記録387『一人は……皆は……』
イネは、最近悩みを抱えていた。
「うう……どうして……セリナールの子供は元気いっぱいで生まれたのに」
何と、イマジナリーSOXを行う事により、人類の大半が出産を日常茶飯事に行われていた。
その為か、
「あ、死産だ」
「仕方ない、この子も回収して貰おう」
と、産む子供の中には、当然死んで産まれてしまうという事態にも陥っていた。
死産である。
そもそも子供を産むという事は命懸けであり、産む者も生まれる者にも同じ確率で訪れる。
しかし、当然となった今、産む者が死ぬ事はないが、逆に生まれる者はまだできたばかりのせいか、死産で生まれる確率がそれなりに上がっていた。
その事に、イネは悩みを抱えていた。
「こんなの……こんなのってないよ」
イネは、今も尚、自身の遺伝子で生まれ逝く子を感じながら泣いていた。
しかし、ある提案を思い付く。
「そうだ! 惑なら何とか出来るかも!」
西院円惑は、改造を得意としているが、イネを新たに生まれさせた存在でもある。
云わば、生命誕生のエキスパートともいえる。
そんな彼に任せれば絶対大丈夫とイネは心の中で確信した。
「え? いいよ、でも死産だけは完全には防げないから対処療法として死産した子供でキメラを作るって言うのはどう? 死んだ子供の魂の欠片を作って、死んだ子供の肉体を繋ぎ合わせて一つの魂として、一つの肉体として顕現させるんだ、それならある意味全員が一人として生き返るって形さ! まさにオールフォーワン! ワンフォーオール! 一人は皆の為に、皆は一人の為に!! 最高じゃない!!」
「惑……天才かよ! 最高じゃないか!! 待っててね! 死んだ子供達! 立派な生命として誕生させて上げるよ!!」
こうして、イネの願いを叶えるべく、惑始動の死産子供キメラ計画が始まった。
まず、回収された子供達を大量に手元へ運び、それらを培養液に漬ける。
そして、一人一人の手と足を、顔を、耳を、目を、と様々な部位を繋ぎ合わせて一人を作り出す。
その過程で、成長促進の為、イネの血液を与えて生命力を高め、成長を促す栄養などを与えて、イネの亜空間に閉じ込める事により、時間を早く進めて、体の作らせる。
何度も失敗したが、魂自体は保存し、体を何度も修復する事によって、無限的に実験を続けた。
徐々に、子供となる素体は成長を始めて、今ではすっかりA級冒険者に匹敵する恐ろしいキメラ人間の体が誕生したのであった。
 




