記録24『森の中の元冒険者』
惑は、日々を満喫していた。
現在、村人達(子供含め)の改造手術を行い、たくさんの改造人間に変えているからだ。
狼人間、ファンゴ人間、グリズリー人間等、子供達は、体力的にも精神的にもゴブリンと相性が良かった為、ゴブリン人間へ改造を行った。
その結果、たった
そして、戦闘に関しては、イネが担当してそれなりの強さへと成長した。
そして、鍛錬は実戦へと移った。
「いいか! 君達には魔物を狩ってもらう!」
「いよいよか」
「騎士や兵士の中には魔物を倒した経験があるって聞いている」
「これぐらい出来ないと国落としは難しいよな」
イネからの試練に慣れたのか、村人達も気合いは十分であった。
「人間との戦いは君達は全くの未経験、せめて今出来る事を全部やっておくんだ! この経験は必ず国落としの役に立つだろう!」
『はい!!』
そして、イネは村人達を連れて、森の奥へと入って行った。
「がおおお!」
「ふん!」
「グオ!」
アレンの拳が、グリズリーのみぞおちにヒットし、そのまま気を失う。
「うおおお!」
「アレンさんすげえええ!」
村人達は、アレンがお手本で倒したグリズリーを見て歓喜する。
「アレンさんは改造し手術を受け入れてから戦闘訓練を受けていた! 他の者との実力差があるのは当然の事! だからこそ皆にはこれぐらいは倒す事を目標に頑張って欲しい! でないと魔法あり武器あり、駆け引きありの人間相手に勝てるはずもない!」
『ハイ!』
その返事は、どこかアレンやイネへの憧れのような雰囲気にも捉えれた。
村人達もまた、自分達も役に立ちたいという強い意志が生まれ始めていた。
村人達は、森から出て来たゴブリンの群れを協力しながら倒したり、大物の魔物を撃退したりと徐々に力を付けていった。
傷を負えば、惑が採取したHPを合成する事で何とか回復をした。
ジャイアントアル―に関しては、遊びたいという理由が大きく、戦闘を覚えるという事は遊ぶとは違うという理由から惑は、ルーズと話し合い、結果ルーズは人間のままアル―の母親として指示を送る事に集中する事になった。
「すみません……無理を言ってしまって……」
ルーズは申し訳なさそうにし、惑に謝罪する。
しかし、惑は寧ろ嬉しそうにしていた。
「何で? すごく面白いよこの子! だって君の指示をビックリする程聞いているよ! 魂の錬成で作ったアル―君だしジャイアントとの改造で知能もかなり落ちたのに、それでも君の事だけは絶対に覚えているっていうのは正直驚きだ!」
「ま゛ま゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛」
アル―は、最早人間としての少し歪な声をしていた。
しかし、ルーズはそれでも楽しそうに動いているアル―を見てどこか満足そうにしていた。
「ふふふ、アル―があんなに元気そうにしているなんて……本当に錬金術師様のお陰です」
「喜んで頂いて何よりです」
そんな中、ある日事件が起こった。
「うわああああああ!!」
突如村人の悲鳴が聞こえた。
皆が走って声の元へと向かうと、足を斬られた村人が血を流して泣いていた。
「た! 助けてくれええ! こ! 殺されるううう!」
「何だこの魔族? 命乞いか?」
「複数来られると面倒だ……さっさと」
「急げ!」
「糞おお! お前等何者だ!」
体格の大きいオールバックのガンレットを強面の男と小柄だが不気味な顔つきで、剣を装備したロン毛の男が立っていた。
「おいおい、早いな……アワホ……少し待て……これは寧ろ交渉した方が良いかもしれない……このまま戦いになればこっちもただじゃ済まなそうだ……」
小柄な男は、冷静に判断して、オールバックの男をアワホと呼び、攻撃を止める。
「ふー……確かにそうだな、この状況で争うのはヤバそうだ……」
すると、足を斬った男に、拳を振り下ろさず様子を伺う。
「大丈夫か?」
「ああ……」
「錬金術師様! お願いします!」
「はい」
惑は、当然のように害虫やネズミを使い切断された足を断面とくっつけて治癒させた。
「アンタ……聖職者か? いや違うな……聖職者なら他の生き物を使って治癒はしないか?」
「錬金術師様って言ってたろ? なるほど……HPを奪って他の者に移植? 合成してるか……なかなか面白い奴だ……」
惑に対し、興味を持ったのか二人はジロジロと見る。
「二人は何者かな? 色々と話を聞きたい」
「錬金術師様! 良いのですか?」
「まあ良いじゃないか……この腕は明らかに戦いに慣れている……しかも装備を見るとどこかっ国か街で購入した物だろう、でなきゃここまで整ったサイズを着てはいないだろう……手入れもしっかりしている……」
「ほう、よく見てるな……錬金術師は観察がお好きのようだ」
「錬金術師というか研究にはまず観察しないとどう改造するべきかが分からなくなるから」
「冒険者も同じだ……観察する事で相手の手の内を読む……お前等はある程度の統制が取れている……そんな奴等と戦えばこっちが逆に手傷を負う……帰れるならともかく今の俺等は国に帰れないからな」
そして、二人は戦闘態勢を解いた。
「俺の名前はバワカ、そしてこいつは……」
「俺はアワホだ! よろしくな!」
「僕は、西院円惑……こいつはイネ、他の人達は元ペプリア付近村の村民だ」
「「マジか……」」
二人は、唖然としながら村人を眺めた。




