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記録255『生命の誕生とは美しいものだ』

「っは!!」


ライアンは、ベッドの上で目覚めた。


「はあはあ……なんて悪い夢だ……とてつもなく調子が悪い……なんだか腰も痛いし気持ち悪い……頭も痛ければなんだか怠い……それに……体が酷く重い……風邪か?」


ライアンは、ベッドから体を上げようとするが思う様に上がらない。

体が重いせいだと思っていたが、何処か違和感を感じた。


「いや……違う……体が重いというよりお腹が重い……まるで子供ぐらいの大きさの丸い鉛をお腹に抱えているような……どこかお腹に張りがある様な違和感が……」


ライアンは、恐る恐る自身の腹部を確認すると自身の腹が丸く膨らんでいた。


「うあ……うわああああああああああああああああああああああああああ!! バカな! バカナア! 馬鹿なアアアアア!!」


ライアンは、素っ頓狂な悲鳴を上げながら冷汗を掻く。


「そんな……俺は男だぞ! そんな……嘘だ! 俺が妊娠だ何て……一体……嫌なんでこれが妊娠だとわか……」


その時、イネの亜空間内での出来事とイネの言葉を思い出した。


『貴様は……僕が何も考えずに男と交配していたといつから勘違いしていた?』

「うわあああああああああああああああああ!! あああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああ!! 孕ますなああああ! 孕ますなあああああああああああ!! バカやろおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおお!!」


絶叫しながらライアンはベッド内で大暴れする。


「おやおや……あまり暴れてはだめだよ、お腹の子に障るよ」

「ふざけるなア! 何を言っている! 俺は男だ! 男なんだ!! そんな! 妊娠だなんて……うう!!」

「うふふふ、お腹の子が蹴ったようですね」


入って来た惑の言葉を否定するが、すぐに腹の子供に蹴られてイネは微笑ましそうにする。


「馬鹿なああ! そんなあ!! どうしてえええ! 俺には卵子も子宮もないんだぞおおお!! こんな! こんなものおおおお!」


ライアンは、絶望の余り腹を殴って無かった事にしようとしたその瞬間、突如股から大量の水が溢れ出た。


「ウワアアアアアアアアア!! 小便か! この俺がああ!」

「いや! これは! 破水だ! イネ!」

「はい!」


ベッドで寝かされていたライアンは、そのまま分娩室へと運ばれた。


「いやっだああ!! いやああああああああああああ! 産みたくない! 出産だなんてええ! 男の俺が……嫌あああ!! ううがあ! 腹が! いだい! 腰もだああ! うがあがががっがああ!!」


違和感だったはずの痛みらしきものが、本格的に陣痛としての痛みに変わった。


「イネ君! 君の子供だ! 取り上げるよ!」

「はい! 頑張ってください!」

「ぐあああああああああああああああああああああああああああああああああああああああ!」


そして1分後、ライアンはぐったりとしながら項垂れていた。


「今はちゃんと休んでね! 2分後に出産……あれ? チン〇の下に〇がある……」

「ふふふ、抜かりはないよ!」

「さすがイネ! 天才! 僕が作った甲斐があった! 君は新時代の生物だ!」


嬉しそうにしながら、惑はライアンの出産に備えた。


そして、再び陣痛が始まる。


「うあがああああああああああああああああ! あああああ!」

「はい! 腹式呼吸をしっかり!!」

「ずるがああああ!!」

「しないと死ぬよ! 実際出産は命懸けだからね!」

「ぢくじょおおおおお!!」


最早、ライアンにはどうする事も出来ず、言われた通りの方法で子供を産む事に専念するほかなかった。


そして、腹式呼吸をしながらマッサージを受け、適度に食事を取り、水分を取りながらエネルギー補給をし、分娩第1期が終わり、第二期でいきみの呼吸をしながら赤ちゃんの頭を徐々に出していき、体を徐々に出して出産を手伝う。

イネはその間、汗を拭いたり飲み物を飲ませたり、励ましたり、手を握ったり、うちわであおいだり、一緒に呼吸法をして手伝ったりした。

そして、約14時間が経過して無事出産出来た。


「おぎゃああああああああああああああああああああ!」


ライアンから、20分ぐらい第三期の胎盤を出した後、ライアンと赤ん坊の初対面である。

そして、産まれるまでは嫌悪し嫌がっていたライアンの表情は既に朗らかになっており、何処か達成感のある表情をしていた。


「ほら~貴方のパパでちゅよ~! よく頑張ったね! ライアン!」

「……ああ……ふふ……可愛い……」


ライアンは、最早愛おしそうな表情で自身の腹を痛めて産んだ子を優しく抱いた。


「うんうん、生命の誕生とは美しいものだ」


惑は、満足げな表情でライアンとイネを見ていた。

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