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記録230『愛の奇跡』

「有志!」

「大丈夫か!」


シャイニャスとレイシャは、慌てて有志の元へと走った。


「シャイニャス……レイシャ……」


二人が目にした光景は、悲しいものであった。

有志は、聖剣の刃を優しく撫でていたのであった。


「有志! ダメです! 怪我をします!」

「今すぐやめないと!」

「ダメだよ……シャイニャス……レイシャ……レティリアが可哀そうだ……」

「「!!」」


二人は、レティリアの名を聞いて恐怖が過った。


「何か……あったのですか」

「まさか……先程の花火は……」

「ああ……レティリアが殺された」

「「!!」」


二人は、大切な仲間を失い、涙が溢れ出す。


「そんな……そんな……」

「糞……ゴミムシめ!!」


二人は、西院円惑に対して、怒りと憎しみが増幅した。


「よくも……よくも私達の仲間を……お友達を……」

「許せない……友を殺された恨み! 晴らさせて貰う!!」

「ああ、俺達で仇を取るんだ!! な! レティリア!!」

『うん! 私の事そんなに思ってくれて! 有志は本当に素敵な人だよ!!』

「!! 有志……まさかレティリアの声が……」

「ああ、そうだ! これは奇跡だ!」

「ああ……お前の愛がレティリアを寸前のところで魂を救って聖剣に留めたんだ! 私はそれを誇りに思う!」


有志の心を聞いて、二人は安心を覚えた。


だが実際は、聖剣にレティリアの魂は留めていない。

聖剣にあるのは、魔王を倒すための力であり、誰かの魂を守るものでも、魂を留める力など、入る余地はない。

ならなぜ、有志には声が聞こえるのか。


それはただの妄想であった。


有志は、妄想により作られただけであった。


有志は、受け継ぎたくもないサクラン・ドウの才能を受け継いでいた。

開花させていた。

それは、有志の本意ではない。

ただレティリアを失いたくないという想いのみで、その妄想を叶えてしまっていた。

どれだけ拒絶したい程の邪悪な才能であったとしても、無意識にそれを求めてしまっていたのであった。

そして、神に憑依された事によって、想像の力を無意識に妄想で作って自身の中に作り上げて聖剣に留めたと妄想しているだけであった。

聖剣自体に、留めたのではなく、聖剣に宿った仮の魂であった。


「レティリア……俺は必ず世界を守る」

『うん! 有志なら出来るよ!』


この声を掛けてくれている者は、レティリアではない。

聖剣に宿った、仮の魂が、本物ではない魂が話しているに過ぎない。

レティリアの魂は、竜の爆裂魔法によって完全に崩壊し、完全に消えたのであった。


「行くぞ! 俺達の戦いはこれからだ!!」

「はい!」

「ああ!」

『うん!!』


---------------------------------------------------------------


「竜人の一人が死んだの? ええ……有志こわ」


イネは、ドン引きしながら遠目で見ている。


「これどう解釈するんだろう……」


「有志……この血の海は?」

「ああ、ゴミムシが身代わりで寄越した犠牲者だ……」


「??」


イネは、有志の言葉に恐怖した上、理解出来なかった。


「なんて事を……」

「許せない……どれだけの……どれだけ人の命を弄ぶ気だ!!」


二人も、たまらず怒りが込み上がる。


「信じるこいつ等も凄いな……てかレティリア死んだのに……何言ってんだろうか……有志は……」


惑の指示がなければ、今すぐにもこの場から離れている。


しかし、隠密に長けているのはイネであった。

プランという手もあったが、プランは何処か好奇心が強く。

もしかしたら、この場で有志達に余計な事を言ってどんな反応をするかを愉しんだ可能性もある。

普段のイネであれば、性欲に任せて有志達を襲ったが、母親の件でそれも嫌になっていた。


「もしかして……私が嫌がる様に仕向けたのも惑の作戦の内かな?」


少し邪推しながら、惑の思惑を探ろうとした。


「まあ、エレンちゃんの夢をかなえる為に受精卵集めが最初か……」


そして、潜伏してそのまま有志達の行動を監視する。


---------------------------------------------------------------


「ありがとう、エリナールメール! 受精卵の提供!」

「いえいえ、これで魔王様に会えるのですね!」

「一応は約束を取り付けたよ」


すると、エレンはエリナールメールに聞いた。


「あの銅像の結界って解いたのは……」

「し! 女には秘密が多いんですよ! 貴方も分かるでしょ?」

「!! はい……」


取り敢えず、エレンも黙る事にした。


「さてと、プラン!」

「あいあいさ!」


そして、魔王派との会合をする為、プランと共に魔王は鞍替えの為の準備をした現状維持派の王、シェリオンと共に玉座に向かった。


「うむ、シェリオン……久しいな……ようやくここの良さが分かったか」

「ああ、勇者像が倒れた瞬間から腹は決まった……我が娘の仇は討つ」

「そうか……それなら別にいい……魔王様との謁見は必要だ」

「その際エリナールメールにも合わせて貰える手配は僕が勝手に整えたけど……君達の邪魔にはならない?」

「ああ」


そして、惑は少しガッツポーズを取る。


「まさか……エリナールメールが魔王派だとは……父親として気付けなかったことが情けない」

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