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記録42『勝手に決めつけられる不快感』

「うわあああああああああ!! 兄さん!! 兄いいいさあああああん!!」


エレンは、泣き叫びながら顔を手で覆う。

惑は、興味深そうに有志の最後に放った攻撃の跡を見る。


「ほほう、さすが勇者だ! ピンチになると覚醒するだなんてそんなお約束な!」

「言っている場合!! エレンちゃん泣いちゃったんだけどおお!!」


そんな惑に、イネはエレンの背中を摩りながら慰める。

しかし、惑は呆れたようにイネに言った。


「セクハラはダメだぞ、イネ」

「!! チッ違うもん!」

「そうなんですか……触らないでください……ケダモノ」


エレンは、摩られていたイネの手を振り払って、冷たい目で拒絶する。


「そんわにゃああ! 酷い!」

「喋り方だけで図星であることが分かるぞ」


そんな事を話していると、勇者の方からレティリアと名乗る妖精の声が聞こえて来た。


「隠れてないで出てきなよ! 君が首謀者なのは分かっているんだよ!」


惑は、その言葉に溜息を吐く。


「何か僕の事を呼んでいるみたいだし言ってくるよ、だいぶ勘違いもされているみたいだしね」

「おお……行ってらっしゃい」


惑は、仕方なさそうにしながら顔を出した。


-----------------------------------------------------------------


有志は、悔しそうにしながら惑を睨み付ける。


「そうか……そうだったんだな……西院円惑! お前がこの魔族達を呼び寄せたんだな! 自分を追い出したこの国へ報復する為に!」

「そ! そんな……そんなくだらない事の為に……」

「糞野郎が!」


有志とシャイニャス姫とレイシャの言葉に、呆れた目で惑は見る。


「くだらないかくだらなくないかは君等が決める事ではないのでは?」

「黙れ! 言い訳をするな!」

「はあ……まあ違うんだけどね、僕にとってこの国の命運何て正直興味ないし」

「よくもそんな嘘を抜け抜けと」


惑の言葉を三人は信じようとしなかった。

すると、レティリアは辛そうな目で話し始める。


「あの男がこの国を滅ぼそうとしたことは事実だよ……けど……」

「違うんだけど?」

「あの男が魔族を呼び寄せたんじゃない……あの男が村人を魔族に変えて襲わせたんだ!」

「!! なんてことを……」

「我が国の村人を滅ぼしたのも貴様か!!」

「お前……人の命を何だと思ってるんだ! この外道が!」

「うーん……」


惑は、あまりに飛躍的な解釈に説明は無駄だと思った。


「まあいいや、襲ったのは違うと言っても信じたりしないだろうけど……まあ説明すると、この国を襲おうとしたのは村人の意思だよ? それだけは汲み取ってあげてよ、そうじゃないと村人達が可哀そうだろ? 彼等だって人間だ、人に言われたり改造されたぐらいであんなに命を張って戦ったりなんて普通しないだろ?」


惑の説明に、有志は聖剣を構える。


「そうやって自分の責任を村人に押し付けるのか! どこまで屑野郎なんだ貴様あ!! 確かに魔族となった村人達は命を使って俺達を襲った! だがそれは貴様が村人達を惑わし操ったからだろ! それを意思だと! 可哀そうだと! そんな詭弁が通るとでも思っているのか! 全部お前のせいじゃないか! もしお前がこんなことをしなければ村人だってい死なずに済んだんだ!!」

「ックックック……死ぬか死なないかは正直僕が改造しなくても変わらないだろうに……」

「何だと! 適当な事を言うな!」


惑の不気味な嗤いと呟いた言葉に、有志の聖剣を握る力が増す。


「いや、なんでもない、こっちの話……でもそうか……つまり君は、村人達は自分の意思も持たず、僕の言葉に操られ、人の尊厳すら僕の言葉だけで捨てて、何も考えず何も決めず、人に言われたから国を滅ぼした愚か者だと言いたいんだねエ~」

「なんだとお……」


有志は、村人達を愚弄されたと考え、殺意を纏わせる。


「だってさ! エレンちゃん! 君はどう思う? 君のお兄さん、アレンさんは意思もなくこの国を僕に言われただけで襲ったと思う?」

「エレン……さん、だって?」


惑が、呼び掛ける声に、有志は唖然とする。

そこには、憎しみの怒りを向ける一人の少女が立っていた。


「ゆ……ゆるさない!! 許さないぞ!! 勇者アああ!!」

「君が……エレンさん……」

「貴様はああ! 私の兄さんが! 戦いを! この世界に残した証を! 思いを! お前あそれを全て否定した! 私の大切な兄さんの存在を否定したああああ!!」

「ち! 違う! 君は勘違いしている! 俺はそんな事を言いたいんじゃない!」


有志は、必死にエレンを説得しようとする。


「そうです! そんな男の言葉を信じてはダメです!」

「そうだ! そいつは君を良いように操ろうとしている!」

「こちらに来てください! そんな男より私達を信じて! お願い!」


三人も、有志と共に必死にエレンを説得しようとする。

しかし、それがエレンの怒りに油を注ぐ形となってしまった。


「貴様あああ!! 兄さんの意思だけでなく! 私の意思すらも愚弄するかああ!! 貴様等はいつもそうだああ! 村人の事をその辺の石ころ程度に思っている!! 私達を見下し! 必要がなくなればごみのように捨てる! 許さない! 勇者も! お前等も! そしてそこの妖精もおおお! 絶対に許さないいいいい! 絶対に貴様等全員いつかぶっ殺してやるうう!!」

「落ち着くんだ! エレン!! 君はそんな事を言う人間じゃない! 君はもっと優しい人間のはずだ! その男のせいで怒りに飲まれているだけなんだ! 目を覚ますんだ!」

「あああああああああああああ!!」

「うわ、どんだけ地雷踏み抜くんだよ……馬鹿だなあ……」

「黙れええ! 貴様のせいだろう! 西院円惑おお!! その子を復讐鬼にしてどうするつもりだ! 復讐は何も生まないというのにい!!」


有志の言葉を聞いて、惑は嬉しそうに嗤う。


「アハハハハハ!! そうだ! 確かに! 復讐は何も生まない! それってさあ! つまりさああ! 後悔も心残りも残らないって事だろお! そんな合理的な生き方があるかあ! なかなかないよなアあ! この子は今生き方を決めたああ! なら僕もこの子の手伝いをするよお! ああ何て楽しみなんだ! 勇者パーティーを殺す! これ程不可能に近い目標は久しぶりだああ! それでこそ科学だアアアアアアア!」

「黙れええええええええええええええええええええ!」


有志は、勢いよく惑に斬り掛る。


「残念、さようなら」


しかし、惑もエレンを抱えて後ろへ飛ぶ。

同時に、イネが二人を抱えて近くにある足場を使い、地面に着地してそのまま走り去る。


「ばいばーい! 勇者アあ! またねええ!」

「待てえええ! 逃げるなアあ! 逃げるな卑怯者おおおおおおおおおお!!」


そして、惑達は有志達から逃げ去った。

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