記録305『鬼神族』
「ふーむ……勇者の次は聖女ねえ……ちょっと安直過ぎない?」
「え? 何がですか?」
「いや……僕のいた世界のある流行りでチート能力勇者の次はチート聖女と色々出て来たけど……うん……安直」
「惑……一体何を言ってるの?」
イネは、惑の理解不能の言葉に、首を傾げる。
「まあいいや……なんだかそれはそれで楽しみだ、さてと……神がまた新しい選ばれし者を派遣して来たけど……うーん……選ばれし者の意味……」
惑の何処か不満そうな表情を見て、エレンは予想する。
(もしかして……いくら可能性好きでも同じような相手と戦うのが嫌いなのかな?)
しかし、惑は別のことを考えていた。
(うーん……やっぱりテンプレばっかりだと少し刺激が足りないなあ……仕方ない……聖女の倒し方を考えるという刺激で我慢するか)
「よーし! じゃあ次は鬼神族の場所に向かうよ!」
惑が、鬼神族の場所を聞いた地図を見ながら向かおうとした時であった。
「すみません! お願いがあります!」
「? なんでしょう?」
「そこのプラン殿を借りれないでしょうか?」
「……それは良いんだけど……お勧めしないよ? 人の事を苗床程度にしか思ってないから」
「なえどこ? が何か分かりませんが……それでも構いません! もし次に聖教騎士団が来るようなら我々も対抗手段が必要です!」
村長の必死の御願いに、惑は頷いた。
「分かりました、おいて行きましょう……どうなっても知りませんよ」
紳士に、村長の手を握りながら了承し、プランを置いて行った。
「……いいの? 惑? ヤバくない?」
「え? 帰って来た時にどうなってるか楽しみじゃない? 違う?」
「……惑はいつも楽しそうだね……」
イネは、もう何も言わないようにした。
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ある冒険者二人が、鬼神族を倒す為に遠征をしていた。
「俺達の愛さえあれば! 鬼神族等おそるるに足らない! なあ! レイシュリー!」
「ええ! アンドンソン! 私の魔法と!」
「俺の剣があれば!」
『二人は無敵さ!!』
自信満々に二人は、ポーズを取り鬼神族の里へと向かった。
二人の実力は確かに高かった。
あのバワカとアワホに、追い付くのではないかと言われる程に、二人の洗練された連携攻撃は、脅威と言えるレベルであった。
技も魔法も、二人の右に出る者は少なかった。
そして、二人は鬼神族の里に着いた。
「おお」
「ここがそうなのね! 早速……」
「ああ! 人間のお姉さんとお兄さんだ! 皆来てえええ!」
「うおおおおおおおおおおおおおおおおお!」
「人間さあああん! いらっしゃああああい!」
「殺せ殺せええ!! いや、まず拷問だああああ!」
鬼神族は、嬉しそうにしながら二人に駆け寄る。