記録35『玩具』
「うわあああああああああああああああ!」
「逃げろおおお!」
ラマガルとその友人達は、絶叫しながら逃げる。
しかし、目の前に立ちはだかったのは凶暴なジャイアントであった。
「ま゛ま゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛!! オモぢゃあああ!!」
「そうねえ! アルー君! おもちゃがやっと来たねえ! 遊ぼっか!」
「わ゛ああああい」
目の前の怪物に、ラマガル達は成す術がない。
「お前等! 我の盾に……」
「るっさえ! テメエが盾になれ! ラマガル!!」
「そうだそうだ! 子爵家の分際でええ!」
ラマガルは、大した地位にいる訳でもないのに、偉そうに自分より上の人間に命令してしまい、押し出される。
「うあ! ヒイいいいい!」
ラマガルは、恐怖の余り失禁する。
「おい見ろよ! ラマガルの奴漏らしやがったぜ!」
「ギャハハハハハハハハハハ! 情けねえ!」
「貴族の面汚しめ!」
ラマガルを前に押して、安全な所に隠れた貴族達は、余裕そうにラマガルを見下す。
「おだのじみはあああ!! あどおおおおおお!」
しかし、怪物はラマガルを跨ぐとそのまま他の貴族の方へと向かう。
「おい! 馬鹿! こっちくるな!」
「やっ! やめ」
「たすけ」
「ぐぎゃあああ!!」
怪物は、唸り声を上げながら、一人の足を潰す。
「ヒギャアアア! 僕の足があああああ!」
「うわあああ!」
「オエエエエエエ!」
足を潰された貴族は、のたうち回りながら絶叫する。
それを見ていた貴族の一人は、悲鳴を上げながら尻餅をつき、もう一人はその場で吐いた。
「お前もこうだああああ!」
「やだ! やめて! 放してええええ!」
怪物は、尻餅を付いた貴族の腕を持つと、そのままへし折った。
「いぎいあいいいあいいあい!」
「はあはあ!」
過呼吸気味になる貴族は、吐瀉物を気にせずその上を滑るように逃げようとした。
「ままま! 待てえええええ!」
怪物は、楽しそうに逃げ惑う貴族の子供を追い掛ける。
「うわああああ!」
「捕まえたアアアアアアア!!」
怪物に、首根っこを掴まれて、持ち上げられる。
「どうする? アル―? どうする?」
「うーん……千切っちゃえ!」
「ああああ……」
「あら! 良いわね! 千切っちゃえ! 千切っちゃえ!」
肩に乗っている女性もケタケタと嗤いながらアル―が頭から摘まみながら前と後ろに同時に引っ張る。
「あぎゃぎゃぎゃぎゃぎゃぎゃぎゃ!!」
「うぎゃああはははははは!! ま゛ま゛あああああああ! だのじいいいいいい!」
「そう! よかったわね! アル―!」
ママと呼ばれた女は、心底愛おしそうに怪物を撫でる。
「いだいいだいいだいいいい! やあああべっでえええええ!」
そして、そのまま貴族の子供は真っ二つに引き裂かれた。
「貴様! よくもおおお!」
すると、一人の女性が絶叫しながら飛び掛かる。
「邪魔!」
「ウガアアア!」
怪物は、鬱陶しそうに手で払い除けるとそのまま女性は吹き飛ばされる。
「ままままま!! 待てえええええ!」
「いあやあああああああ! 来るなアあああ!」
「えい!」
「ぐはgふうgは」
足を潰された貴族は、そのまま大きい足に踏み潰される。
「がはあ! やめろ……」
女性は、血を吐きながら必死に止めようとする。
「楽しい? 良かったわねえ! アル―!」
「うんママ! だのじいい!!」
「うわああああぎゃあああああ!」
ラマガルは、泣きじゃくりながらその場で蹲る。
失禁で出した尿に塗れ、涎と涙で顔がベタベタと汚れた彼は、最早貴族と呼べるか分からないくらい情けない姿になっていた。
「あんなところに情けないおもちゃだは! 情けないおもちゃはどうするのかなあ? アルー?」
「分かった!」
「なーに?」
母親は、子供と会話するように問い掛ける。
「上半身と下半身を千切れば良いんだ!」
「正解! 良く出来ました! 偉い偉い!」
母親は、我が子を褒めるように怪物を撫でる。
「やめ!」
「ぜーの!」
「いぎぎぎぎぎぎぎぎぎゃあああ! 我ぼおおおお!! だでだどおおお! らがばるうううう!! わではわがばうるううううううっばあああああああ!」
「よせええええええええ!」
しかし、女性の静止も遅く、ラマガルの上半身と下半身は分離された。
「あああ……ああああああ」
「やっだああああああ! だのじいいいいいいいいい!」
「凄いわ! アル―! 凄い凄い!」
終始、怪物と母親は楽しそうにしていた。
女性は、悔しそうにしながら地面を叩く。
「糞……糞……糞おおおおおおお!!」
そして、気合を入れ直して無理矢理に立ち上がる。
「貴様等許さん! 我が国の大事な民をよくも! この私が斬り伏せてやる! 覚悟しろオオオオオ!」
女性は、怒りを無理矢理大声と気合で掻き消し、冷静に怪物と向き合う。




