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記録377『悍ましい世界』

知実は、哀しそうにしながら街を見る。


「うああああああああああああああああ!! 生まれるうううううううううう!!」

「オギャアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアア!」

「なんで……何でこんな世界に」


ウィリアムは、哀しそうな知実の後ろから抱きしめて、心を安らげようとした。

しかし


「!! 止めてええ!!」

「!! 知実……」


恐れる目で、知実はウィリアムを睨み付けてしまう。


その事を後悔したのか、知実は、辛そうな目でウィリアムから視線を外す。


「ごめんなさい……でも怖いの……街の……世界が……皆が……行っている事……当然になった事……兄さんが昔言っていました……適応出来ない人間は全てを恐れる事になると……何故なら出来ない事が増えるから……出来ないはそれ等を上手く出来ないではなく……受け入れられず出来ないという事だから……私は……彼等の当然を……皆の当然を受け入れられない……私は……私は……いま……貴方とそのような……違っても……そうでなくても……それに似た行動が……行為が……出来ません……ごめんなさい」


苦しそうに、悔しそうに、受け入れられない自身に自責の念を持ってしまった。

知実は、苦しみをただただ受け続ける状態になっていた。


「……すまない……私が迂闊だった……今は……君を苦しめない様に気を付けるよ……」


辛そうにしながらウィリアムは、その場を去る。


「ごめんなさい……ごめんなさい」


知実は、泣きながらウィリアムに謝罪し続ける。


「あああああああ!! 生まれるううう! 産まれるうううううううううう!!」

「もういや! 止めて!」


ラスネスの出産の叫びを聞いて、知実は耳を塞ぐ。


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森に、一つの目が出た。


「ぷっふううう……いいにおい……人間が同じになって来た……遅いねえ……私達は前々からずっとそうだった……やっと人類が追い付いたみたいだね……よかったああ……さあ……」


一つの目は、ニタニタと嗤いながら辺りを見回すように動いていた。


「さてと、あの人に会わないと……はあ……空気が美味しい」


そして、一つの目はずんずんと大きく育ち、大樹のような大きさへと変わっていった。

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