記録264『今現在』
「で? バザルはどうしたの?」
「私もその頃には目が覚めていてね……流石にやたらめったらと当たるのは止めようと思ってねえ」
「魔王が復活した今は違うのに?」
「言ったでしょ? 私はあの時は制御されていました……久しぶりの自由で何年もの間、自分が自分でなかったようなものです……しかしそれも年を重ねるごとに落ち着き始め……ああ! 恥ずかしい! だからあの英雄と呼ばれている奴を期にやれた振りをしたんだ……」
「魔王はそれを聞いて怒らなかったの?」
「全てを焦土にしてたら征服の意味がなくなるという事で許して貰えた……」
バザルは、気まずそうにしながら顔を背ける。
「なるほどねえ……倒された振りではあるけど……其れなりに強いんだよね?」
「まあそうですね……雑魚に負けては龍の名折れです……其れなりに強い相手でないと止めれませんよ」
「どれくらい強い?」
「私があった中で1、2を争うぐらいには……」
「うーむ……どうしようか……でもこれ以上仲間を増やされてはエレンちゃんの勇者復讐に支障が……」
その時であった。
「あれ? どうかしました?」
「なんだか珍しく悩ましい表情してるじゃねえか?」
バワカとアワホが現れた。
「ああ、二人共……ごめんだけど情報持ってたらいいんだけど災厄の龍ラグナロクを倒した英雄について知っている?」
「親父がどうかしたの?」
「え?」
アワホの言葉に、周りの者達は唖然とする。
「え? バワカさん……今凄い事聞いたような」
「その英雄はアワホの親父さんだけど?」
「そうなの? ああまあ……二人って凄い強いよねえ……そうかそうかあ……だから」
しかし、そこにエレンが声を上げる。
「いや! 何落ち着いてるんですか! え! 何! ずっと近くに英雄の子供がいたの! ていうかそのバザルさんが暴れ回るの止めたのって何年前!」
「今から丁度40年前ですねえ」
「いやごく最近の出来事が伝説として語り継がれているって! せめて当事者死んでからにしろよ!」
「死んだけど?」
「死んだの!!」
元英雄は、既にこの世に居なかった。
その衝撃は、惑とイネ以外に衝撃を与えた。
「え! 何で死んだの! どうして死んだの!」
ドワーフも驚きながら聞くと、アワホは俯きながら怒りの籠った声で言った。
「あの屑は俺が殺した……10年前……あの酒浸りの昔の栄光を引き摺る働きもしない屑は……妹の病気を治すための薬を酒に全部使ったのがムカついた……」
たった30年で、屑化し、アワホに制裁されていた。
「あらあら、それは最低……妹さんも可哀そうに……僕が協力して治せるのかなあ?」
「医者が見ているから金さえあれば治ると思うんだが……」
少し怪しそうで、不穏な言葉を聞くが、惑はお願いされていないので納得した。
「それじゃあ放置しても問題なさそうだ……それなら別の事をしても良さそうだ……そういえば妹さんは大丈夫? 勇者が家に向かっているみたいだけど?」
「は!! 何だと! あの糞野郎が!!」
「マジかよ! あのままじゃお前の妹が! ファリルナちゃんが!」
「これは……流石に……イネに……だと流石に元の木阿弥かあ……」
「大丈夫! 僕が守ってあげるから!」
イネの言葉に、誰も心に響いていなかった。




