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記録30『勇者への信頼』

有志は、身元を特定した被害者遺族に話を聞いていた。


「ジョンは昔から親想いの良い子でした、しかし家を継ぐのは長男だと分かる頃には不貞腐れてしまいまして、それから他の貴族の次男と共に、夜の街へ出歩くようになりまして……」

「更には悪さまで始めるようになって……でも! だからってえええ!」

「こんな事をされるような悪さなんてする訳がない! 私は息子を信じている!」


遺族達は、涙を拭きながら有志に話し続ける。


「皆さんの気持ちはよく分ります……人によっては性格が荒れてしまう時はあります……それに家を継ぐ事が出来なかったという明確な理由がありそれに対して不満を持ってしまうというのは仕方のない事です……ちょっと悪い事をしてしまっただけなんでしょう……」


有志は、その者等がどのようなことをしたか分からなっていないが、奇妙な生き物に変えられた者達に同情した。


「それなのに! このような非道許せない! きっと人の命を何とも思わないゴミ屑のような奴に決まっている! もし見つけたら必ず俺がこの手で斬り倒す!」


そして、自身が携えている聖剣に触れて、犯人を殺す事を誓った。


「私も手伝います! 我が国の民をこんなにされて! 私はとても許せません!」

「騎士団長として許せない……しかしこの者等は一カ月も帰っていないと聞いている……もしかしたらもうすでにこの国外に出ているかもしれない……」


シャイニャス姫もレイシャも、怒りに燃えていた。


「私が調べた限り、衣服も体の汚れも一カ月ぐらいは経過していると思われます……そう考えるとレイシャ騎士団長の言う通り……探し出すのは困難かと……」


すると、有志は自信満々に答える。


「大丈夫です! なんせ俺は勇者ですから! きっと見つけ出せます!」

「なるほど! 確かに勇者様にはこの世界の秩序を乱す者を滅ぼす力があります! きっとこの事件を起こした犯人を見つけてくれます!」

「ああ! きっと有志ならやってくれる!」

「おお! さすがは勇者様!」

「確かに! きっと悪を根絶やしにしてくれるはずだ!」

「その通りですね……私が間違っておりました、勇者様ならばあるいわ」


その場にいた者達は、有志が勇者であると言っただけではあるが、安心し切ったように有志を讃える。


「明日は勇者出立のパーティーです! 明後日には旅に出ます! その旅の中できっと犯人を見つけて俺がそいつを斬って貴方達のお子さんの仇を取ります!」

「ああ! ありがとうございます! 勇者様!」

「感謝します!」

「勇者様万歳! 有志様万歳!」


三人の貴族達は、有志を讃えて万歳三唱する。

その時、一人の騎士が入って来た。


「大変です! 調査に依頼をしようと冒険者ギルドに向かったのですが……冒険者どころか! 受付嬢やギルド長すらいなくなっております!」

「な! 何だと! どうしてそんなことが起こっている!」

「何かの依頼ですか? しかしそれではギルド長や受付嬢がいないのは……」

「何かあったのか? いや……俺も冒険者の依頼を実戦経験の為に受けた事があるが……あのギルド長は信頼できない……まさか夜逃げか?」


その言葉を聞いて、シャイニャス姫も頷く。


「確かに……有志様が人を救おうとしたら何かと文句を言っていました……そこは他の国の領地だとか他の冒険者の依頼を勝手にするなとか、更には目の前で子供が殺されそうなのに他国の者という理由だけで見捨てたりと……私もさすがに許せずお父様に報告しましたが……まさかそれで!」


レイシャも、頷きながら二人に同調する。


「確かに……それは許せない……人の命に貴賤はない……それなのに救う者と救わない者で分別する等……あってはならない! 私もあのギルド長とは何度も衝突した……それなのに冒険者規定に反していると言い訳し、他の冒険者ギルドの縄張りに入る事は許されないなど……他の国の者を助けると国家間の問題として扱われるなど……」

「全く……人としての価値がない奴なのだな……」

「そうやって世間体を気にする者に人を守る価値などない!」

「屑……という言葉が似あう者ですな……」


貴族達も、話を聞いてギルド長への罵詈雑言が漏れる。


「しかし……そうなるとこの国はどうなるのか……冒険者が居なくなると魔物が押し寄せた時……」

「ならば私がお父様に話して、信頼出来る者達だけで冒険ギルドを結成させましょう、ギルド長も我々が信頼出来る者を見つければいいだけです! 血筋も実力も保証出来ます!」

「さすがはシャイニャス! それならこの国は安心だな!」

「私の騎士団もある! 副団長も実力は高い! 私は有志とついて行くが副団長であれば安心出来る!」


その言葉に、貴族達もランザベルも安心した表情へと変わる。


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前日の事であった。


「何? 明後日、ペプリア国付近の村人達が国家転覆を狙う? それは本当かバワカ! アワホ!」

「はい……俺達は国の隠し通路と脱獄犯が開けた穴の案内の為にこの方と侵入しました」

「こいつ、錬金術師らしいぜ」

「どうも、西院円惑です、よろしく」


惑は、ギルド長に握手を求めた。

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