記録232『次の相手はだーれだ』
惑は、次殺す為の相手を考えていた。
「やはり次はレイシャをするかな?」
「どうして?」
「実は勇者に対して一番苦しめたいという欲求を持つ人が現れてね……」
「?? いつ?」
イネは、惑にレイシャを倒させようとする者について質問する。
「この集落が作られた理由になる者って事かな?」
「えっと……誰だっけ?」
イネは、すっかり誰であるかが分からなかった。
「うーん……まあいいや……少し概念的なスキルを習得出来るかを確認したいんだよ……補正とかね」
「?? 補正?」
しかし、惑は考えが纏まらないのか黙り込んだ。
ドワーフの職人は、イネの肩を叩く。
「こっちに来い……今はそっとしておけ……惑さんが考えているのを邪魔してやるな……」
「ち……僕邪魔者なのねエ……」
と呆れながら、イネは取り敢えず廊下を歩く。
すると、何処かで見た事のある様な男がいた。
「??! 今誰か! ……あれ?」
誰も居なく、イネは男を見失った。
「今のは見なかったことにしろ……お前口軽いだろ?」
「!! なんでだ……」
「俺の女房も口を滑らしていた……お前との浮気とお前が話した作戦の内容もな……」
「!! エロの後は口が軽く……」
「何定番みたいなヘマしてんだ!」
イネは、何処かこの集落では厄介な扱いを受けていた。
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「待たせたな……」
「ああ、来たね……ライアン君……」
ライアン・シャグル、彼はこの集落を作るきっかけになった人物である。
国の安寧の為、敢えて法律都市と無法都市の両方を作った。
そして、無法都市には犯罪者達を入れ、法律都市には無犯罪者を入れている。
そうすることによって、犯罪率を下げたのである。
無法都市では、基本何をしても犯罪にはならない。
犯罪者集団の中では、力こそが正義であり、権力も力で決まる。
その為、半端な犯罪者であれば、性奴隷になるか体を売るか、それともその辺に死体となって捨てられるかである。
国民は皆、その制度を喜んで受け入れていた。
適応できる環境づくりに尽力を注いでいた。
しかし、天山有志と神によってその政策は霧散した。
魔王との協力関係を取る事によって、魔王軍との無駄な争いを消そうとしたのも国民に命を賭けさせない為であった。
しかし、それは神が許さず、天山有志にアルマダを殺されてしまった。
その恨みはかなり深いものであった。
「惑さん……俺はどうすればいい! どうすれば神に! 勇者に心の傷を負わせられる! 殺せなくても苦しめたい! その礎になりたいんだ!!」
どうしても復讐をしたいライアンに惑は提案する。
「君が勇者を殺すという手は?」
「いや……殺しては苦しめられない……俺は苦しんだ……その苦しみを生きた状態で味合わせたい! エレンちゃんはお兄さんや村の者を殺されたから殺したいんだろうけど俺は違う!」
惑は、真剣な表情に納得した。
「うむ……人それぞれの願いが存在する……それは星の数より多いのかもしれない……楽しみだ」
「?? 何を言っている?」
「いや……何も」
そして、二人は概念的スキルについて考えた。
「概念スキル?」
「正直天山有志が負けないのは、主人公補正が付いているからだと思うんだ……」
「主人公補正?」
「ああ……そのお陰で死ぬ事はないという理由だ……だが殺せる方法は一つ……同じ主人公を作り上げてそれを戦いに赴かせる……そうすれば補正概念がそいつにもついているから同時に死ぬかどちらか一方が生きるかのどっちかは作れる……そして君にはその為の礎……補正の為の前準備を手伝ってもらいたいんだ……」
「?? 前準備?」
ライアンは、首を傾げながら聞く。
「君には羞恥心を取っ払ってもらいたいんだ」
「?? それに何の意味が……」
「主人公補正の次に強い……寧ろ主人公補正より強いかもしれない補正……それを手に入れる為には君には修行をして貰わないといけない……出来るだけ早く師匠は確保するからもう少し待ってくれるかな?」
「俺に何をさせるつもりだ……」
「そうすれば相手に屈辱と苦しみを与えられるよ?」
「!! ああ……分かった……」
ライアンは、少し理解出来なさそうにしながら頷く。
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「さてと、バザルさん……これにあった師匠となる者はいますか?」
「……分かりませんとしか……」
「そうかあ……困ったなあ……でもこの世界基本ファンタジーだからなあ……バファハイド様なら知ってるかな? それとも……」
色々と探っていると一つの本が落ちて来た。
「これって……こんなのありました?」
「いえ……ありませんでした……」
惑は、不思議そうに本を眺めた。