記録314『癖』
「さてと……君は今何をしているのかな? 知実、その恰好……は……うん! どうやら聖女が召喚されたというのは君だったんだね! お兄ちゃん嬉しい!」
「!! 何が嬉しいのですか! 私が聖女だからと言って何ですか! 絶対に貴方を止めて見せます!!」
睨み付ける知実に、惑は嬉しそうに微笑む。
「いいね、喜ばしいね、素晴らしい……やはり君は色々と可能性を広めてくれる!」
「広めません……絶対に貴方の好きにはさせない!!」
惑は、様子を見る様に知実を観察する。
「ねえ? 癖って治らないだね……知実は僕と話すとき必ず髪を弄る……フム、懐かしい……」
「へえ、可愛いじゃん」
イネは、チャラそうな表情で、知実を性的な目で見る。
「!! 止めて下さい! 汚らわしい!!」
「知実! 私の後ろに隠れて……西院円惑! 貴様なんかを知実の兄だとは私は認めない!」
「でも法律上僕と知実は兄妹だ、どう足掻いても彼女が僕を絶縁する事は出来ないよ?」
「黙れ! 私がお前を討ち倒せば良い話だ!!」
「へえ、やってみる?」
惑は、鋭い眼光で、ウィリアムを見据える。
そして、ウィリアムは、一気に惑に距離を詰めて剣を振るう。
「ふむ、早いのは分かるけど……軌道も癖も見破られていたら避けられやすいよ? 少しは工夫するべきだ」
「な!!」
しかし、惑は当然のように、ウィリアムの攻撃を避けた。
「馬鹿な! 私の攻撃など貴様は分析する暇なんて……」
「君の出身はペプリアじゃないか? レイシャの攻撃に似ている」
「? れい……しゃ?」
「ああ! そうかアイツはもうこの世界から消滅していたんだっけ!! そうだそうだ! でもね、そいつもペプリア国で僕は彼女の癖から攻撃パターン、足運びを見て来た……そして地面の足跡……君の足のサイズである部分の動きを見ただけで分かったよ……君はペプリア国の人間でそこで指導を受けた……元来人は人によって癖があり、その部分がどうしても治せず自分流の攻撃になるけど……本当にあそこは……いやレイシャとウィリアム君が真面目過ぎるのかもしれないね? そう考えると君達の攻撃はパターン化すれば避けるのなんて」
「この!!」
「簡単だよ」
そう言って、惑は普通にウィリアムが振り下ろした剣の上に立つ。
「どうだい? こんな芸が出来る程には君の攻撃パターンを把握しているよ? それとも隠し玉でもあるのかい? させないけど」
「な!」
惑は、ウィリアムの次の攻撃を受ける前に、軽く顎を掠めた。
「フン、こんな程度で私いいいいがああああ?」
そして、ウィリアムはバランスを崩して転ぶ。
「があ! なんっで! くそ!!」
そして、立ち上がろうとするも、何故か足が動かなくなっていた。
「!! 何をした! スキルか! 魔法か!」
「ふむ、バワカとアワホも知っていたから君も知るべきだと思うよ? 少しは剣以外も勉強すれば? そうやって剣だけを想定してたらいつか死ぬよ? 別に僕としては君の可能性なんてちっとも感じないからどうでもいいけど」
「惑?」
イネは、冷たい表情の惑に違和感を覚える。
「さてと、それじゃ僕等は帰るね? ばいばーい!」
「待て!」
しかし、惑は、他の仲間を連れてどこかに消えた。