記録25『情報提供』
惑は、二人を森の中で話を聞く事にした。
他の村人達も大人しく座って話を聞く。
「俺達はペプリア国から国外追放された元冒険者だ」
「あらあら僕と同じだ」
「へえ、アンタもか? 俺達は勇者様に反抗的な態度を取ったとしてだが……」
「僕は姫に不敬を働いたって言われた……覚えはないけど」
「強姦でもしたのか?」
「いや、姫に対してそんな魅力は一つも感じられなかった」
「う……うん、そうか」
「だったら何をしたんだ?」
二人は、苦笑いしながら聞いた。
「なんか異世界から召喚されて、活動資金を貰おうとしたけど金がないって言うから、姫のネックレスを売れって言ったらなんかキレられた」
「なるほど」
「まあ確かに不敬かな?」
元冒険者二人から見ても、惑の発言は問題だと感じた。
「何だと! 俺達がこんなに苦しんでいる上、大切な物すらも売らないと生きていけない状況下で! 異世界召喚した者に活動資金を与えないばかりかネックレスぐらい売れないだと!」
「何でもお婆様? の形見なんだって」
「私なんて生きる為にお母さんの髪留め売って皆の生活の足しにしてるんだけど!」
「俺だって! 親父から受け継いだ剣を売っぱらって食いもんに変えたぞ!」
「生きる為にこっちは必至だっていうのに!」
しかし、貧困に苦しむ村人にとっては、国に対するヘイトは高く、それを上乗せしてしまう形となった。
バワカもアワホも、その様子を見てハッとなった。
「あ……えっと……その……」
「アワホ……俺が話すよ……多分あれも関係ある」
その言葉を聞いて、村人は睨むように二人を見る。
「どういうことだ……あれも関係あるって……」
「答えろよ!」
「はいはい、落ち着いて! この二人は何か関係している事を話してくれるってことは、国家転覆に協力してくれる事なんだから、あまり問い詰めすぎないように」
「あ……ヤバい事に首突っ込んだ」
「でも良いじゃん、どうせ俺等もあの国に恨みあるし」
真顔で、青ざめるバワカに、アワホは呑気に笑い掛ける。
そんな様子を見て、バワカも苦笑する。
「そうだな、恨みがあるなら寧ろここでぶちまける方が得策かもな……」
「だろ? 村人全員を改造人間にしてるあたり上手くいくかもしれねえしな!」
そして、バワカとアワホの話を聞く事になった。
「実はよ、俺等1年前に魔族のオーガ族の里に訪れてラマガル坊ちゃんのペットを飼う為、依頼を受けたんだよ」
「それで、二匹のオーガを……」
「それってこの二人の事?」
惑は、そう言ってイネのダッチ〇イフを二人に見せた。
「……ああ……それだが……」
「え……何これ……」
「ダッチ〇イフ、要するに性玩具だ、二人の死体を剥製にして作った」
「おお……」
「そうか……」
二人は、ドン引きした。
しかし、咳払いをしながらなんとか話を戻した。
「それで……ラマガル坊ちゃんはそいつ等を使って村の子供達を誘拐して拷問するとか言っていたな……」
「ああ……冗談かと思ってたし冒険者が貴族様のやる事に逆らうと碌な事にならないから無視してたんだが……」
「まあそうだね、誘拐してたね……主に男の方が……」
「「やっぱりか……」」
村人達も悔しそうにしながら歯を食い縛り、拳を握り締める。
「でも今はそれだけじゃなくてね、もうペプリア付近の村はいらないと言っていきなり掃討作戦に出たんだよ、更にそこを魔族に襲われた村として残す事によって観光地として金儲けしようと考えているらしいよ」
惑の言葉に、さすがの二人は唖然とする。
「いやいや……さすがに村人を侮りすぎだろ!」
「いや……もし錬金術師様が来なければお前等どうなってた?」
アワホは、頭を掻きながら呆れるが、バワカは冷静な表情で村人に聞いた。
「殺されてたよ! 皆残らずな!」
「実際錬金術師様が助けた数もそこまで多くない! 子供は3人に、大人は21人だ!」
バワカとアワホは、顔を歪める。
「そうか……分かったよ……じゃあ俺等も協力してやるよ! 情報提供ぐらいだけどな!」
「ああ! 俺等だって他にやる事あるし! お前等の国家転覆が上手くいくように可能性を上げてやるよ!」
惑は、嬉しそうにしながら言った。
「ありがとう! 多分勇者がまだいるから絶対失敗する可能性が高いけど! それでもやれることはするよ!」
「え……」
「ああ……いなくなってからは?」
「村人曰く、強くなってから来られた方が厄介だから、まだ弱い段階の今狙った方が良いっだって」
「そうか……そこまで分かってるなら何も言わない」
「じゃあ、俺等が聞いて国の抜け道と城への隠し通路、更には貴族共がどのタイミングで集まるか、勇者はいつまで国に滞在するかを教えてやるよ!」
「安心しろ! 意外とちゃんと情報は集めている! これでも冒険者だから情報屋に通じて今までたくさん集めたんだ! どっかの奴等に売り渡せねえかって!」
「金は少ないけど……今の手持ちで……イネ!」
「え! 私も!」
「うん!」
「うううう」
イネは渋々お金を惑に渡して、惑はそれを全て払った。
「ええ!」
「こんなにくれるのか!」
「いいよお、僕は国家転覆に紛れて死体からお金を回収すればいいだけの話だし」
「「ええええ……」」
だが、2人はしっかりとお金は受け取った。




