惑:過去記録報告レポート②
「ッヒッヒッヒ~アイツはどうするかねえ~」
「うーん……まあ時間制限過ぎて死亡でほぼ確定じゃない? 父さん?」
「そうかもなア……」
蔑玖斗は、ニタニタ嗤いながら惑と一緒に病院を出ようと出口まで歩いている。
そんな時であった。
「唯聖大丈夫よ、輸血なんて最低な事絶対にさせないから」
「ああ! その通りさ! 僕等には神の救いがある、それがある限り輸血なんてしなくても大丈夫さ!」
「はい、お父様、お母様」
先程の親が、ベッドで横になっている少女に優しく伝えて、少女は微笑みながら頷く。
「ひっひっひ、なるほどねええ……なるほどなるほど……なかなか面白い人材だあ……なかなか見ない……それにしても惜しい……ここで終わるとは」
「ふむ、ふーむ」
「おやあ? 惑お? 興味持った?」
「うん、少しね……いやかなり興味が湧いて来たよ」
「ひっひっひいい……ならば……救われる可能性も出てきたという事かああ……ならば簡単だああ……お前の好きになさい、子供の自主性を妨げる妨害は全て私が取り除こう」
「うん、よろしく」
惑は、少女と目が合い、微笑みながら会釈してその場を立ち去る。
「どうしたの? 唯聖?」
「いいえ、何でもありません、お母様」
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唯聖は、夜眠らず外を見ていた。
確信していた。
先程目が合った少年がやってくるという事を。
「いやあ、良い星々だ……月の方が良いかな?」
「あら? 今日……いえ昨日目が合った人ですか? どうしてここに」
「良い演技だ……全く不自然な感覚が起こらない、僕や父さんみたいなもの好きだから本能でしか理解出来ない……それほどまでに完璧な才能だよ……君の演技は」
「?? 演技?」
「君? 神なんて信じてもないだろ? 僕や父さんになら分かる……でも他の皆は騙されてるんじゃないかなあ? ほらだって……君の演技は憑依型だし」
惑の言葉を聞いて、唯聖は苦笑しながら答える。
「あらあら、バレてしまうとは情けない……今度は本能的にも憑依させた方が良かったかしら?」
「そんな事が可能なの?」
「可能ですよ……気持ちをその者に変えればいい……私は基本父と母の精神状態を観察して、そして父と母が望む姿を考察してそれ等を組み合わせて作り上げた人格を憑依させています……知識さえあればどんな人物にでもなれる自信はあります……まあまだまだ色々と勉強する必要はあるでしょうが……例えば……っひっひっひ、全ては欲情によって支配されているう……何故ならああ~人は本能には逆らえないからだあ! そして欲情の中に人の個性はあ! 組み込まれているうう!」
「凄い凄い! 父さんそっくり! 姿形までは変えられないけど創造と記憶が勝手に補ってそこにいたような気がしたあ!!」
惑は、会話の途中に組み込まれた演技にも関わらず、突如目の前の少女の姿声、癖すらも父親その者に見え、聞こえ、感じてしまった。
「要は声の波長と心の波長、癖や悪癖、考え方等……様々な点をパズルとして組み合わせて自分の中に組み込むんです……そうすれば身長が足りなくても性別が違っても例えどんな状態でも人を騙すぐらいの力を身に着ける事が出来ます……」
「うんうん、凄い技術だ……でだ! 僕は君のその技術に感心している……だからね、君の……」
「可能性を見たいんだ!」
「!! 僕が一瞬目の前に居た……そんな事も出来るんだ……殆どチートみたいな才能だね」
少女は、少し考えてそして笑う。
「私としては、このまま父と母と喜ばせる演技をしながら死ぬのも一興と思いましたが……そうですねえ……貴方が私に授ける可能性にも興味があります……果たしてどっちを選ぶべきか……」
「それは君が選んでくれ……僕としては……」
「自分の意思の強さで可能性は導かれる」
「そう……で? どうする?」
「そうですねえ……」
唯聖の答えはいかに。