記録277『ドアインザフェイス』
エレンは、ドアを閉めて泣いていた。
「いやだああ……イネとセックスなんてええ……いやだあああ……」
涙を流しながら震える。
イネとの性行為に対する拒絶反応が強かった。
いくら復讐とはいえ、許容範囲がある。
イネのこれまでの行動、卑猥な考え方、更にはエイズウイルスという病気持ち。
そんな相手としたいとは、流石にエレンも思っていなかった。
「でもおお……どうすればあああ……」
惑の言葉通りだと、復讐は進まないとのことである。
「どうすればああ……どうしようおお……」
エレンは、苦しそうに悩み続けていた。
『エレンちゃん? いい?』
「ひいいいいい!」
惑の声が聞こえてきて、恐怖が蘇る。
「来ないで下さああい!!」
『まあまあ話を聞いてよ、一つ良い事思い付いたんだ』
「何ですか! 睡眠剤で眠らして寝ている間にするつもりですか!!」
『君も僕の事分ってきているようでまだまだ分かっていないようだね』
「じゃあ何ですか! それ以外貴方が考える事って!!」
エレンは、ドアを睨み付けながら問い掛ける。
『体外授精させるつもりだ』
「はあ? 体外授精?」
聞いた事のない言葉に、エレンは首を傾げる。
『体外授精って言うのはね、人の手で卵子に精子を採取して受精させる方法だよ』
エレンは、それでも言葉の意味を理解出来なかった。
「それって……S〇Xとどう違うんですか? S〇Xも人間の手で作ってるのでは?」
『人工授精はね、精子が極端に少なかったり、無精子の場合にごく少数の精子を採取して行うけど別に問題が無くても出来なくもない、イネはS〇Xよりも生殖こそが本懐だ、つまりは別にS〇Xする必要はない、病気が移る事もないし君自身が穢される事はない』
「ふっふーん……それなら私にとっても……S〇Xするよりマシかあ……」
エレンは、少し譲歩出来るような話し方であった。
『ふむ、その通りだよ……つまりは君は卵子を提供するだけでそれ以上する必要はないし、イネを気持ちよくする必要も嫌悪する必要もない、イネはイネで君との生殖自体は成功する! WinWinの関係さ!』
「やったああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああ!!」
エレンは、本気で嬉しいのか絶叫するように喜んだ。
惑は、ワザと狙っていた、ドアインザフェイス。
大きい要求を最初にして、後で小さい要求をする。
その事により、小さい要求を飲ませることに成功した。
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『やったああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああ!!』
イネの耳に、エレンの嬉しそうな悦び声が聞こえた。
「!! お!! エレンちゃんが嬉しそう! よおおし! いっぱい気持ち良くするぞおおおお!」
しかし、イネは知らなかった。
生殖行為自体をしないという事実に。