記録384『受粉人間』
「彼女は蝶よ花よと育てられた大司教の娘だ」
「ふーん……で?」
興奮するイネと違い、プランは、正直理解出来ないのか、説明を求めた。
「だからね、彼女は綺麗なままの、純粋なままの、穢れが知らないままで妊娠させてみたいんだ」
「ナーんだ、イネも受粉には賛成だったんじゃないか!」
プランは、嬉しそうにしながら、肩を叩く。
「いや……興味があるないという訳ではなく、もしするならあの子かなあって……」
「ふーん……良く分からないけど……まあいいんじゃない? 取り敢えず受粉方法はもう知ってるよね? 私のDNAを勝手にキメラ細胞にコピーさせたんだよね? ならやってみて」
「うす! じゃあ……君は穢れを知らなくていいんだよ、行為も知らずに授かるのさ……!! そうだ!!」
イネは、まるで何かを思い付いたかのように惑から貰ったマイクを用意した。
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彼女の名前はセリナール・セイトン、17歳
父親である大司教には、シスタードレスを着せられた世間知らずの頭お花畑の少女である。
ブルーに靡く長い髪を風に揺らしながら彼女は呟く。
「神様……いつも私達をお守りくださりありがとうございます、もっと皆が憎しみや憎悪、嫉妬などをしない素晴らしく美しい世界にしていただくようお祈り申し上げます、貴方の救いが皆に愛と願いを叶えますように」
彼女は、その祈りが本当に皆に届いているという事を、父親から伝えられてる。
彼女の祈りはそれだけの力があると伝えられている。
父親から。
祈るだけで、この世界は平和に包まれていると。
しかし、最近では父親は忙しくなっている。
「神様……最近お父様が西院円惑と呼ばれる悪の錬金術師のせいで忙しくなっていると……きっとその錬金術師も本来は人々の為に、救いを求めている人を救う為に頑張ったに違いありません、なので御願いです……その者の心もお救い下さい」
彼女は、今日も都合の良い事を祈り、その祈りは神様に届いているという思い込み。
その習慣を、繰り返していた。
その時であった。
『やあ、セリナール殿、こうやって話をするのは初めてだね』
「!! まさか……神様ですか!」
『ああ、私は神だあああああ!!』
すると、耳に響く様な声がセリナールに届いた。
『セリナールよ、西院円惑の行っている事は決して悪だと断定できない』
「! そうなのですか!」
『ああ、そうだ、だがそれらは他の者達にとって悪のようにも見える、人がいるだけ、それだけ悪も正義も存在する……君の父も例外なくそれに当てはまる……』
「お父様も……ですか」
『そうだ……人は今までの環境や考えを曲げる事は難しい……とてもとても難しい……だからこそ君に協力して欲しいんだ!!』
「!! 私が……神の力になれるのですか!!」
セリナールは、少し心の中では思っていた。
祈りを捧げるだけでなく、もっと具体的な、自身が実感できるような、そんな救い方を。
いつも父の話を聞くだけで、それを自身で確認できていない事に、不安を抱えていた。
しかし、今現在。
神の声で協力要請を頂けた。
それを振り払う理由は、セリナールにはなかった。
「分かりました! 私にできる事があれば是非に!」
『『有難う、感謝するよ』』
今度は、二人の声が聞こえた様な気がしたが、セリナールは気にしないでジッとしていると、鼻に何か少しの刺激が走った。
「?」
『君は子宝を授かった……』
「!! 私にも! でも……まだキスしたことがないのですが……」
セリナールは、キスで子供が出来ると本気で思っていた。
『他のも方法はある、神である私が授ける……その方法がね、その子を育て上げよ、さすれば世界はかなーりいい方向に平和になるだろう!』
「まあ! 嬉しいわ! ありがとうございます!!」
セリナールは、受粉する事で、妊娠確定した。