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記録219『鞍替え』

ドラゴニクス・エリナーメリは、怒りに燃えた。


「ふざけないでください! 何をしているのですか! 笑うのを止めなさい!!」

「イヒヒヒヒハハハハ!!」

「yばい! ツボった!」


だが、プランと惑がいつまでも嗤い続けた。


「どうしてそんな酷い事が出来るのですか! 貴方! バザルと一緒という事は……まさか魔王派の者達ですか! 人間や獣人でありながら何という事でしょう! 貴方達が勇者を助けなければ誰が助けるのですか!」

「?? 勇者を信じているのでは?」

「信じています! しかし我々にだって出来る事はしてあげるべきだと思いませんか! 必要なのはその精神でありそれこそが勇者の力となるのです!」

「そうだそうだ!」

「俺達だって勇者様の為に毎日お祈りを欠かさないんだぞ!」


現状維持派もとい、勇者信者達からブーイングを喰らう。

しかし、惑は別の事が気になり始めた。


「? 何だこの軋むような異音……」


惑の耳に妙な物音が聞こえた。

しかし、触る程度の音なのか、詳細には理解出来なかった。

惑は、聞こえたであろう大体の位置に視線を移す。


「うーん?」

「聞いていますか! 私は貴方に言っているのですよ!」

「うーん……」

「一体何が分からな……」

「あ、やば」


惑は、少し後ろに後退る。

それを見た4人も、後ろへと下がる。


「待ちなさい! まだ話は終わって……」

「あ、君も……」


しかし、惑の忠告は既に遅かった。


「エリナーメリ様! 危ない!!」

「え?」


エリナーメリは、後ろに振り返った瞬間であった。

大きな崩落音と共に、先程まで石を当てていた銅像が倒れて来た。


「え?」


エリナーメリは、唖然としながら突っ立ったままでしかなかった。

そして、像が掲げる聖剣の刃部分が降って来た。

そして、倒れた像はそのまま地面に叩き付けられて聖剣の刃以外崩れた。


「ああ……経年劣化か」


惑は、倒れた像のヒビのある部分を遠目で視認し、ボソッと判断した。


「ああ……」


エリナーメリは、涙を流しながらそのまま頭から股に掛けて亀裂が走り、そのまま真っ二つになって左右に崩れた。


「あ……あああ……うわあああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああ!」

「姫ええええええええええええええええええええええええええ!!」


現状維持派の国民達は泣き叫んだ。


「どうして! どうしてこんなにも優しく美しい! そして誰よりも信仰の厚かったエリナーメリ姫が殺されなければいけないのだああ!」

「ふざけるなアあ! どうして! どうしてええ!」

「あああああ! 姫様を返してええええ!」

「え? でも銅像が倒れた事故なんじゃ……」


イネの疑問も当然であるが、惑はイネの口を閉じる。

そして、そっと耳打ちする。


「あのね、現状維持派にとって勇者は崇拝対象なんだ……その崇拝対象である勇者の形取った者が家族である信者に対して傷付ける行為を行えばそれなりに動揺する……まあ大抵は姫に何かよからぬことがあったのではと考える者が多いと思うけど……」

「姫は……姫はこの国を愛しておりました……我々も、そして昨日もこの国を想い祈りを捧げていました……そして勇者様がいつ来ても良い様に貴方様の為に魔王を倒すための誰よりも一番に整えておりました……それなのに……それなのにこんな仕打ち! あんまりではありませんか!!」


家臣であろう者が、涙を流しながらエリナーメリの遺体を涙で塗らす。


「あれは……エリナーメリ姫の父親であり王のドラゴニクス・シェリオン様……」

「退いてくれ! 退いてくれ! 私の娘だ! あああ……私の……わだじの゛おおお……むずめえええええええ! エリナーメリいいいいいいいいい!!」


大粒の涙を流しながら、シェリオンは民衆をかき分けて駆け寄った。


「誰が……一体誰が……」

「そいつです!」


惑は、迷いなく銅像の勇者を指さした。


「貴様……よくも……よくも我が娘おおおおおおおおおおお!!」


シェリオンは、銅像勇者の顔面に蹴りを入れた。


「バザルさん……どうして刃だけは経年劣化してないんですか?」

「恐らく……刃だけはアダマンタイトを加工して作ったとか……」

「なるほど……切れ味が鋭いわけだ……」


そんな事を話していると、国民達も銅像勇者を蹴り込み始めた。


「ふざけるな! 俺達がどれだけお前を信頼していたと思っているんだ!」

「そうよ! 貴方様の為に! いや……貴様の為にどれだけの祈りと資金募金に手を貸したと思っている!」

「俺達の信頼を裏切りやがって!」

「あらー……これは姫様に対する信頼の方が大きいね……姫様や王族が信仰していたから現状維持派も信頼して信仰していた……だけどその柱である者が信じていた者に裏切られたというきっかけを元に宗教崩壊が始まった……信頼を失うのは一瞬とはよく言ったものだ……」


現状維持派達は、一気に勇者への信仰を捨てて、現状維持派は魔王派へと鞍替えしてしまった。

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― 新着の感想 ―
[良い点] このタイミングで経年劣化て(すとん)石を投げたりしたのが止めじゃね?
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