記録301『襲われるオーガの里』
惑達は、テェイアとレイトの案内によって、オーガの里に向かっていた。
「ここから先の森を出ればオーガの里です」
「ふむ、君達も久しぶりの里帰りだろう……」
しみじみと言った惑に対して、イネは頬を膨らませる。
「惑が復活させなければ僕は二人と」
「おい、ぶっ飛ばすぞ……淫獣」
「汚らわしい……近づかないで」
「ちー!」
イネは、拗ねながら一緒に進む。
「私はどうすればいいでしょうか? 生き残りはしましたが……魔王様曰く貴方のサポートとのことですが……」
「ん? ならそれでいいよ……一人だと手が足りない場合があるし」
「プランはねえ! お腹が減ったら食べるのおお!」
「そうだねえ……」
プランは、ウキウキ気分で飛んでいる。
そして、オーガの里へ到着した。
「お父様お母様……元気かし……え?」
すると、村人達は大人も子供も老人も縛られて人間軍に見下されるように座らされていた。
「穢れし魔族共! オーガ共よ! 貴様等はこの世で最も尊い人の命を脅かす害悪共だ! ここにいる数匹を捕虜とし! 残りは全て廃棄する! これはこの世で聡明で尊い命を持った人間による決定だ!」
「!! この外道共があ……」
一人の老人オーガが、人間の隊長らしき存在を罵倒する。
「なんだ貴様……この聖教騎士団、バンカース様に言っているのか? 覚悟は出来ているんだろうな?」
「!!」
バンカースは、剣を抜いてケタケタと嗤いながら振り上げる。
「見よ! 皆の者よ! これが人間の力だ! 人間の正義だ! 人間に産まれた事を誇りに思うが良い! 奴等のような醜き魔物に産まれなかったことを感謝するが良い!」
「おお……なんだか祭りが開催されているようだ」
「!! 何処が祭りなんですか!」
「祭りじゃん、血祭り」
「馬鹿なこと言わないでください!」
様子を見ていた惑は、勝手な感想を述べる。
すると、プランは涎を垂らしながら惑の裾を引っ張る。
「小腹が空いた……」
「ふむ、良いぞ食べてきて、ただし聖教騎士団だけな」
「わいー!!」
プランは、ルンルン気分で聖教騎士団の方向へと飛んで行った。
「……」
「……」
「どうしたの?」
「あっさり解決しそうで何だか」
「いや……良いんだけど」
二人は、助けるつもりで向かおうとしたが、プランの食事会へと変わってしまった事に少し遣り切れない気持ちになった。
「死ね、この薄汚い魔族が」
「うわあああああああああああああああああああああああああああああああああああ!」
「え?」
「く! 来るなアあ!」
「やめて! 食べないでええ!」
「ええい! 魔物め! 聖教騎士団ふくうううああああああああああああああああああ!!」
突如現れた食虫植物に、聖教騎士団の面々は次々に噛み千切られながら食べられる。
「!! 何が! ん何が起こっているうううううううううウウウウウウウウウウウ!!」
バンカースは、プランのつるを警戒しながら部下達を守る為、必死で戦う。
剣を振り上げて、つるを次々と切裂き、植物を無力化する。
しかし、次から次へと生えていき、きりがない。
「くそお! どれだけ現れるんだあ!! 皆! ここで倒さねばこの魔物は信者を! 民を! 救いを求める者を襲う! 踏ん張れえええええええええ!」
「ぬぐがああああああああああああああ!」
「はああああああああああああ!」
恰幅の良い男は、大きな斧を振り上げながらつるを斬り続け、身軽そうな背の低い男は、つるからつるに渡りながら攻撃を躱して、刃を突き立てる。
「はあ! はあ! はああああああああああ!」
バンカースも、同じようにつるを斬り続ける。
「諦めるな! 人間の可能性は無限大だ! 奴等に人間の偉大さを知らしめて……」
「ごうほごおおおおおおおおおおおおおお!!」
「ひぎいいいいいいいいいいいがああああああああああああ!!」
恰幅の良い男は、つるが体中に巻き付き、そのまま細かく引き千切り続ける。
そして、背の低い身軽な男は、口の中からつるが入り、体の内側からつるが破壊しながら、腹から飛び出す。
そして、二人が瀕死になった瞬間を狙いそのまま食べた。
「かのう……せい……が……」
「おおいいいしいいいそおおおをおおおおおおおおおおおお!!」
「かのああ……あああああ……可能性……せいぎ……神よお……」
「いただぎばああああああああああず!!」
「人間の可能性をおおおおお! なべばああああああああああああああああああああああああああああ!!」
プランは、そのままつるを鋭い刃の様に振るい、バンカースを切り刻んで食べた。
「え……これは一体」
「オイシーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー!!」
プランは、美味しいご飯を食べて幸せに昼寝した。