き鳥を食べる姿を見ていると、女は男の頬を引っ叩いた。
「なんて事をするのですか!! この子達に施すどころか! 自分が目の前で食べるなんて!」
そして、女は自身が持っていたパンを少年少女に渡した。
「これを食べて、遠慮しないで……」
すると、少年は女の頬を引っ叩いた。
「え……」
「ッチ……っぺ!!」
そして、痰を女に吐き掛けて、中指を立てる。
「ファック!」
そのまま、路地の暗闇の中に消えて行った。
「え……ええ……」
すると、男は女を白目で見ながら言い放った。
「おまえ……最っ低だな……」
他の町の者達も、女を白い目で見る。
「ままあ、あの人酷い」
「本当ね……最低」
「人の心がないんじゃないのか……」
「どうかしている」
「ああは成りたくない」
女は、顔を真っ赤にしながら涙を流し何処かへ行ってしまった。
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「どう思う?」
「最低だな」
「人としてどうかしてる」
「自分が正しいと思い込んでいる典型的なタイプだな」




