記録235『害悪キッズロキの、サレ妻VSシタ夫』
「この糞野郎があああ!!」
母は、何度も何度も父を殴っていた。
しかし、父も負けず押し返す。
「いい加減にしろオオオ! そもそもお前が俺を満足させないのが悪いんだろうがああ!!」
「はあああ! 何を開き直ってんだ!! お前が……」
「テメエが悪いんだよおおおお!!」
「ぐば!」
母は、殴り飛ばされても尚すぐに立ち上がり、父に対して拳を振るう。
殴られた父の頬は、揺れながらそのまま倒れそうになる。
「っぐ!! まだだ! 俺にはお前とは違い沢山の愛する者達がいる!!」
「言葉は良いようだなアあ!! ふざけた事を!」
「俺は負けない! 俺の心すら理解出来ないお前なんかと違い! 俺を信じる者達! 愛する者達と心が繋がっている! お前のような独りぼっちの寂しい奴なんかにぜったに負けやしないんだああ!!」
「このおおおおおおおおおおおおおおおおおおお!!」
母は、怒り任せに父の腹に拳を捻じ込む。
「軽いな……」
「な!!」
「お前の拳は軽い……お前の冷めきった拳とは違い、俺の愛で包まれた暖かな拳とは比較にならないぞ!」
父は、母を煽りながら腹に拳を一撃入れた。
「がばあああ! なぜ……どうしてここまで戦力が……」
「簡単だ……お前には愛がない! お前の拳には愛がな! それがお前と俺の違いだあああああああああ!」
恐らく、男と女では、残念ながら筋力に差があり、拳の殴り合いでは男である父に分がある。
「ちくじょおおおおおおおおおおおおおお!!」
「うおおおおおおおおおおおおおお!!」
父は、思いっきり母の顔面を殴り付けて吹き飛ばす。
「がば……ああはははあはあ」
血を吐きながら、母は、フラフラと立ち上がる。
「まだだああ……まだ負けてない」
「もう終わりだ……お前に勝ち目はない……」
拳を燃やしながら、父は母の前に立つ。
「おおお……パパが圧倒的に強いかあ……ママはどうする?」
「くそお……こうなったら……禁断の手を使うしかない……」
「!! 貴様! そこまで堕ちたか!」
「誰が堕ちただってえええ!! 貴様が言うなあああああああああああああ!!」
母は、明らかに怪しい人形を飲み込んだ。
「ぐおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおお!!」
すると、母はドス黒い炎に包まれた。
「く!! 憎しみに堕ちたか……どこまでも愚かな奴め……」
「どっちが愚かかああああああああああああ!! わからぜでやるうううううううううううううううううううううううううううううう!!」
母は、体が膨れ上がりまるで魔界の魔物同様の姿へと変異した。
「うおおおおおおおおおおおおおおおおお!!」
「っぐ!!」
母の拳を受けて、父は吹き飛ばされる。
「はあ……はああ……全然軽いじゃねえか……」
「さっき吹き飛ばされたじゃない……パパ」
「黙れえええええええええええええええええええ!!」
母は、怒りと憎しみを力に変えて、父に襲い掛かる。
「そんなの……俺達が紡ぎあげた愛の前では……何の意味もなさない……俺達の愛の前では無力も同然だああアアアアアアアアアアアアアアアアアアアア!!」
「何!! ぐがああああああああああああああああああああああああああああああ!!」
父の放った最後の拳は、母を光に包みそのまま消滅させた。
「うおおおおおおおおおおおおおおおおおお!! 勝ったぞおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおお!!」
---------------------------------------------------------------
『うおおおおおおおおおおおおおおおおおお!! 勝ったぞおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおお!!』
今日は、秘密を露わにし、自身の成長に繋げる祭りである。
それは誰の秘密であっても問題はない。
逆に、他の者に秘密を話されて精神的に成長を果す事が出来る。
そして、ロキは躊躇わず、父の不倫と母に見つかり母を消滅させたことを暴露した。
「ちがう……これは……これはああ……」
父は、焦り出し皆に否定の言葉だけをぶつけ続ける。
「最低……」
「糞野郎が……」
「キモ」
当然、女性陣からは罵詈雑言の嵐であった。
「君……これはどういう事かな?」
「チッ違うんです!! これはロキが勝手に作った」
「僕は事実を見せてるよ?」
「黙れ!! この愚息が!」
「ま! 自分の子供を愚息ですって!」
「最低……ロキ君可哀そう……」
周りの皆は、ロキに同情的な目で見る。
「ちがう……違うんだあああ……」
「これは……君の今の地位を考え直す必要があるようだね」
「ちょっと待ってくれ!」
「待たない……君は馬鹿なことをした……あんな事を言って恥ずかしくないのか? 妻を大切にしようとは思わなかったのか……下らない……」
「待ってくれえええええええええええええええええええええええええええ!」
悲鳴のような声が、いつまでも続いた。