記録251『ライアン in the 亜空間:必要性』
惑は、首を傾げながら考える。
「僕って……いる?」
実際、国の問題として必要とされるのは、イネ王女王、アルマダ騎士、そしてアリスとして存在するライアンである。
チェシャ猫である惑がいる必要性がそもそもないのである。
しかし、有志は絶対にチェシャ猫を倒そうと奮起している。
そんな中、惑が来なければ事態は一切動かない様な気がした。
「うーん……取り敢えず隠れてくれるか? ややこしそうになる……本気で動きそうにないなら出てきていいけど」
「私もそう思うわ……だってこれ……絶対に貴方本来必要ないでしょ? そもそも貴方は野生のチェシャ猫であるあなたが必要……」
「僕一応は話上では飼われてるんだけど? 確か公爵夫人? だっけ? それに飼われているはず?」
「何で疑問形なんだよ……」
「いや……何かここに来た瞬間から外にいたから……」
ライアンも、この世界がそもそもどこか歪な物語へと変化しているという事に気付いた。
「まあ助っ人は呼んだから君等はその者達と協力し合って戦えば?」
「助っ人?」
ライアンは、首を傾げながらも取り敢えず、イネの元へと向かった。
「さあ! こっちに来るんだ! ミーシャ!」
「だから誰だよそれ!! 怖いよおおお!!」
「……」
「アリス! お願い助けて! 体を重ねた……」
「黙れ……」
ライアンは、頭を抱えながらそれでも助け船を出そうとする。
「貴様! チェシャ猫の手下だな!! チェシャ猫は何処だ! 隠れてないで出てこい! 卑怯者!」
「お前が知っているのか知らんが……チェシャ猫はこの国の何でもないぞ?」
「まさか! 関係ないのにこの国をめちゃくちゃにしようというのか!」
「許せません! 平和な国を脅かそうとは!!」
「私も騎士として許せん!」
「世界を乱そうとする愉快犯! チェシャ猫は神の御身の手によって絶対に許せない!」
テュリアメルは、弓を引いてどこかを射抜いた。
「うわあ! 危な!!」
チェシャ猫は、その弓のせいで落ちて来た。
「gほおお!! びっくり!」
惑は、頭を掻きながら自身の能力を活用する。
「可能性1、バレない」
と同時に、チェシャ猫の姿が消えた。
「貴様! また逃げるのか! 卑怯者ガアア!」
「え! 何今の! ねえ!」
「ロキ様の作ったルールの一つで惑は可能性の世界を飛び回れます……異能的能力と惑の可能性的好奇心が絡み合ってこの亜空間内だけ使用可能ですね」
「そんな不正技! アイツいつでもこの世界乗っ取れるだろ!」
「乗っ取るのが目的ではない人だからその能力なんでしょうね」
アルマダの説明に、ライアンは混乱する。
「糞! チェシャ猫め! 必ず俺がお前を殺す!」
決意と共に、次に敵視したのはライアンの方であった。
「貴様! アリスの恰好をして! 彼女を何処へやった!」
「知らねえよ! 俺もしたくてしている姿じゃねえよ!」
怒りの表情を見せながら、有志は剣を向ける。
「しらを切る気だな! 許せない!」
「ええ! 本物のアリスさんを探しましょう!」
「きっと悲しみで震えている」
「テメエのそれイラつくんだよ! 止めろボケがあ!」
ライアンも、流石に怒りの感情を剝き出しにした。
「フン……お前ひとりで何が……」
「死ね」
それと同時に、刃の付いた帽子が飛んできた。
「な!」
刃が、有志の腕に食い込んだ。
「ヒャハハハハハハハ! チェシャ猫さんの言う通り! 勇者! いえ革命家っがいたわ! ぶっ殺してやるうううう!」
マッドハッターは、涎を垂らしんがら有志を殺そうとする。
「マッドハッター! 君はどうして! 操られて……」
「黙れええええええええええ! そして死ねえええええええええええええええええ!」
トランプを大量に投げつけて、辺りにいたトランス兵の脳天に突き刺さる。
「ぐが!」
「ぢあb!!」
「ぎゃあああ!」
「ああ! 僕の彼ピッピが!!」
「もろともしねえええ!」
マッドハッターの暴走は止まりそうになかった。