記録278『うぇえええええ』
「うぇえええええ」
イネは、項垂れていた。
S〇Xをする事もなく、卵子と精子を採取し、体外受精する事によって受精卵を手に入れられてしまったのであった。
「ね! ちゃんと説得出来たでしょ!」
「……うん……」
惑のナイスアイディアでも出したかのような言い方に、イネはそっぽを向く。
「良かったですね! イネさん! これでイネさんの願い自体は叶いましたね!!」
「……うん」
エレンからの賞賛も、一体何が言いたいのか理解すら出来ない。
「ねえ、……僕が生殖行為自体を楽しんでないとでも? 確かにさあ……保存本能が目的なのはあるけど……でもさあ……」
イネは、少し不満げに二人を見る。
「え? エレンちゃんとしたいの?」
「うん」
「「ふーん」」
二人は、そうなんだあっと言った表情でそのままイネを無視した。
イネは、その二人を見て決意した。
「覚えていろよ……僕を蔑ろにした事を後悔させてやる」
「イネ―!! アルマダさんの子供が成長したよ!」
「わーい!」
しかし、イネはいくら不満が溜まろうとも、子供の為ならば、そんな鬱憤すらも吹き飛んでしまう事を、惑は知っていた。
云わば、子供の笑顔を見れば疲れなんて吹っ飛ぶって奴である。
「可愛いなあ」
「ええ、貴方と私の子よ」
「こっちはライアンママの子供だよお」
「わああ!! 子供って可愛いなアあ!!」
イネは、大喜びで自身の乳を与える。
「え! 出産しないと出ないんじゃ!」
惑は、自身の知識とは異なる行いをするイネに、驚きを隠せなかった。
「え? 僕色んな街で既に出産しまくってるよ? 娼館とか男娼とかで」
「え! いつの間に」
「ふ! 僕は既に出産慣れしている遺伝子を持っていたから簡単に産めるのさ!」
「そんなものなの? 一日で子供って育つの?」
「うん、特に僕はゴキブリの卵鞘ようにスキル無で当然のように産み付けた……」
「それで授乳できるって……」
イネは決め顔でこう言った。
「僕にとっては卵を産んでも出産したことになるんだよ」
「君は既に僕の知らない知識の枠にいるのかもしれないね」
「えへへへへ」
イネは照れながら、子供に乳を与える。
「で? そろそろ有志との戦いをするんですよね?」
「ああ、準備は後少し……まあ足止めは必要だけど……」
「そうなんですか?」
「後イネ……君にはして貰いたい事があるんだ、すまないが君の神キメラとしての力を使ってもらうよ」
「え? ああ……分かったけど……」
取り敢えずイネは同意した。