記録340『原初圧政』
デマフォスは、よろよろとエレンを案内した。
「ここを通れば強い奴等に会えますぞ」
「本当のようですね……絶対にヤバイと思えるような感覚が体の芯から伝わります」
「そうですかあ……それは良かった……」
ケタケタと嗤いながらデマフォスは、エレンを連れて行く。
そして、荒廃した町が一つ見えて来た。
「ここですじゃ……ここに行けば強い奴等に会えますじゃ」
そして、街の中に入ると、中には搾取され尽くしたと云わんばかりの人々が身を寄せ合いながら暮らしているようであった。
「ここの人達全員が強いわけじゃないんですか?」
「当たり前ですよ……どこの世界にも優遇がある……まさに弱肉強食は世界で初めて生まれた圧政みたいなものだ……力ある者が権力すら手に入れる、だが今いる人間達は権力……いや……自身の生まれ自体そのものが力だと本気で思っている者が多い……だがそんな奴等とて原初である圧政に敵う筈がない……今の人間は真の圧政を知らないとは思わないか? ならまだ盗賊や海賊……山賊共の方がまだ世界の理通りに生きていると思わないか? 力なき者には元来権利も自由もない……搾取こそが事実として残る……そして奴等は搾取されることによって生かされている状態である……それでも生きている事にしがみつく者達である……ックックック」
デマフォスの声は徐々に若さを取り戻る様に変化していく。
そして、まるで今までその姿化の様に片眼鏡を掛けてスーツを着ているオールバックの男性が現れる。
「ようこそ! 我が国へ! ここは元人間の国でしたが私が魔力によって無理矢理移転させた結果! 奴等人間事完全にこの瘴気に飲まれた! まさに奴等にはもうただ生きる事しか出来ない!! ほぼ悪魔の独壇場だ! なあ……元この国の王様あ……べクレール殿おお」
「ああばばば……わわあうぁあ」
小さな悲鳴を上げながら、一人の小汚いお爺さんが涙を流しながら蹲っている。
「さあ! こっちこっち! こっちに素晴らしい人達がいるから! 来て来てええ!」
「ええ……分かりました」
「あ、お姉さん!」
すると、一人の少女に急に話しかけられる。
「この顔見てえ! 絶望の表情が良くない!!」
泣き叫んだ瞬間に、斬り取られたような顔面を掲げて嗤っていた。