記録40『怪物アレン』
「うぐグガ! っがああ!! いいい!!」
アレンは、突如苦しみ出す。
「貴様! 一体何をした!」
「答えなさい!」
有志とシャイニャス姫は、問い質そうとするが、もうその声はアレンには聞こえていなかった。
「あがあああああ!!」
そして、背中がボコボコと膨れ上がる。
「何だ! 蠢いているぞ!」
「悍ましい」
ファルトコン王とファマルマ女王は、あまりの醜さに顔を歪める。
「ぐがあああああ!!」
すると、アレンの背中から触手のような物が飛び出した。
「なんだ! なんなんだこいつ!」
「一体何を飲み込んだ……一体何なんだ!」
皆が困惑する中、アレンは消えた。
「え?」
兵士の頬に、風が触ると同時に、顔が鼻から上が飛んだ。
「うわ! うわああああああわん!!」
隣にいた衛兵は、怯えながら逃げようとしたが体が弾けた。
「何だ! 何なんだあああ!」
兵士も衛兵も逃げ惑うが、いつの間にか体を真っ二つにされ、頭から潰され、後頭部が鋭利な物で斬られていた。
「糞! 一体何が……」
「有志!」
シャイニャス姫は、有志の元へと近づこうとするが、何かが迫りくる。
「シャイニャス! 危ない!」
「え?」「シャイニャス!!」
シャイニャス姫は、後ろを振り返った瞬間、ファルトコン王に押されて転ぶ。
「きゃあ!」
「シャイニャス!」
「あああ……あなた……キャアアアアアアアアアアアアアア!!」
ファマルマが、尻餅を着きながらアワアワと震える。
シャイニャス姫と有志が、ファマルマの目線に視線を移す。
そこには、血を吐いて触手に刺されているファルトコン王がいた。
「お父様……え……なんで?」
「王様……」
「あ゛ああ゛」
ファルトコン王は、痛みに耐えながら三人の方を見る。
そして、優しく微笑む。
「ゆうし……どの……シャイニャスを頼んだ……」
「お……お父さん……」
「シャイニャス……げん……」
「言わせねーよ」
「あがあああああ!!」
何処からか、低い声が聞こえたと思った瞬間、ファルトコン王は上空へと持ち上がる。
そして、そのまま触手に体を引き千切られた。
「いやあああああああああああああああああああああああああああ!!」
「あなた……そんんぶぶぶあああ!!」
そして、ファマルマもそれと同時に体が断裂した。
「キヤアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアア!!」
発狂しながら、シャイニャス姫は泣きじゃくる。
「いやああいやああいやあああ! お父様あああ! おかあさアマアアアアア!!」
「シャイニャス! 危ない! 近づいちゃダメだ!」
「放してええええ! お父様がああああ! おかあざまがあああああ!!」
「一体何が……そんな……」
戻って来たレイシャも、その光景を見て唖然とする。
「レイシャ騎士団長! いったぶあああああ!」
「副団長!」
隣にいた副団長は、レイシャの隣で首を飛ばされると同時に、レイシャにも触手が襲い掛かる。
「くう!」
それを、レイシャは寸前のところで、剣を構えて止める。
「ぐううがあああ!!」
腕に力を入れて、何とか耐えていたが片目に触手が少し当たる。
「うがあ! んdな!!」
目がボコボコと膨れ上がり、中まで侵食されるように何かが走る。
レイシャはすぐに自身の目を短剣で突き刺して抉り出した。
「がああああああ!」
「レイシャアア!」
「あああ……ああああ」
レイシャは、震えながらもすぐに我に返り有志の隣へと走る。
「皆固まれ! 皆で背を守り……」
しかし、部下の方を見た時には、全員ぐちゃぐちゃになっていた。
「糞おお!」
「レイシャ! 走れええ!」
そして、何とか有志とシャイニャス姫の元に着くと、三人で背中合わせで敵を見ようとする。
「どこだ! 一体どこに!」
「有志! 一体何が……」
「大丈夫だ…もうすぐ見える……スキル、千里眼」
修行で身に着けたスキルを使用し、有志は相手の姿を見ようとする。
するとそこには、アレンの体から沢山の触手が生えており、巨大化した体と昆虫のような口や羽を生やしていた。
まさに怪物と言っても遜色のない姿をしていた。
「こいつは一体何なんだ!」
しかも、体が透明である上に、速さと3次元的な戦い方をするという非常に厄介な相手であった。
「ゆううううyっざああああ! ぐyぢゃぐyさあ! にじでやずううううう!!」
先程まで流調に話せていた言葉も、いつの間にかたどたどしくなっていた。
「ば! 化け物め!」
「糞! 騎士や兵士! 衛兵や貴族の仇を取らせて貰うぞ!」
「よくもお父様を……お母様を! 許せません!」
三人は、怪物と向き合い戦闘態勢に入る。




