記録34『テロ』
「それでは! 勇者天山有志様を讃えまして! 乾杯!!」
『乾杯!!』
皆がグラスを上げた瞬間、貴族の首が、数個飛んだ。
「きゃあああああああああああああああああああああああああああ!!」
すると、突如現れた魔族達が会場に押し寄せる。
「え! 衛兵は何をしていッギャアアアアアアアアアアア!」
慌てて衛兵を呼ぼうとした貴族は、いきなり胸を貫かれて血を吐き散らす。
「脆い! 汚ねえ脂肪ばかり溜め込みやがって! こんな奴等が守られて俺等みたいなのが狩られるだなんて、全く理不尽なもんだ!」
腹を貫いた魔族は、そのまま貴族の心臓を潰すとゴミのようにその辺に捨てた。
「お前等ああ! 許さないぞおおお!」
有志は、怒りに任せて聖剣を抜く。
「遅えよ、勇者ってもんはこんなもんか」
「うう!」
「有志!」
腹を蹴られてそのまま吹っ飛ばされる。
「貴様あ!」
レイシャは、有志とは違い冷静に魔族達に立ち向かった。
「うお!」
魔族は、レイシャの攻撃を何とか躱すが腕を斬り裂かれていた。
「こんなの! 俺達の回復力があればすぐに治る!」
魔族の斬り裂かれた腕は、すぐに再生した。
「糞!」
レイシャは、再び剣を振るう。
しかし、次は当たらずそのまま何度振るっても避けられる。
「何だ! どうして当たらない!」
「こんな程度か……日々イネさんの攻撃を躱している身としては全然遅い」
「イネ? 誰だそれは!」
「こっちの話だ! おらあ!」
「っぐ!!」
何とか剣で防ぐが、しかし衝撃でそのまま壁に叩き付けられる。
「逃げろ!」
『うああああああああああああああ!!』
貴族達は、子供を連れて外へと逃げた。
「フン、逃げたか……」
「まあそれで良い……」
「何!」
魔族達が、あまり貴族達に逃げられる事に執着しておらず、寧ろ騎士や兵士、衛兵だけを狙っていた。
貴族を殺したのは、初めだけであった。
「こいつ等! 一体どういうつもりだ!」
「陛下がまだ脱出できていない! 隠し通路は!」
「ダメだ! 封鎖されている! 一体こいつ等何処から湧いてきた!」
大臣やファルトコン王は、仕方がないので外へ自身の子供を逃がそうとする。
「ロードル逃げるんだ!」
「はい! 父上!」
「シャイニャス! お前も逃げなさい!」
「逃げません! 有志を置いてなんて行けません!」
「しかし、有志殿は気絶を……」
ファルトコン王が言い終わり前に、腹を押さえながら有志は立ち上がる。
「大丈夫です、俺はまだ戦えます」
「有志!」
「有志!」
シャイニャスとレイシャは、嬉しそうに有志を見る。
魔族達は、ケタケタと嗤いながら睨み付ける。
「フン、その程度で勝てるつもりかよ」
「笑わせる」
有志は、聖剣を構えて、魔族達に襲い掛かる。
しかし、魔族達は捕まえた兵士の一人を盾にする。
「貴様! 卑劣な事を!」
「ひいいい! 勇者様あああ! 助けてええええ!」
「馬鹿め、こんな程度予想出来なくてどうすんだよ、お前それでも勇者か? いや……ただの調子付きか? あの一発目の攻撃をすでに回復させたところを見るとそれもただ勇者の力で回復しただけだろ? お前自身の力じゃない」
「黙れええ!」
有志は、更にスピードを上げて魔族を斬りに掛かる。
「見えなきゃ感覚を使う! それが俺等の戦い方だ!」
有志の攻撃を、未来予知のレベルで躱し再び攻撃を当てた。
しかし、有志の持っていた聖剣が光り輝き始める。
「くらわせろ! 聖剣エクスカリバー! ホーリースピアー!」
「うが!」
何とか魔族は、手に突き刺して急所を逸らす。
しかし、光は魔族の体の中へと侵入しそのまま体を蝕むように崩壊させた。
「ぐぐあああうきゃああああああああああああああああ!」
魔族はそのままチリとなって死んだ。
しかし、他の魔族は逃げるどころか、聖剣を警戒しながら有志に向き合う。
「ラゾッタがやられた、あの聖剣に気を付けろ!」
「おお!」
「俺ならあの光はおそらく大丈夫だ! もしもの時は俺が食い止める!」
「分かった!」
他の魔族達は、有志を警戒しながら近くから襲ってきた衛兵を数人殺した。
「止めろおおおおおおお!」
「また癇癪か」
「俺が行く」
狼のような風貌の魔族が有志の聖剣を避けてカウンターで顔面を殴る。
有志は、先程の聖剣の力を使い、魔族を斬る。
「シャイニングアロー!」
「い!」
先程の魔族同様に聖剣の力を使う。
魔族の腕に、突き刺さり光が体へと侵入する。
しかし、何も起こらなかった。
「な! 嘘だ! どうして! 魔族には絶大なはずだ!」
「フン、一生騙されてな!」
狼魔族と他の魔族達は、有志を集中的に襲い出す。
「レイシャ! ここは俺が食い止める! 外の貴族達を頼む!」
「分かった! シャイニャス姫! もしもの時は有志に回復魔法を!」
「ええ! 分かりました!」
そして、レイシャは、貴族達を助けに外へと出た。
------------------------------------------------------------------
外に向かうと、そこには世にも醜いジャイアントがいた。
「うぎゃああはははははは!! ま゛ま゛あああああああ! だのじいいいいいい!」
「そう! よかったわね! アル―!」
ママと呼ばれた女は、心底愛おしそうにジャイアントを撫でる。
ジャイアントの手には、貴族の子供がいた。
「いだいいだいいだいいいい! やあああべっでえええええ!」
しかし、子供はそのまま紙を破るように頭から引き裂かれた。
「貴様! よくもおおお!」
レイシャの怒りも限界が近かった。




