記録224『君の事は俺が守る! 愛を持ってね!!』
エリナールメールは、涙を流しながら語る。
「私の姉様は……とても素晴らしい方でした……国を愛し、勇者様に信仰が深く……そして何より魔王による改革を許しておりませんでした……」
「素晴らしいお姉さんだったんだね……」
「はい……その婚約者であるイーシン様……同じく勇者様の信仰が厚くこの国の現状を守る事を……力を持ち過ぎないように均衡を保つ事に熱心でした……姉様への告白の際……我々の国では魔力の籠ったものを使って放つ爆裂花火はとても素敵でした……デストロイスライムを生け捕りにすることで勇敢さを見せつけ、更に美しい爆裂花火を見せる事で男気を見せたのです……他の者は弱い生き物や植物を使うのですが……困難であれば困難である程成功率も上がるとされている……」
「デストロイスライムって……本当に凄いな……S級冒険者が二人でやっとの魔物を……」
「そんなイーシン様も今では愛する婚約者を失い……おかしくなりました……西院円惑はその全てを……勇者に押し付けたのです! 勇者の銅像に石を投げつけて壊す事でその勢いで姉様を斬り殺したのです!」
「っく!!」
有志は、悔しそうにしながら拳を握る。
「更に西院円惑は父上とイーシン様の心の隙間を利用して操っております……今の国の現状はまさに西院円惑の仕業と言っても過言ではありません……西院円惑が勇者が姫を殺したと風潮したのです!」
有志は、近くの壁を殴り壊した。
「糞! 許せない! 人の愛を! 心を! 愛する心を利用して勇者への不信へとつなげようだなんて! その為だけに姫を殺害するだなんて! 俺だけに正々堂々と立ち向かえば良いものを! 関係ない者を利用し道具のように使うだなんて!」
「ああ! あんな奴は今すぐにでも殺さないといけない!」
「しかし……このままでは有志が……罪のない国民が有志に攻撃して罪を与えてしまいます」
「そんなことを! まさか……西院円惑はこれを狙って! 有志に攻撃させて手遅れにして! 罪悪感を与えて後戻りできないようにするつもりなんだよ!」
レティリアの予想を聞いて、エリナールメールは顔を真っ青にさせる。
「そんな……我が民にそんな事を……」
「大丈夫! 西院円惑の隙にはさせない! 君の! 君やお姉さんが愛する国民やお父様! そして婚約者のイーシン様にはこれ以上罪を重ねさせない! 絶対に!」
有志は、エリナールメールの手を掴んで真っ直ぐに答える。
「有志……様……」
「大丈夫……君の事は俺が守る! 愛を持ってね!!」
そして、有志はナチュラルにエリナールメールの服を脱がす。
「有志様……恥ずかしいです……」
「大丈夫ですよ……私達も一緒です」
「ああ、緊張する事はない」
「すぐに有志の愛が私達を守ってくれるよ!」
「さあ……俺に身を任せて……」
「……はい……有志様……私を愛で守ってください!!」
有志は、遂に爬虫類にまで手を出した。
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「うむうむ……有志も歓迎の石投げには満足してくれたかな?」
「アハハハハハハハハハハハハハ! ザマア見ろです!!」
エレンは、馬鹿笑しながら転げ回る。
「致命傷に当たって欲しかったあ……血ダラダラ流して困惑して欲しかったあ……」
プランは、少し不満そうにしながら映像を見ていた。
「これ便利ですね……至る所にあるんですか?」
「ああ、この国は現状維持派を守る為に治安も良くする為に至る所に水晶映像に繋がる様な設置がある」
「僕もイネの記憶を見る時に便利でした」
「それは良かったよ」
イーシンは、嬉しそうにしながら嗤っている。
「イーシンさん……婚約者様は僕のせいで死んだみたいって言ってましたけど……どう思います?」
「石ころ程度であの銅像が壊れるなんてありえない……昔から言われてきた……あの銅像は勇者の加護で壊れることのない状態であると……それを解けるのは王族ぐらいでそうしない限り君の言う経年劣化も起こる事なんてないんだ……」
「ふむ……何故解けてしまったのでしょうか?」
「我が国に裏切り者がいるか……だが王族にいるわけがない……なら答えは簡単だ……勇者がそもそも掛けていなかったんだ……であれば説明が付く……銅像だって1000年以上経てば壊れやすくなるのもあり得る話だ!!」
イーシンは、何処か確信めいているようであった。
「確かに……あれは長い年月経っていないと出来ない様なものだ……石を当てたとしてもそれは勇者ではなく魔王の方……魔王派が解いたとは?」
「それもない……何故敵にそんな情報が回る! それが既におかしい!」
「確かに……」
謎は深まるばかりではあるが、イーシン達が勇者に寝返る事はなさそうであった。
「さてと、次の作戦に行こうか!」
「はい!」
「分かった!」
「ああ!」