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記録227『大丈夫、言わないよ……』

レティリアは、必死に竜人達から逃げていた。


「待ちやがれ!」

「ぶっ殺してやるうう!!」

「勇者は何処だああ!!」

「大丈夫……ゴミムシさえ倒せば……きっと」


レティリアは、有志が西院円惑を倒す事を信じて、逃げ続ける。

時間を稼ぎ続ける。

仲間を信じ、勇者を信じる。

それがレティリアの宿命であり、存在価値であった。

それは、聖剣を守る大役を任された時から決まっていた。

だからこそ、有志を想い、有志の都合を考え、そして有志が大切にする者達を守り続けていた。


「有志……有志い……早く会いたいよおお……」


レティリアの目からは、涙が溢れ出していた。


そんな時であった。


「レティリアさん! こっちです!」

「貴方は! ミーシャ!」


ミーシャは、イネの母親であり、西院円惑に娘と父親を捕えられているせいで自由が与えられない存在として認知していた。


「はい!」


レティリアは、少し安心した表情でミーシャの手招きする方向へと急いだ。


「アイツ! 何処に行くつもりだ!」

「追えええ! 追えええええええ!!」


建物の隙間に小さい体を利用して入り込む。


「糞! 回って捉えろ!」

「ぶっ殺して……いや……とっ捕まえて拷問に掛けてやれ!」


物騒な言葉を発している竜人達に、少し震えながらレティリアは、ミーシャの方を見る。


「ありがとう……でもすぐに出ないと囮として役に立てない……有難う……少し休めた……」

「ううん、私に出来る事はこれぐらいだから……それに……もうでなくても大丈夫ですよ?」

「え? それってどういう……」


その時、レティリアの体は四方八方から延びて来たツルに、体を巻き付けられる。


「な! 何これ!」

「いヒヒヒヒヒヒ!! 大成っ功!!」


すると、ミーシャの顔がイネの顔へと変貌する。


「な! イネ! これはどういうつもり! ミーシャさんは!」

「ミーシャ? そんな安っぽい名前で呼ばないでくれるううう? ねえ? ママア」

「ええ……その通りよ……あれはあのバカ男が付けた名前でしょ? いやよあんな名前……」

「え……どういう事?」


イネの顔から、もう一つの顔が出て来た。

その顔は、ミーシャの顔その者であった。


「ああ? わからなーい? 私そもそも有志の子とあまり好きじゃないの? だってあの子下手じゃない……」

「は?」

「「あひゃははははははあっはあっは!!」」


二人は、レティリアに向かった馬鹿笑いする。


「まあ良いわ……でも貴方は終わりよ? だってもう動けないでしょ? 魔力も術式を入れ込まれてるでしょ? 後動けなくなっているでしょ?」

「え! え! なんで!」

「いひひひひひ!! ママア! バカみたいに逃げようとしているよおお!」

「そうねえ……逃げようとしているわねえ」


顔を歪ませながら嗤い、レティリアに恐怖を与える。


「アヒャヒャヒャ! プランのおお! ツルはどう?」

「うん、プランちゃん、いいわ! 凄く良い!」

「やったああああ!」


プランは、嬉しそうにしながら飛び回る。


すると、ぞろぞろと住人達が現れる。


「あは! ぶはははははは!!」

「無様だぜ! 妖精様がこんな惨めな姿とはなア!」

「今から自分がどうなるか……分かる?」

「何を! 一体何を! !!! この術式! まさか! そんな! 止めてよ! お願い! ミーシャ! 目を覚まして! 有志の正義を注がれたのに! どうして!」

「? 妄想キモ……まあ良いわ……そもそも有志にこの子のエイズが入っているの……そしてその方はキメラ型……どんな環境でもどんな改造でも耐えうる適応力を持っているのよ、有志の正義の魔力だってもうすでに中和出来るだけの力を持っているわ……そしてその毒素は私自身に既に抗体があるから精神にも何も影響はない! そして貴方自身にもそのエイズキメラ型が入っている! 魔力が使えないのも術式に抵抗できないのも……そもそも私達は有志を狙ったんじゃなくて貴方達仲間の方を狙っていたの……戦いの日に邪魔にならない様に……」

「でもママア、このままじゃあの二人まではいかないかもよ?」

「まあゆっくりしましょう」


二人の会話を聞いて、レティリアは涙を流す。


「お願い……助けて」

「無理」

「ダメ」

「あはははは!! 命乞い最高! 無駄な足掻きい!!」


レティリアは、涙を流す事しか出来ない。

そんな中でも、レティリアは必死に自身が出来る事を考えた。


「おねがい……お願い……有志はミーシャを信じている……せめて……せめてミーシャとの思い出は嫌いなままで……」

「「……」」


二人は、互いに見合うと優しい表情で答える。


「大丈夫よ、レティリア……貴方の最後の願いは叶えるは」

「大丈夫、言わないよ……だって言っちゃったら作戦に支障が出るじゃああん!」

「いやあ……いやああ……」


そして、レティリアは絡まったツルに引っ張られて行った。


「いやあああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああ!!」

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