記録225『竜人達の強襲を躱しつつ』
「はあはあ……有志さん……私……凄く良かったです……貴方の正義が私の中に入ってきて……」
満足そうにしながら、エリナールメールは微笑む。
「俺の正義なんだ! そんなの当り前さ! エリナールメール! 必ずこの国は救う……だから教えてほしい! どうすれば奴に! 西院円惑に近づけるにはどうすれば!」
エリナールメールに、有志は作戦を練ろうとする。
「はい、私はあの男を……奴を殺したくて仕方ありません! はしたないですよね……姫である私がこんなことを……」
「そんな事はありません! 西院円惑によってどれだけの人が不幸にさせられたか……どれだけの人が死んだか……奴はこの世界に破滅を呼びます……打ち倒そうと考えるのは普通ですよ!」
「そうだ! 君は何も間違っていない!」
「そうだよ! 私もエリナールメールちゃんの考えはおかしいと思わないよ!」
皆の言葉に、エリナールメールは勇気を与えられ、表情が明るくなる。
「ありがとう皆! 私! 姉さまの仇を討ちます!」
「ああ! その意気だ!」
そして、すぐにエリナールメールと相談した。
「私が案内出来る場所はどうしても街道を通らなければなりません……城への抜け道はありますが……しかしそこも西院円惑によって塞がれています……私が通れたのはまだあの男が父上とイーシン様を取り入る前に逃げれたからです……しかし今はもう使えません……寧ろ危ないです……」
「糞! 何て奴だ! 城は愛する者を助ける為に、国の象徴として存在しているというのに……それを穢すだなんて! エリナールメール! 奴の事は西院円惑とは呼ばなくていい! 奴の事はゴミムシとでも呼んでやれ!」
「!! はい! ありがとうございます! ではこれからはゴミムシと呼ばせていただきます!」
有志の言葉に、エリナールメールは素直に応じる。
「では……ゴミムシに見つからず近づくにはどうすれば……」
シャイニャスも、有志の言葉通り、西院円惑をゴミムシと呼ぶようにした。
「すみません……街中であれば囮を作ればなんとか城までの最短距離とゴミムシのいるであろう場所までの最短距離は分かります……衛兵さん達の話を聞いてどこに拠点を置いているかは頭に入っています!」
「流石はエリナールメールだ! この国の姫として凄く優秀だよ!」
「えへへへ……褒められました……」
照れながら、エリナールメールは嬉しそうにする。
「でも……君の案内でもここを突破するのは囮がないと難しいんだよね……」
「だが……罪のない国民を殺す訳にはいかない……もし相手が兵士であれば鎮圧するのは簡単だが素人であれば無茶な攻撃で死ぬ場合がある……」
「糞! ゴミムシめ! 何処までも卑劣な奴だ!!」
そんな時、レティリアは声を上げる。
「私が囮になる!」
「レティリア!」
「レティリアさん!」
「レティリア! 何を考えている!」
レティリアの決断に、4人は唖然とする。
「大丈夫だよ! 有志! 私妖精だから! 体は誰よりも小さいから! それに……さっき有志から濃い正義をたっぷり貰ったから! 多分私の魔法だと罪のない国民を狂わすかもしれない……だから出来るのはこの小さな体を活用して石を、人の憎しみを避け続けることだと思うの! だから有志! 貴方の目的を見失わないで! きっと勝てる! ゴミムシに勝てるよ!」
「レティリア……ああ! 分かった!」
有志は、レティリアの言葉を信じて囮を任せた。
「有志……分かりました! 私もレティリアの事を信じます! 友達を信じない友達なんて! いません!」
「その通りだ! 我々にとってレティリアは私達にとって仲間であり友達だ! それを信じないなんてない!」
エリナールメールは、少し羨ましそうに見た。
「エリナールメール……貴方もですよ、私達は今から……いえ、有志の正義を注いで貰ってから既にお友達です!」
「ああ! その通りだ!」
「追いでよ! 俺達の元へ! 俺達は君の事も信用しているんだから!」
その言葉に、エリナールメールは涙ぐみながら手を取った。
「うん!!」
そして、有志達の作戦は始まった。
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「おい! 見つかったか!」
「いや……ここには……あれは!」
「っく! 見つかった!」
竜人達は、レティリアを見つけた。
「あれは! 勇者に着いていた妖精だ! 絶対に逃がすな!」
「いやあ……」
弱々しい声を上げながらレティリアは、逃げ出す。
「よし、今です」
「ああ! ありがとう! レティリア!」
「頑張ってくれ! レティリア!」
「レティリアさん……私は……私たちは必ず……」
「ああ! 絶対に成功させるんだ! お願いだエリナールメール! ゴミムシの元へ!」
「はい!」
そして、有志達は走り出した。




