記録331『救済』
「アハハハハ!! 全く! 無駄な事をして何が楽しいの! 足掻け足掻けええ!!」
プランは、完全に調子に乗りながら、知実達を煽り散らす。
しかし、知実は目もくれる事もなく、手を組み祈り始める。
「私に眠る大いなる力よ……神聖なる魔力よ……全ての苦しみ、悪、罪から彼等を解放し給え、救済の加護!!」
祈りを終えた瞬間、知実から円を描くように発生した魔力が辺りを覆い尽くす。
「これは」
「何でしょうか……なんだかとっても……」
「あたた……かい」
「!!」
「ラスネス殿! 気が付いたのですか!」
植物塗れになっていたラスネスの声が、小さく聞こえる。
「ああ、……申し訳なりません……知実様……私は貴方の導きとと共に西院円惑、そしてバファハイドを倒さなければならないのに……」
「良いのです……これは貴方が望んだ事ではありません、無理矢理依存させられ、貴方の美しい思いを欲望という歪な悪に塗り替えられたのです……私はそんなあなたを救いたかった……私にこの力が宿ったのは……ラスネス……貴方が私を庇ってくれたお陰です……その行為がなければ私は確実に手詰まりでした」
「はあ! そんなバカな事があるか! 下らない下らない下らないいいいいいいいい! どうせ神に貰ったんだろ! 人から与えられないとたたかうぇもしねええこの役立たずガアア!」
「いいえ……貴方は勘違いをしています……確かに愛の加護を追加したのは神です……しかし私はその愛の力を……愛の加護を使って皆さんを拒絶するところでした……自分の思い通りにならない者を愛さないなど……真の愛とは言えません……だからと言って心を欲望で埋め尽くされている状態も許せるわけではありません……どうすれば彼等を……皆の正気を戻せるか……そして分かったのです……皆が罪を無理矢理背負わされている事を」
「はあ! どういう事だよ!」
プランは、負け惜しみのような言葉で、知実に質問する。
「私は考えました……罪を犯した者は罪を犯さなければいけない程に苦しめられているという事を……全ての者達が快楽や悦びの為に悪になった訳ではないと……全てには理由があり、悪には真の苦しみが隠されている……ならば……私がその痛みを救いましょう……その苦しみを取り払いましょう……きっと彼等だっていつかきっとやり直せる……その機会を……いえ、貴方は彼等から正義の心を奪ったのです……皆で生きる喜びを奪ったのです……光合成して木と一体になれば世界は良くなる……それは違います! 世界を良くするには例え困難な道であっても……必ず歩かなければならない……そうする事が出来ないのは仕方成りません……しかし! 私はそれでも真の心には善があるという事を!」
「黙れ黙れ黙れえええええ! プランの最大火力で全て粉砕してくれるうううう!!」
キレたプランは、絶叫しながら辺り一面をツルで覆う。