記録237『堕とされた神』
「という事で僕はこの世界に堕とされましたー」
「ロキ君可哀そう」
「ロキ君何も悪くない……」
「へへへ」
惑とバザルは、話を聞いて取り敢えず同情的な言葉を掛けた。
「でも良いんだ! だって楽しかったし! おっぱい村は特にね!」
「?? おっぱいランドに変えたところ?」
「うん!」
「詳しく聞こうじゃないか!」
「私も私も!」
バザルは、二人を呆れた目で見る。
「いいよ」
「ありがとう! 因みに誰が作ったの? その村?」
「?? なんかその村では巨乳しか生まれないと言った不思議な村だったらしい……その村近くに生える草木が女性ホルモンを飛躍的に上げるらしい……ただそのせいか女性だけが生まれて男性が生まれないんだ……だから彼女達は男性を迎えて種を宿して子供を産む様にして出生していたらしい」
---------------------------------------------------------------
そんな時であったのが、スモルバスだった。
「あら、スモルバス! 元気!」
「!! ……ええ……元気よ……ビーグ」
スモルバスは、おっぱい村に生まれたにも関わらず一人だけ貧乳であった。
突然変異として生まれ、村近くの植物の効果があまり効かなかった。
そんな彼女を、皆は心配していた。
ビーグは、励まそうとする。
「……ほら! 笑顔笑顔! ぽよぽよぽよぽよぽよぽよぽよぽよぽよぽよぽよぽよぽよぽよぽよぽよぽよぽよぽよぽよぽよぽよぽよぽよぽよぽよぽよぽよ」
ビーグは、胸を寄せてゆらゆらと揺らしながら、ぽよぽよと連呼する。
これがこの村特有の笑い方である。
これを行う事によって、男性の大抵は引き付けられる。
彼女達の持ち味を生かした笑い方であった。
「あはは……じゃあ……」
「彼女……今日も笑顔にならないわね……」
「うん……どうしたらいいのかしら……」
彼女達に一切の悪気はない。
彼女達にとっての当然の文化であり、これが笑顔であるというのが既に染み付いているのである。
つまり、貧乳である彼女の笑顔を見た事がないという心配をしているのである。
「はあ……私にも大きなおっぱいがあれば……笑顔になんて簡単になれるのに……」
スモルバスは、溜息を吐きながら水くみをしていると。
「うおおおおおおおおおおおおおおお!! スカーイ!! ダイビーーーング!!」
突如、上空からそんな声が聞こえた。
「! ええ! ええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええ!!」
スモルバスが、慌てている間に、一人の道化師のような少年が地面に叩き付けられる。
「った! 大変! ああ! どうしよう! 私には彼を包む込むおっぱいが無いわ! このままじゃ彼が!」
この村の女性達は、ホルモンの過剰分泌によって魔力が共鳴し、おっぱいでのヒーリング効果が見込める。
だが、効能が効きにくいスモルバスには、難しい事であった。
「いてええてんっ」
ロキは、ケタケタ嗤いながら立ち上がる。
「ああああ!!」
スモルバスは、驚きながら尻餅を着く。
「あ! ごめんねえ! びっくりした!?」
「えっと……大丈夫なんですか?」
「だーじょぶだーじょぶ!!」
ロキは、にへらとしながらペロペロ舌を動かす。
「えっと……貴方は?」
「ぼく? 僕の名前はロキ! 悪戯大好き神様のロキだよ!」
「神様? どうして神様がここに?」
「?? 堕とされたから?」
「堕とされた?」
スモルバスは、首を傾げながらロキの顔を見る。
「えっと……詳しく聞いて良い?」
「?? いいけど?」
ロキは、不思議そうにスモルバスに事の顛末を話した。
スモルバスは、涙を流した。
「酷い! 自分の子供を! 自分の愛する奥さんを! 女を何だと思っているの!」
「え? 皆正義ぶっているけどそんなもんだよ? 他の神達も浮き彫りになった時だけ一斉に叩いて自分の事がバレない様に誤魔化す準備をするぐらいだし」
「はあ!!」
スモルバスは、途端に神を信じられなくなった。
「でもさあ? 君の世界の政治家たちも同じじゃない? つまり理だよ! 僕はその理を反する事をしちゃったから怒られちった! でも止められない止められない!!」
ロキは、ドキドキとしながら走り回る。
「うおおおおおお! 今度は何をしようかなああ! しようかなああああ!」
そんな、腕白な子供にしか見えないロキをスモルバスは、抱きしめる。
「ねえ……お姉さんのところに来ない?」
「? うん良いの?」
ロキは、キョトンとした表情で確認する。
「いいよ! お姉さんたちのところに来て!」
「ああ! 分かった! 神の子を産むんだ! でも止めといた方が良いよ? 怒られるし僕子供だしい」
「え? 違う違う! ただ居座って貰うだけ! それだけ!!」
スモルバスは、慌てて訂正する。
これが、スモルバスとロキの運命の出会いであった。