記録292『科学は成る』
「うがあガががが……正義……正義正義正義正義正義いいい!!」
神は、壊れ始める亜空間を修復する為、必死で維持を試みた。
しかし、無駄に力を消費する様に、亜空間の崩壊は止まらない。
「やれやれ……科学であればすぐに切り替えて別の方法を取るのに」
「黙れええええ……貴様等のような下賤な者と一緒にするなあああ……すぐにいい……諦めるようなゴミ屑共とおおお……」
「おいおい、諦めるだなんて酷いなあ……僕等は目的の為に手段を選んでいないだけさ」
「それが……下賤だと何故気付かん……神でもないお前等がどれだけの命を奪って来たああ……」
神は、惑に対して怒りを向けながら手を翳す。
「さっきまでなかったよね? それ? さすがイネ! 手を翳して集中しないと力も行使できない程に追い詰めるとは、気絶しているが大手柄だ」
「うああがあああああああああああ!!」
「よ!」
惑の後ろにあった木が弾ける。
破片が惑へと向かったが、近くにあった木の棒で全ての破片を防ぐ。
「肌で感じる風の動きだけでも意外と分かるよ? そういう規則性はね? 特に君の手で操作されていれば規則性の把握はとてもしやすい」
「うがあああ……だまれえええええ……次こそはああ! つぎこぞおおおおおおおおおおおお!!」
神も、ドンドンと余裕がなくなり始め、自身の体を動かして惑に直接攻撃を仕掛けようとした。
しかし、突如動きが止まる。
「!! なんだ……kろえはあああああ!」
『馬鹿な奴だ……自身の体の中にも俺がいる事に気付かないとは……自身が感染していると気付けないとは』
「な! なんだあああ! 何なんだああああああああああ!」
しかし、惑は正体にすぐ気づけた。
「凄いねイネ……君はやはり素晴らしい」
「行くよ……最後の攻撃……出来たら使いたくなかったとっておき……今こそ真名を! 今こそ力を!」
『「HIV!!」』
「yまべえええええええええええおろおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおお!!」
神は、立ちあがったイネにそのまま殴られて吹き飛び、木にぶち当たりながらその場に倒れる。
「時間だよ……神様……さようなら」
「馬鹿な馬鹿な馬鹿なああああアアアアアアア!! 有志いいいい!! 私の! 私の想いを! 想いをおおおおおおおおお!! 受け継いでくれえええええええええええええええええ!!」
「かみ……さま……ありがとう……ずっと戦ってくれて……次は……俺の番だ」
有志は、立ち上がると同時に、イネは再び力尽きた。
「ごめん……まど……もう立てないよ……あとは……」
「ああ、大丈夫だ……ついに来たよ……仕上げの時間だ」
有志は、惑を睨む。
惑は、優しい表情で有志を見据える。
そして、有志は一気に飛び込んだ。
「くらえええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええ!!」
目に見えない程の速度、例え予測していても反応してからでは絶対に避ける事の出来ない程、人間の人知の超えた速度と攻撃力で襲い掛かる。
そして、有志の聖剣が惑の胸を貫いた。
「ごぶ!!」
「かった……勝った勝ったっかったああああああアアアアアアア!! お前の負けだ西院円惑! お前は負けたあああ! やはり正義は勝つんだ! 勝ったんだ! 俺はここまで強くなれなかった! 全て! 全て全て全てえええ! 神様のお陰だああ! 仲間達のお陰だあああああ! 仇は取れたあああああああああああああああああああああああ!!」
血を吹きながら震える惑に対して、有志は勝利宣言をする。
「ああ……ぶほお!! 僕の負けだよ……でも……でもね……」
「ああ? なんだ? 負け惜しみか? 情けねええええええええ!! 全く持って情けねええええええ!! そんなんだからお前は主人公になれないんだあああああ! お前はこの世界の主人公じゃないいいい! 俺だ! 俺こそが主人公だあああああああああ! 最悪の敵である西院円惑!! お前を討ったああ! 後は魔王を倒すのみ! 小者らしい無様な末路だあああああああああ!!」
「でもね……今科学が成ったよ」
「は? あがおおお!!」
惑の言葉が終わったと同時に、有志は聖剣で体を貫かれた。
「君の敗因は最後まで僕が敵であると、そう信じ続けた事実……ありがとう……僕を倒した事で勝利を確信してくれて……」