記録260『剣と剣』
レイシャは男となり、心は男と女の狭間に立っていた。
「はい、いらっしゃい」
今では、立派な髭も生えている。
女性ホルモンも存在しているが、チ〇コを付けた事により、男性ホルモンが過剰に分泌されるようになった。
プラシーボ効果も相まって、すっかりオネエ系スナックママへと変わっていった。
ライアンママは、そんなレイシャを見て微笑む。
「いらっしゃいませ、ああら! ニャムニャムさん! いらっしゃい!」
「やあ! レイシャママ! 来たよ!」
「ハハハハ! 本当に男と女になったんだねえ! レイシャママに話すと心が穏やかになるよ!」
常連、新たな客が舞い込み、接客していく。
「私ももう必要はないかもしれないわね」
「ママ? どうしたの??」
レイシャは、少し不安そうにしながら様子を伺う。
「私も……もうここにいる訳には行かないわ」
「え?」
他の常連たちも、新しい客も驚きを隠せない。
「どうして! どうしてなんですか! 私の穴を手に入れて女性としての心も得たから接客の幅が増えたって!」
「そうだよママ! まだまだ接客をして欲しいよ!」
「俺の話も聞いて欲しい!」
「チーママも良いけど……ママだって必要だよ!」
「いいえ、違うのよ……ここまで接客できたのはとても誇りに思うわ……でも時は経つの……だって私だって56よ……流石に引退をしないといけないは……」
「いや……スナックのママの中には50代以上も……」
「基本は20~40ぐらいよ……だから……もうすぐ引退を考えていたの……最後の最後に成長できたのが嬉しかったわ……そして今はレイシャもいる……レイシャならこのスナックを任せられると思って……」
「ママ」
レイシャは、涙ぐみながら真っ直ぐな目で見る。
「ママ! 私! 昔は命を奪う剣を握っていたような気がするんです! でも……今は違う……今は生命を誕生させる剣を握れる……そして気持ち良い……これが生命の脈動なのだと思って凄く嬉しかった……そしてそれはママに与えて貰ったもので……与えられなければ私……分からなかった……私はこの剣を握れて! 本当にうれしかった!」
「レイシャ……」
御客達は、全員拍手をする。
何処か、レイシャの成長を見守る客、新たな旅立ちに感動する客、なんとなく拍手する客に別れた。
「私はそろそろ行くわ」
「はい、ママ……」
「さようならママ!」
「またねママ!」
「いつまでもママの帰りを待つよ!」
「ママ! 私! 頑張ります! この店の人達の苦しみを! ちょっとでも背負えるように!」
「貴方なら出来るわ! 頑張って!」
こうして、ライアンママは、スナックを去った。
----------------------------------------------------------------------------------------
亜空間から、ライアンが出て来た。
そして、そのまま亜空間は見えなくなった。
「!! レイシャは! レイシャは何処だ!」
「レイシャは亜空間でスナックのママとして働いている! もうこの世界には帰って来ない!」
ライアンは、堂々と有志に向かって言い放った。
「そんな……レイシャさんが……帰って来ない……」
「ああ! 彼女は私のチ〇コを手に入れて、今では立派なママとなり……色々なお客様を満足させて上げているわ!」
「はあ! 何を言っている! ふざけるな! レイシャは素晴らしい騎士だ! 剣を握り! 沢山の人を救う素晴らしい騎士だ! それを! ふざけるな! クズが!」
「どうして貴方には分からないの! 守ろうとすれば守ろうとする事で余計な争いを生
み! そして全てを壊すの! 人を殺す剣では平和は訪れないわ! 生命を作り出す剣こそが! この世界に平和をもたらすのよ!」
ライアンは、有志の言葉を否定した。
しかし、それに負けじと有志も否定する。
「ふざけるな! 卑猥な言葉で剣を語るな! 汚らわしい! それにレイシャにそれは必要ない! 何故なら俺と愛し合う事で生命も産み! レイシャの剣裁きで悪となる者を討つのだから! それこそが平和として当然のルールだ!」
「そうです! 有志の子を産む事は世界の理です! それを! レイシャが破るわけありません!」
ライアンは、身勝手な言葉に怒りを覚える。
「ふざけないで! レイシャの道はレイシャが選んだわ! だから最後に人の命を奪う剣を捨てて生命を作り出す剣を握る事に喜びを覚えたの! 精神汚染されているから全てが本音ではないという訳ではないわ! 本音も混ざる事を理解し! それを見つけ出す事こそがこの亜空間の必要性よ!」
「黙れええええええええええええええええええ! お前を殺せばああアアアアアアア! その亜空間は消えてええええええええええ! レイシャを! レイシャを取り戻せるうううううううううううううううううう! 死ねええええええええええええええええええええええええええええ!」
有志は、怒りに任せてライアンを斬り殺した。
(ああ、レイシャ……皆……ごめんね……貴方達の事……守れなくて)




