記録391『転生者』
僕の名前は、田中一郎!! ある時トラックに撥ねられて目覚めたら目の前に女神さまがいたんだ!
この世界は邪悪な魔王が支配しているだけでなく、邪悪な錬金術師によってディストピア化していると聞いたんだ! そして女神さまからチート能力を得て転生して、ある村人の息子、ラングネルとして生まれた!
今は可愛い妹も居ていずれ世界を救う英雄になる事を約束されているんだ! 僕のチート能力!
それは、全ての魔法を扱え、全てのスキルを扱え! 更にはレベルもカンストすることなく、永久的に増えるという僕だけが成長し続けると言った凄い能力だ! 今では可愛い妹が僕のパーティーメンバーとして入り、優秀な女騎士として頑張ってくれている! これからハーレムを作って頑張るぞおお!!
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ラングネルは、妹と共に村を出て、世界の平和を守る為旅を続けていた。
「お兄様! ここが街というところなのですね! 私! 初めて来ました!」
「ああ、あれを見ろ! あれがギルドって言う奴なんだぜ!」
「流石はお兄様! 私の知らない事をいっぱい知っています!!」
ラングネルの妹、ファルニは、嬉しそうにしながら街をラングネルの腕に絡めながら歩く。
「全く、お前は甘えん坊だな……目的を忘れていないか?」
「大丈夫です! 私達は魔王と邪悪な錬金術師を打ち倒す為に旅をしているのでしょう! 村長も父さんも昔の歴史書で兄様が選ばれし者だって言ってました! 私はそのサポートをする! そういう事でしょ!!」
「ああ、全く優秀な妹で僕も鼻が高いよ」
嬉しそうにしながら、ファルニは、ラングネルの腕に顔を摺り寄せる。
「さあ早く行きましょう! この国に滞在している転移者の聖女様が待っています!」
「ああ!」
そんな時であった。
「そこの人……この国に薄汚い聖女がいるって言う国はここかしら?」
突如、国にとって秘宝とも呼ばれる転移者であり、国の救済の為に召喚された聖女を侮辱する女性が立っていた。
「貴方……そのような事を言ってはいけませんよ、そういう力を持つ者が現れれば一定数反感的な人がいるのは知っているが、それでも弁えるべきです」
ラングネルは、正論を振り翳して、女性の言葉を否定した。
しかし、ラングネル、いや田中太郎は知らなかった。
理不尽の前に、正論など全くの無意味であるという事を。
「あら? 自分が正しいと思うのは勝手だけど……私がそう思うのはそれだけの理由があると全く考えずそのような否定から入るなんて……お仕置きが必要ね」
「!! 何だ……僕と対峙しようというのか? これは少し懲らしめないとね」
「へえ……自信ありげね」
ラングネルは、手から光の炎を出す。
「お兄様のセイクリッドファイアー……これを見た者全てが余りの神々しさに跪いた、それだけの素晴らしさがあるわ」
しかし、それは村での話である。
「ふーん……人から貰ったものをまるで自分の力の様に……気に喰わないわ……そんなものは剥奪……ちょっとは自分の力でがんばりなさいな」
そして、ラングネルの炎が消えた。
「え」
「え」
「え、じゃないわ……自分の力で戦えって言っているの」
余りの異常状態に、ラングネルはイヤな汗を掻く。




