記録369『愛しき我が子よ』
「イクぞ!! もうイクぞおおおおおおおおおおおおおおおお!!」
「いやめてえええええええええええええええええええええええ!!」
「せっせ! セイクリ」
知実が、呪文を唱える前に事は終わってしまった。
「あああああああああああああああああ!!」
「ああ! そんな……そんなあああアアアアアアア!! いやあああああああああああああ!! お腹が膨れるううううう!! 私の……私のに……コイツの……あああ……私の……!! いだいいだいだいいい!!! あああああああああああああああああああああああああ!!」
「止めて……そんあな!!」
ラスネスの腹は、そのままパンパンに膨れ上がったと思った瞬間、弾けとんだ。
「ぐべばあ!!」
「オギャアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアア! オギャアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアア!」
そして、お腹の中から一人の赤ん坊が生まれた。
「いいぞ……とても良い……ああ、君と僕の子だよ」
「あばばあ……あがが」
血を吹き出しながら、ラスネスは気を失う。
「くそ! くそ!! ふざけるな!!」
「片手がおざなりだぜ!! 股の恋人といちゃついてんのか!!」
「黙れええ!!」
「オラオラあ! ちょいやあああ!! そおおれええええいやああああ!!」
パパンカツは、不格好にも関わらず、華麗に剣で斬りこむ。
「っぐ!! ぐあああ!」
「負けるのだよ! なんせ俺は!! あの勇者を追い詰めたのだからなあ!!」
「勇者様が……お前なんかに本来負けるはずが……ないんだ……何か卑怯な手を……」
「ふむ……卑怯な手ね……なら使おう! 勝負に卑怯も何もない! って事を!!! 教えてやるためにもなアあ!! お前等の言う卑怯というものをおおお!!」
そう言うと、パパンカツは体中から粘液を飛散し、地面を濡らす。
「っぐ!! 滑る!」
「フン、お前にローション相撲はまだ早いようだな……騎士が聞いて呆れる」
「ぐう!!」
パパンカツの張り手に、成す術なく、攻撃を受けてしまう。
「いやあああ!!」
「おぎゃおギャバースト!!」
赤ん坊の口から、光線が発射されて、知実は咄嗟に防ぐ。
何とか攻防は続くが、ラスネスは出産により戦闘不能となり、知実もウィリアムも苦戦を強いられていた。
絶体絶命の状態。
その時であった。
「ウィリアム騎士団長!!」
「ラスネス魔導師団長!」
『聖女様あああ!!』
突如、置いてきた騎士達や魔導師達の声援が聞こえて来た。