記録348『模索』
エレンは、ひとまず、自身から漏れ出ている瘴気を利用する方法を模索した。
「私の瘴気って……回復以外にも攻撃する事が出来る……でも……」
何処かエレンは引っ掛かっていた。
使うというのは、そんなワンパターンな方法のみで良いのか。
それとも、他に有用性があるのではないかという事である。
攻撃、回復、防御、それらだけでは今までと同じであり、それでは自身の唯一性が残らない。
その方向で考えを進める。
--------------------------------------------------------------------------------------
「迷ってる迷ってる」
「意地悪だねエ」
ロメイトは、苦笑いしながらイナミを見る。
「これ……そもそも唯一性じゃない……唯一性に拘り過ぎ……暗殺者にとって唯一性は寧ろ弱点……何故なら他の人にバレやすい上に対処方法もその人を対象にすれば簡単に使われる……でも……誰もが使う技を別の方法で使えばその本質を見つけなければという形になる……誰もかもが使うという事は紛れる……その人であると分かりづらい……」
イナミは、言葉数が多くなり、ロメイトは腹を抱えて嗤う。
「本当に言葉数多! これが終わったらエレンちゃんも誘って服買いに行こう!」
「!! 良いね……欲しい……服は良い……暗殺者としてでなく紛れる為にトレンドを模索して色々考えて自分に似合うパーソナルカラー診断出来て!! ああ楽しみ!!」
「服になると元気良くなるんだよなあ……」
イナミの変貌に、ロメイトは少し引いた。
--------------------------------------------------------------------------------------
「うーん……」
いくら考えてのすぐに答えは出なかった。
すると一人の少女が、エレンを見つめていた。
「こんにちは」
「えっと……こんにちは」
少女は、辺りを見回しながらサンドイッチを食べていた。
「いつも通り……仕事終わりにここでご飯を食べるのは素敵だね」
「そう……ですね」
「食べる?」
差し出されたサンドイッチを、手に取るとエレンは頬張る。
「美味しいです」
「うん……良い味でしょ? いつもの味……でもこの料理ね……別の食べ物を挟めばまた別の味がする、色とりどり………良い事だと思わない?」
「え? ああ……はい……」
「私達がするべき事もそう……違いが少しあるだけで全てどこかで繋がっている……だから私は今日も頑張る……貴方は頑張れてる?」
「……分かりません」
「分かるまで考えれば良いよ……いつの間にか時間が凄く経つけど……まあ……そういう事もある」
良く分からない事を言って、少女は立ち去る。