記録272『触るな!!』
「ああああ……あああ……」
「僕の赤ちゃんがアアアアア!!」
最早、阿鼻叫喚の光景をアワホ、そして後からやって来たファリルナとバワカが見ていた。
「何だこれ?」
「さあ……」
「えええ……」
ファリルナは、余りの光景にドン引きしていた。
「まあまあ、イネエ……ちゃんと治して上げるから」
「ううう……ほんとう?」
「本当本当! ファリルナちゃんを見てたでしょ? スキルを奪えばこの子の歪な姿も戻るさ!」
「うう……うん……分かった……」
イネは、少し心配そうにしながら惑の言葉を信じた。
しかし、そんな時であった。
「おい! おいいい!! まてええ! 俺の! 俺の子供おお! 俺の子をどうするつもりだああ! 西院円惑おおお!! 返せえ! 返せええええ!!」
必死に、縋りつきながら歪に変形した赤ん坊を奪い返そうとした。
しかし、イネは怒りの表情で有志を睨む。
「るっせえええ!! 触るなアあ!!」
「うがあ!」
「いつまで父親気取ってんだよ!! テメエの子じゃねえっつってんだろうがよお!!」
「ちがう! ちがう! 俺の! おれとシャイニャスの子だあ! 嫌だああ!!」
「何勘違いしてやがる! この托卵され野郎が! テメエは俺の子供を運ぶためのただの運び屋なんだよ! テメエの精子なんてそれぐらいしか使い道ねえだろうが!! 分かったら今すぐ俺の子供から手を放せ! このカスが!」
イネは、有志に鬼畜発言をした。
「うわあああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああ!!」
再び、発狂して有志はのた打ち回る。
精神が、明らかに破壊されつつある。
「うわあ……でも今倒せそうと思っても殺し切れはしないかあ……やっぱり完成させてからの方が良さそうだなあ……」
惑も、有志の姿を見て哀れに思った。
しかし、有志は既に別の方向に視線を向けていた。
「君が……君が……」
「え? 何ですか?」
ファリルナは、少し怯えながら有志に見られる。
「俺が……俺が……」
「え?」
「俺の愛で君を救って上げるよおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおお!!」
そして、そのままファリルナの方へと走り出す。
「え! え! いやああああああああああああああああああああああ!!」
「何しやがる!!」
「大丈夫! 俺が君に愛を注げば君は助かる! 君の為なんだ!!」
「何訳分かんねえこと言ってんだ!! 気持ち悪いんだよ!!」
「止めてえええええええええええええええええ!!」
「拒まないで! 拒んだらダメだ! 君は助かりたいんだろ!! だったら俺の愛は受け取るべきだ! そうするべきだ! 君の幸せを願っているんだから安心して!!」
「いやあああああああああああああああああ!!」
有志は、嫌がるファリルナの服を引き千切り始める。
「止めろってんだろうがああ!!」
アワホは、ブチギレながら有志に襲い掛かる。
「黙れえええええええええええええええ! 悪人ガアアアアアアアアアアア!」
「ぎゃ!!」
「兄さん!!」
アワホは、気に叩き付けられて意識が朦朧とする。
「アワホ!!」
「お前も邪魔だあああああああああああああああああああああ!!」
「ぐううあ!」
「バワカさん!! いやああああああああああああ! いやああああああっだああああああああああああああああああああ!!」
バワカまでもが、殴られて昏倒する。
「大丈夫! 君の為なんだ!! 君の為なんだから! あんな悪人共から君を守るよ! 俺が! 君に愛を注いで加護を与えるよ! そして俺の子を孕めばきっと君は幸せを享受できる! きっと! いやそうに決まっている! 俺は君の為に言ってるんだ!! !!」
しかし、嫌そうに睨み付けるファリルナ表情に、有志は顔を顰める。
「何だよ……何なんだその顔はあああアアアアアアア!! 俺の愛を受け取るんだああああああああああああああああ!!」
服を引き裂き、ファリルナの頬を舐め回す。
「いやああああああああああああああああ! にいさあああああああああああああん!! にいさああああああああああああああああああああああああん!!」
「ううググ……ファリルナ……」
「くぞおお……」
「なんだか大変なことになっちゃったなあ……」
惑は、他人ごとの様に様子を観察していた。