記録296『主人公交代』
糖来 入吐は、大河力を鍛えたいと思います!
「ううう……苗床……苗床があああ……」
プランは、悲しみの涙を流しながらエレンに背負われていた。
「よーしよしよし」
プランを慰めながら、イネと共に集落へと戻る。
「凄い犠牲を出したというべきか……それともこの程度で済んだというべきか……勇者相手だからただでは済まないと思ってたけど……逆に僕とプランの成長とエレンちゃんの闇落ちをした事による成長を考えると寧ろおつりが多いぐらいだ」
イネの言葉に、エレンは寂しそうにしながらも頷く。
「確かにそうですけど……でも……やっぱり惑が死ぬのは……」
「うう……苗床おお」
プランは、既に惑の事を苗床と呼んでいた。
「そうだねえ……苗床だねエ」
「うんうん」
二人も、その言葉に甘い顔をしながら頷く。
二人は、当然プランの苗床発言に、ドン引きしていた。
自分達もいずれ苗床になる事が絶対であるという恐怖に心が包まれていた。
しかし、プランが無意識に出しているフレグランスにより、苗床になるのもいいかという暗示に掛けられている。
プランにとって、人や動物を苗床にするのは、遺伝的に受け継いだ寄生能力による本能である。
この考え方は、最早プランにとって当然であり、お腹が減ればご飯を食べる行為、空気を吸う行為、子供を作る為の保存本能と同等である。
その為、かわい子ぶる行為も甘える行為もプランにとって苗床になる行為と直結しているのであった。
そして、3人は何とか集落へと辿り着く。
「お帰り」
「!!」
「は!」
「苗床おおおおおおお!!」
プランは、一目散に挨拶をした男の元へと向かった。
「え? え! ええ!! なんで! うそ! なんで!!」
「ちょ! え! どういう事!!」
何と目の前には、西院円惑がいた。
「え? なに?」
「何じゃないよ! 死んだんじゃ!」
「はい? 複製体ぐらい戦う前から用意してたけど?」
「「!! は!!」」
惑の余りにもさらっとした応答に対して二人は唖然とする。
しかし、エレンは涙を流しながら惑に抱き着く。
「良かった……」
「おいおい、大袈裟だよ」
「本当に心配したんですからね!」
「惑おお!」
「おお! プラン、苗床にはならんからな」
「ううう……」
「惑さんは知ってたんですか? プランちゃんが苗床にしようとしてた事?」
「え? 見れば分かるじゃん」
「……」
普通に会話をする惑、それがイネには違和感に覚えた。
「もう! 全く! そうならそうと言ってくれればいいのに! 心配して損しました! ちょっと集落で休んできます!! 行こ! プランちゃん!」
「うん!」
二人が、集落へと戻った後、イネは惑に聞いた。
「ねえ……今の惑って……」
「ん?」
「複製体の方だよね?」
「え? だからそう言ってるじゃん、戦う前に複製体を用意したって」
「いや! いやいやいや! 普通本体を残して複製体に戦わせるでしょ!」
「は?」
「は? じゃないよ!!」
惑は、イネの言葉に首を傾げる。
「だってそうじゃん! 普通本体は生き残らないと!」
「え? 別に複製体でも問題はないんじゃない? だって魂と肉体をそのままコピーした様なもんだし……」
「いやいやいや! もしかしたらちょっと違う動きをすると思わないの?」
「コピーしたんだし……支障はないんじゃない?」
「あるかもしれないでしょ! あるかも!」
「うーん……まあ確かにそうかもしれないけど……」
イネの意見に、惑は少し感心しながら頷く。
「よし! ならこれからの旅はイネが僕が今までとの相違があればそれを教えてよ! 僕がそれを記録するから!」
「え! 何言って……」
「楽しみだなあ! だってコピーが本体とそのままか、それともそれなりに違う動きをするのか……うーん! 可能性ってすごーい!!」
「えええ……」
イネは、唖然としながらドン引きする。
「そういう訳で! 西院円惑の楽しい異世界生物改造物語を読んでいる愛読者の皆様! 第2章から主人公交代! これからは西院円惑(本体)に代わり! 西院円惑(複製体)でやっていきたいと思います!」
「誰に言ってるの!」
イネは、大声でツッコんだ。