記録32『パウバマの決意』
バワカとアワホから紹介を受けた、惑の話を聞いたパウバマは悩んだ。
「そんな事今更言われてもおお〜! 俺財産もう没収されたあ〜!」
泣きじゃくりながら、パウバマは惑に言い放つ。
「なるほど、それはキツイですねえ、なら僕の持っている素材を渡しましょう! お金も少ないですが」
惑は、イネと村人が狩った魔物の素材を広げた。
「な! これは!」
それらは、質も良く、上手く剝ぎ取られていた。
「これなら財産全部とはいかなくても! 普通の生活を送る分には何の問題はない、私の隠居スローライフを送るには全然足りる!」
ギルド長パウバマ素材を嬉しそうに眺めると夢へとトリップする。
「ラノベ風のタイトルにすると、ギルド長を務めていたが、勇者が問題を起こしてせいで全財産没収された! だけど国家転覆を狙う者から賄賂を受け取ったので田舎でスローライフを送りますになるね!」
「は?」
「何を言ってるんだ?」
「……」
惑の現代ラノベ知識は思いっきり滑った。
「ごめんなさい……何でもないです、まあこれぐらいあれば問題ないっていう事で良いですか?」
「もちろんだとも……あ、でもどうしよう」
パウバマは、少し思い悩んだ。
「何かあった?」
「他の冒険者どうしよう……いくら他のギルドに紹介するにもさすがに明後日までに全員分の紹介状を出すのは出来るかどうか……」
惑はそれを聞いて、微笑む。
「じゃあ定型文の書いた紙を出して、それに名前を書けばいい感じ?」
「?? ああそうだな……自身のプロフィールとかは冒険者カードに印字されているからそれを出せば何も問題ない、本人の評価もそれに書かれてるしな……」
「だったら一つ書いて僕に貸して」
「は? ああいいけど」
そして、パウバマは一枚紹介状を書き上げるとそれを惑に渡した。
「OK、じゃあ複製」
「おお!」
「すげええ」
錬金術スキル複製で紙を大量に量産した。
「これなら何も問題ない! いやあ! 錬金術師って便利なんだなあ!」
「ああ! さすがに今のはスゲエな!」
「いいからそれ配るぞ……時間ないんだろ?」
「そうだったそうだった!」
そして、パウバマの指示に従い、国家転覆に巻き込まれたくないように冒険者に紹介状を配り始める。
「あら~この国転覆しちゃうの~大変ねエ~分かったわ~最近勇者が勝手しすぎて別の場所で活動を考えていたのよ~」
「へえ、転覆するんだこの国……いいよ」
「はははは!! いつかこうなるとは思ってたよ! 良いぜ!」
「ああ……はい」
こうして、四人で手分けして冒険者全員に紹介状を配り終えた。
「ふー! 正月の年賀はがきバイトを思い出す!」
「何それ?」
「こっちの話!」
惑は、懐かしそうにしながら一息吐く。
「さて、これで皆には配って国から出る準備は整った」
「あの門番どうする?」
「どうせ適当だ、気にするな!」
パウバマは嬉しそうにしながら、新たな人生に喜びを噛み締め、アワホはバワカに門番の対応を聞いて教えられる。
「取り敢えず皆は明日には出るんだっけ?」
「ああ、俺達も出来るだけの事はした、頑張れよ」
「一応応援しておく」
「まあ若者はこれぐらいできなきゃな!」
適当なアドバイスをしながら三人は国を出た。
「さてと、イネ! あの宿屋の人はどうだった?」
「閉店してた」
「マジで? お前が3Pしたからじゃないの? あの後喧嘩してたし」
「まさか! そんな事で閉店する何て逆におかしいでしょ?」
※詳しくは記録5『二人の欲望』、記録6.5『天山有志の事件簿前編』をご覧ください。
「取り敢えずあの人以外は世話になった人はあの魔道具展だけど……もういなかった……国衙に出るって言ってたからもういないのかな?」
「そうなんじゃない?」
「まあいい、これで舞台は整った、後は明後日のパーティーが始まれば作戦開始だ」
「うん! 楽しみだね! 惑!」
そして、二人は村人のいる森へと向かった。
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「惑さん! どうでしたか?」
「うん、大丈夫、冒険者はペプリア国を出るみたいだ! そして明後日パーティーが開かれるのは事実のようだ! だからチャンスはその時! いいね! 怖気づいた人!」
惑の言葉に誰も反応しない。
「いいねえ! その覚悟! 僕も心が躍るよ! 絶対に僕は戦わないけど! ああ! 後イネも!」
「はい、分かっています」
「俺達の出来る事は限られている、ならアンタの作戦で行った方が確率が上がる、例え失敗でも大きな傷を残すぐらいに!」
『おおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおお!!!!』
村人皆の気合は十分のようだった。




